2012年11月14日

本屋さんで待ち合わせ

本屋さんで待ち合わせ [単行本] / 三浦 しをん (著); 大和書房 (刊)
本屋さんで待ち合わせ [単行本]

三浦 しをん (著)

大和書房 (刊)




しをんさんが読んだ本やあれこれの書評集。
ものすごく読むなぁ。ジャンルも様々で、まさに興味のおもむくまま読みまくっている様子は、同士よ!とも思うし、参りましたとも思う。
しかし違うのは、読んだ本の感想なり評なりを綴る言葉がまた、平易なのにおもしろく読めること。
作家さんですから言葉をあやつるのは本職ではありましょうが、同じ本を読んでいてもこう来るか〜と唸らされたり、おもしろい本を読んだという喜びが、ひたひたと伝わって来たりするわけです。
そうだよなぁ、本ってそういうふうに読むものだったなぁと改めて思わされたこと。さて、では私も。
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2011年10月30日

舟を編む

舟を編む [単行本] / 三浦 しをん (著); 光文社 (刊)

舟を編む?情報なしに読み始めたら、言葉の海を渡る舟を編む、辞書編集部の物語だった。
そもそも辞書がどうやってできているのか知らなかったし興味も持っていなかったのだけど、大変な作業なんだね・・・
何十万という中から見出し語を選び、分野それぞれの専門家に執筆を依頼し、決められたページ数に納まるよう言葉を埋め込んでいく。
さらに本としてできあがるまでには、紙質や印刷技術も重要な要素。
辞書というものがこれだけ多くの人の知恵とセンスと地味な努力のたまものなんだということを改めて知らされた。

語学者とともに辞書編纂に関わること30年、定年を間近にひかえた編集者。
その重責を受け、水を得た魚のように言葉の世界に没頭する馬締。
それなりに愛着を感じてきた居場所を、馬締の出現によって追われる西岡。
言葉の持つ本質を探りながらそれをあらわす最も適切な説明を考える作業は、見た目の地味さとはうらはらにとてもドラマチックだった。
辞書編集に関わる人たちすべてが、言葉や辞書作りにゆるぎない熱意と愛情を持っているからなんだろう。
羨望を意地に変える西岡も、不器用だけど臆病ではない馬締も、かっこよかった。
タケおばあさんや、自己犠牲なく献身的な香具矢の支えも温かかった。

「大渡海」編纂の最終段階で倒れた松本先生の心中を思うと、胸が詰まる。
でも彼は幸せだったんじゃないかな・・・
終わりのない、言葉という生き物を扱う仕事に携わって生きてこれたこと、それを継ぐ人がいるということ。
心残りはあっても納得していた気がする。
それでもこのあたりは、何度読んでもじわじわと涙が涌いてくる。
本人だけでなく関わった皆が、自分の目で見せてあげたかっただろうなぁと強く思うから。
残された者の方にこそ、悔いは残るものだから。

だからこそ思いを言葉という形に乗せて、思いをつないで、馬締たちの邁進は続く。
泣かせりゃいい本とは思わないが、それでもこれはいい。 いいものを読ませてもらった。
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2010年05月07日

天国旅行


天国旅行

天国旅行

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本


樹海で出会った男ふたりの奇妙な道行『森の奥』
幾度か心中の間際を歩んできた老人が、やがてひとり残されるであろう妻に向けて初めて思いを綴る『遺言』
祖母の初盆に訪ねて来た男が語る不思議な縁『初盆の客』
自分の前世と信じる夢をよりどころに、既婚者との倦んだ関係を続ける女『君は夜』
命を盾に教師を糾弾した女子高生とその後『炎』
見えるし話せるのに触ることはできない、幽霊になってしまった恋人と男の物語『星くずドライブ』
一家心中の生き残りということに捕らわれている男の『SINK』

心中をテーマとした短編集。  依存や諦観をともなう嫌な物語もあるけれど、概してその先に希望や穏やかさを感じられるものが多かった。
コミカルなやりとりの内にもひやりと冷たいものが潜み、淡々とした日常は時に激震する。
この按配に、作者の多才を感じる。

