![舟を編む [単行本] / 三浦 しをん (著); 光文社 (刊) 舟を編む [単行本] / 三浦 しをん (著); 光文社 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/515j5VdhHyL._SL160_.jpg)
舟を編む?情報なしに読み始めたら、言葉の海を渡る舟を編む、辞書編集部の物語だった。
そもそも辞書がどうやってできているのか知らなかったし興味も持っていなかったのだけど、大変な作業なんだね・・・
何十万という中から見出し語を選び、分野それぞれの専門家に執筆を依頼し、決められたページ数に納まるよう言葉を埋め込んでいく。
さらに本としてできあがるまでには、紙質や印刷技術も重要な要素。
辞書というものがこれだけ多くの人の知恵とセンスと地味な努力のたまものなんだということを改めて知らされた。
語学者とともに辞書編纂に関わること30年、定年を間近にひかえた編集者。
その重責を受け、水を得た魚のように言葉の世界に没頭する馬締。
それなりに愛着を感じてきた居場所を、馬締の出現によって追われる西岡。
言葉の持つ本質を探りながらそれをあらわす最も適切な説明を考える作業は、見た目の地味さとはうらはらにとてもドラマチックだった。
辞書編集に関わる人たちすべてが、言葉や辞書作りにゆるぎない熱意と愛情を持っているからなんだろう。
羨望を意地に変える西岡も、不器用だけど臆病ではない馬締も、かっこよかった。
タケおばあさんや、自己犠牲なく献身的な香具矢の支えも温かかった。
「大渡海」編纂の最終段階で倒れた松本先生の心中を思うと、胸が詰まる。
でも彼は幸せだったんじゃないかな・・・
終わりのない、言葉という生き物を扱う仕事に携わって生きてこれたこと、それを継ぐ人がいるということ。
心残りはあっても納得していた気がする。
それでもこのあたりは、何度読んでもじわじわと涙が涌いてくる。
本人だけでなく関わった皆が、自分の目で見せてあげたかっただろうなぁと強く思うから。
残された者の方にこそ、悔いは残るものだから。
だからこそ思いを言葉という形に乗せて、思いをつないで、馬締たちの邁進は続く。
泣かせりゃいい本とは思わないが、それでもこれはいい。 いいものを読ませてもらった。