2002年06月04日
名残りのコスモス
『名残りのコスモス』 夏休みに立ち寄った、母親の学生時代の同級生親子。盛り上がる母親達の横で、変に意識してしまって一言も話のできなかった5年生のぼくと 4年生の薫。
照れ隠しにやたらはしゃいでみたり、知らん顔してみたり、そして話せなかったことを後でこっそり後悔する場景が目に浮かぶようで、とてもほほえましい。
『マジ』 兄のように優秀でなく、通学用の自転車も盗まれた栄二と、わかりやすい山下、成績が良くてそれだけで信用があるが実は家庭に事情のある高橋。 時代が平成に変わった日に集まった三人。
変に親を意識したり、兄弟との確執があったり、それぞれの道を歩み始めた少年達それぞれの思いがつづられる。
どこにでもありそうな家庭の風景、大きな事件も何もない日常の中で、誰でも小さな喜びや痛み・せつなさを抱え、心の揺らがせているんだな、 生きるってそういうことなんだなぁと思う、他7編。
干刈さん最後の作品集。
2002年02月14日
ビッグフットの大きな靴
薄いベージュの各ページ・見開きに、グレイと薄紅のイラストとグレイのテーブルに囲まれた本文が納まっている。 ページをくるごとに一枚の絵を見ているようで、思わず手にとってしまった。
離婚後、もの書きの母と暮らすふたりの息子、一歩と拓二。
夏休みにプロレスラーのビッグ・フットとシルクロードで2週間を過ごすというテレビの企画に応募した中2の一歩が、オーディションを受けることになったというイベントを軸に、女たちの21世紀への展望をテーマとした原稿に取り組む母や、周囲の人々との関わりを描く。
子供を育てながら働く女性というのは、みんな痛みを抱えているなぁと思う。
優しくなれなかったり、手をかけてやれないことで、子供に負い目を感じてしまうのは、よく分かる。
けれど、「母親が手を出してしまう多くは、自分の苦痛をなくすためだと気付いた」という言葉にハッとする。
遅いのも、片付かないのも、情けないのも我慢して、自分でやらせなければいけないのだ。
頭ではわかっちゃいるんだけどね…
ちくちくと心を痛めながら距離をおく母、その母の遅い帰りを、電灯を灯すことで迎える息子達。
思いやりと信頼に包まれた、いい家族だな。
2001年09月04日
しずかにわたすこがねのゆびわ
まず、題名に惹かれた。 童唄の一節らしい。
60年代の末、健康薬品会社で働く4人の女性の20代から40代までの、人生それぞれが描かれる、とても濃い小説。
横暴な父の影響から無口で暗いと自覚する芹子、穏やかな家庭に育ち容姿に恵まれながら結婚に踏み切れない百合子、親の勧める見合い結婚で幸せになろうとする梅子、不倫の末知り合った男と結婚し働き続ける葵。
娘から妻に、母に、時には妻の立場を危うくする者だったり。
20年という年月は容姿も含めて全てが変えてゆくが、距離を保ちながらもお互いがSOSのよりどころとなっている女性たちの姿が新鮮。