一番惹かれたのは『SINK』
心をあの日の海中に置き忘れてきたような悦也が、ゆっくりと痛む眼を開くように、記憶を掘り起こし、塗りかえていく。
死に損なった人生ではなく、生きていくための人生に目を向けることは、家族を改めて葬り決別する行為なんだろう。
起きてしまったことは変えられなくても、そこに与えられる意味は様々だ。
だからこそ肯定の人生をと願う。
来し方を振り返るとき、『遺言』の老人のように、生きてきて良かったと思える人生でありたいではないか。
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2009年12月03日

まほろ駅前番外地


まほろ駅前番外地

まほろ駅前番外地

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 単行本


多田と行天、そして前作でふたりと出会った人たちの、その後の物語。

岡老人は懲りずにバスの監視を依頼続け、そんな夫を横目に夫人は高校生時代の行天に何度も会っていたことを思い出す。
曽根田のばあちゃんは遠い昔の恋物語を語り、由良少年はとんでもないオトナの代表・行天に振り回され、ちょっと大人の世界をのぞき見る。
行天は過去の少しにケリをつけられたけれども、まだまだ計り知れない闇を抱えたままだ。
そして遺品整理の依頼をきっかけに、新たな繋がりが始まるかもという気配。

どたばたあり、しんみりもあり。
多田が行天を放り出せないわけが、わかるような気がする。
成り行きから始まった便利軒ふたりのその後が、早くも楽しみ。
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2009年08月07日

神去なあなあ日常


神去なあなあ日常

神去なあなあ日常

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 単行本


おもしろかった!林業ってこんななんだーと思わず興味がわく。
それというのも、勇気が素直で伸びやかで、額に汗して働く喜びがまっすぐに伝わってくるから。
無理やりとんでもないところへ放り込まれて、流されるままといういい加減男がどうなることかと思ったけれど、 のめり込めるモノに出会う機会がなかっただけなのかもね。
若いうちは何事もやってみるべし。
そうやって子を突き放せる親でありたいとも思うのであります。
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2007年12月22日

仏果を得ず

仏果を得ず [単行本] / 三浦 しをん (著); 双葉社 (刊)

高校の修学旅行で強制的に鑑賞させられた、人間国宝・笹本銀大夫の舞台に惹かれ、研修所から銀大夫に弟子入りし、稽古三昧の健。思いがけなく、芸達者だが変わり者の三味線・兎一郎と組まされることになった健は、さらなる邁進を心に決めるが・・・

若い大夫が、師匠や相方に厳しいながらもかわいがられ、時には恋に浮かれ、面倒に巻き込まれながらも精進していく物語。
テーマは何だっていい、若い子が一心に打ち込む姿は気持ちのいいものだ。
文楽についてはほとんど知らず、興味もなかったのだが、健が仮名手本忠臣蔵の秘められた真実を語り出すくだりには、ぞくぞくっと来た。
苦難あり、妄執あり、迷いあり。それでも、生きて生きて生きる。
語られ、そそのかされてしまうなぁ。この勢いには。
これを読んだら観てみたくなるね。
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2007年07月15日

きみはポラリス

きみはポラリス [単行本] / 三浦 しをん (著); 新潮社 (刊)

ただならぬ恋愛短編集、ということだった。
なるほど、どこにでもありそうな風景の中に、こんなにも「ただならぬ」恋や愛はあるのだ。
他の誰でもないその人を好きになること、大切に思うこと、時には何かを犠牲にして、あるいは世の中の仕組みから外れて。
人と人との関わりは、その間柄にどんな名が与えられていても、 何かが過剰だったり足りなかったりで、うまくいかないことが多い。
けれど、かけがえのないものを共有した人との間には、他のだれにも侵せない絆ができるらしい。
そんなことが何やらいとおしい。
ちなみにポラリスとは北極星のことらしい。全天で確かな位置を示す星。唯一無二の。
なんて甘々な言葉なんでしょ。

禁忌に触れる「裏切らないこと」、過去の罪に自分なりのけりをつける「私たちがしたこと」、 子供の頃の誘拐犯を思う「冬の一等星」が、しみじみと好き。
最初と最後を飾る寺島と岡田の物語と、恋人が徹底的ロハスに走ってしまった「優雅な生活」は、もっと好き。 しをんさん、いろいろな種類の引き出しをお持ちのようだ。
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2006年11月12日

