2013年10月25日

雨のなまえ

雨のなまえ [単行本(ソフトカバー)] / 窪 美澄 (著); 光文社 (刊)

『雨のなまえ』・・・実家の匂いをまとう身重の妻という閉塞感と自嘲に満ちた男
『記録的短時間大雨情報』・・・母と妻であるだけの冷めた生活の中に加わった義母の存在が、中年女の心を乱す
『雷放電』・・・妄想とともに死んだように生きてきた男
『ゆきひら』・・・救えなかった少女への想いを周囲に投影してしまう男
『あたたかい雨の降水過程』・・・息子との二人暮らしを選んだ女の揺らぎ

生まれ育って大人になり、働いたり恋をしたり伴侶を得たり。
選び取って生きてきたはずなのに、気がつけばただ繰り返す冷めた日常を、あきらめの中に受け入れて暮らしている。
熾火のように心の底を焼く生々しい願望は、妄想の中に放ちつつ。
そんな息苦しさと既視感に満ちた短編集。
何もかも思い通りになんていくわけないんだ、誰だって心を少しずつ削りながら、何でもないふりをして日々をやりすごしているんじゃないか。
それを特別苦しいとも間違っているとも思わずにいたのに、こんなふうにあらわにされたら痛くてたまらない。
なかったことにしてきたモノを引きずりだしてくれますね、この作者さんは。
でもそこに一種の清々しさもあったりして。

再終話の『あたたかい雨の降水過程』が、心地よかった。
人を許し受け入れなければ、自分自身がきゅうくつになっていくだけ。
彼女の気持ちのありようはとてもよく分かるから、救われたと感じられて良かった。
こういうところが、この作者の醍醐味。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 窪 美澄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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