
いつかパラソルの下で
- 作者: 森 絵都
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/04/26
- メディア: 単行本
厳格だった父を嫌って家を飛び出していた兄の春日とわたし野々は、父の一周忌を前に妹・花に呼び集められた。そして、父の死後、部下の女性から匂わされた浮気の話に自分達の知らない父の姿を見た兄弟3人は、父が決して関わろうとしなかった故郷・佐渡へ向かうことになった。
家の中では絶対的な存在で、どんなに理不尽だと思っても逆らうことができなかった父親。
家を出て自由を謳歌している兄と野々、親元にとどまり堅実な道を歩み続ける花、いずれにとっても父の思いがけない面は、とまどいとともに自分たちへの裏切りと感じたことだろう。
あんなにも押さえつけられ、楽しみを奪われ、その反動で今はせつな的にしか生きられないのに、自分はいったい何をやっていたの?父は本当はどういう人だったの?というわけだ。
父親の過去をたどる旅で3人は、頭上に重く君臨していた父が、決して完璧ではないひとりの人間として見えたことで、ようやく父親の呪縛から解き放たれ、誰のせいでもない自分の力でこれから先を始めることができるようになったのだと思う。
わかる気がするんだよなぁ。そういうの。ようやく許せたんだよ。きっと。
突然の事故死でなければ、もっと年とったおじいちゃんになるまで生きていてくれれば、いずれはどこかで、親を一人の人間として知り、許せる時が来たんじゃないかと思うけれど、もしかしたらいなくなって初めて気付くことなのかもしれない。
親の影響を受けない子どもはいない。でも、親がこうだったから、というのを言い訳にしてはいけない。お兄ちゃんの彼女が言うとおり、 ハタチも過ぎて自分の行動を親や育ちのせいにしているようでは情けない。
それは子どもの考え方だ。年を重ねてゆくなら、相応に中身も育てなければ。
家を離れてひとり立ちすれば、もっと早くに気付きそうな気もするけれど、野々がそのことに気付けたのは良かった。
一年たってもなかなか立ち直れなかったお母さん。それまでずっと、夫の価値観を受け入れてきたぶん、その信頼関係を覆す事実はショックだったろうけれど、きっと彼女は大丈夫。
唯々諾々と夫に従い続けてきたのではなく、自分だけは夫の味方であろうと決めていたように思う。確信犯なのだ。だから、「何なのよぅ。それは」という嵐が過ぎればきっと。
いつかパラソルの下で。その言葉をかみしめると、個人的には号泣しそうになるのだけれど、
その想いを悔いとしないで、先へ進むための礎としたところが、からりと明るくていい。
やっぱり私は、ハッピーエンドが好きだ。