三四郎はそれから門を出た


三四郎はそれから門を出た

三四郎はそれから門を出た

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本



朝日新聞に連載のコラムをはじめ、本に関するものを中心としたエッセイ集。
日曜日ごとに届くコラムを楽しみに読んでいたので、ほぼ一年ぶりのしをんさんだが、どうもそういう気がしない。
読み応えのあるものからわかりやすいものまで多様だが、出る新刊すべてを読みつくすわけにもいかないだろうから、しをんさんのお眼鏡にかなった、もしくは好みの作品なんだろう。
大西巨人は気になる。がしかし、そうやすやすと読めるものでもなさそう・・・
その他、本以外の雑多なエッセイや内輪話のようなものもあり、しをんさんの人となりが何となく見えたような気がする。これだけ平易に言葉を操れたら、文を書くのもおもしろいだろうな。

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2005年10月14日

むかしのはなし


むかしのはなし

むかしのはなし

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2005/02/25
  • メディア: 単行本



「かぐやひめ」から「花咲か爺」からの話、「天女の羽衣」からの話、「浦島太郎」からの話、三ヵ月後に地球が大きな隕石と衝突する。 そして選ばれた一千万人だけが脱出用ロケットに乗れる。「鉢かつぎ」から生残り2ヶ月の意味をそれぞれが考える中、ロケットに乗るのも乗れずに悲嘆に暮れるのも。 の話、「猿婿入り」からの繰言、「桃太郎」から。

「かぐやひめ」「花咲か爺」など、よく知られた昔話をもとににつづられる7つの物語。
読んでいくうち、これは単に昔話の現代版ではなく、元となる昔話のテイストを取り入れつつも、隕石の衝突による地球滅亡へ向かう世界を紡ぎ出す、繋がりあう物語だということに気づいた。
そしてそれが、かつて地球にいた頃の、昔の話というわけ。

若死する一族の血を受け継いだホスト、愛犬の最期に悔いを残す空き巣男、叔父と恋愛関係に陥った少女、5年ぶりに村にそぐわない彼女を連れて戻った兄貴分の男、自分自身が生きやすいよう体を変えるタクシー運転手と整形途中の客、不本意な男と結婚し脱出ロケットに乗った女と、世界が破滅に向かうことを知りつつ日々を生きる人たちの情景を描きつつ、最終話の伝説の高校生モモちゃんをめぐる物語で、ぐるりと冒頭の物語に繋がる。
最後の「懐かしき川べりの町の物語せよ」が印象的。
甘い甘いフルーツサンドばかり食べているモモちゃんは、粗暴でどうしようもなくバカで、比類ない寛容さと酷薄さを併せ持ち、絶対的な自分の価値観で生きている。どうもこういうタイプには弱い。
「子どもができたらどうするんだよ」「かわいがる」…この単純明快な力強さ。たまらんなぁ

どうせ死ぬんだからと考えるか、どうせ死ぬならと考えるか。もしくは何も考えないか。
期限は見えない。ならばどうする?と問われているようだ。えらい命題を放り投げてくれるものだ。
それにしても、昔話ってずいぶん残酷な話が多いんだなぁと改めて思った。
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2005年08月27日

私が語りはじめた彼は


私が語りはじめた彼は

私が語りはじめた彼は

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/05/25
  • メディア: 単行本



何人もの女性と関係を持ち、結婚と離婚を繰り返す教授を軸に繰り広げられる人間模様。
当の教授は登場しないのだが、「ある種の女にとってはたまらない魅力」があるんだそうだ。
幾人の女性と家庭を作ってはこわし、子を成しては関心も持たずに別れたのか、整理してみないとわからなくなるくらい。何を求めてそんな人生を送ったのか、他人に執着があるのかないのか、いったいどんな人物なのか、つかみきれない。

夫として、父親として不誠実だった男は、周囲に負の感情の連鎖を起してゆく。そこから自分の道を開いていく者もいれば、自分を閉じてしまう者も出てくる。それぞれがドラマチック。
第三者的に誠実とはいえない男を、だからこそ自分のもとに引き寄せることができたのに、いつまでも繋ぎとめておこうとする女性の情もすごい。
それはもうすでに愛情でも恋でもなく、依存であり、執念となり果てている。

何を代価に何を求めようと構わないが、求めるばかりでは、幸せは手に入らないと思うのだがな。
怖い怖い。でもなんだか哀れだ。
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