2022年11月29日

 夏日狂想

夏日狂想 - 窪 美澄
夏日狂想 - 窪 美澄

大正昭和とめまぐるしく移り変わる時代に女優を目指し、やがて物書きとして生きていこうともがく女性の物語。

実在の誰かを描いているのだなと思いつつ(後で答え合わせをしました)、家庭を守り子供を育てることだけが女の正しい生き方とされた時代はずいぶん昔のようでいて、当たり前の価値観はそう簡単には変わらないのだなとも。
ただ、生き方を狭められる不自由もあるが、いざ戦争となれば守られる存在ともなる。
違いは単なる損得で語れるものではないのだろう。

隣には常に男の姿があり、誰かを踏み台にし切り捨ててでも自分の思う人生を歩もうとする彼女のたくまさしさに驚かされる。
激情に突き動かされるような若いころよりむしろ、地震や戦争という激動の時を乗り越え、やがてともに歩んできた人たちが一人また一人と去っていく後半に引き込まれた。
しがらみや身を焦がすような思いから解放されて、ただの自分としてわが身を振り返ったとき、それまでのあらゆる経験がいかに自分を豊かにしてくれたかを知る。
故郷に昔の形をとどめるものはなく、懐かしい誰もかれもすでに亡く、大切な想いだけは胸の内に。
しみじみと心をつかまれた。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 窪 美澄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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