2012年07月13日

邪馬台

邪馬台―蓮丈那智フィールドファイル〈4〉 [単行本] / 北森 鴻, 浅野 里沙子 (著); 新潮社 (刊)

雅蘭堂が競り落とした長火鉢の隠しから見つかった「阿久仁村遺聞」
越名から蓮丈研究室にもたらされたその小書物をめぐり、地図から消えた村の謎を探るうち、那智たちが関わった過去の事件につながる、闇の歴史が浮かび上がってくる。

北森氏の絶筆をパートナーの方が書き継いだ、最後の蓮杖那智フィールドファイル。
筆の交代を感じる箇所はあったが、邪馬台国の存在と大陸や朝廷との関係、地図から消えた村にまつわる奇妙な手書き文書などの謎解きがとても魅力的で、最後まで楽しめた。
諸説あり、未だ謎に包まれた邪馬台国と卑弥呼、鬼、製鉄、出雲・・・
QED同様、とても興味のある分野で、別のアプローチという点でもおもしろかった。

テーマが壮大なら、これまでの登場人物が表に陰に登場するのも、総括的。
まるで別の物語と思っていた『暁の密使』が、こう繋がってくるとは・・・
那智と陶子の最強タッグをもっと見てみたかった。
工藤さんは元気でやっているんだろうか。第2の香奈里屋も紹介してほしかった。
残念に思うことはたくさんあるけれど、まずはありがとう、そしてお疲れ様でした。
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2008年12月02日

虚栄の肖像


虚栄の肖像

虚栄の肖像

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本



絵画修復師という別の顔を持つ花師・佐月恭壱のシリーズ。
これ、シリーズになるといいなぁと思っていたんだよね。
やはり、凄腕といわれる修復過程に引き込まれる。
お互いの力量を量りつつ付き合っているような、周囲の面々とのかけひきがスリリングだが、その中で相棒の前畑善次朗が憎めない存在で和ませる。
佐月のかつての恋人が繋ぐ連作短篇だったが、「秘画師遺聞」が一番おもしろかった
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2008年06月17日

なぜ絵版師に頼まなかったのか


なぜ絵版師に頼まなかったのか

なぜ絵版師に頼まなかったのか

  • 作者: 北森鴻
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



時代が明治と改まって間もない頃、東京大学には多くの外国人教師が雇われていた。
その一人で、並外れた日本びいきのエルウィン・フォン・ベルツ先生の給仕として、やがては住み込み書生として奉公することになった葛城冬馬が、先生の元で学びつつ、 身近に起こる不思議を解き明かしていく、という連作短篇。

ベルツ先生の耳目手足となって冬馬が世間を奔放し取り組む謎は、外国に向かって開かれたばかりの日本という国の脆弱さ、それを憂える要人たちの思惑や陰謀を絡めて、 なかなかにおもしろい。
日本びいきなあまり、ちょっととんちんかんなところも見える外国人先生方といい、会うたびに職業も名前も変わる、元・市川喜三郎という男といい、 登場人物がとてもユニーク。
有名ミステリ作品をもじったタイトルも、にやりとさせますな。
ちなみに各章のタイトルは、「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」「死体が多すぎる」「人形はなぜ殺される」「羊たちの沈黙」あたりからかと思うのだが、 「紅葉夢」は「白昼夢」?ちょっと苦しいかなぁ・・・
冬馬と最終名・葛城頓馬のその後は「いろいろある」らしいと、続きを匂わせるエンディングも気になる。
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2008年01月05日

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋を知っていますか [単行本] / 北森 鴻 (著); 講談社 (刊)

《香菜里屋》シリーズ4作目。にして、もしかしてこれが最終巻?

老バーマンが古き良きスタイルのマティーニを作り続けてきた《BAR谷川》の幕引きに関わることになってしまった香月の「ラストマティーニ」
結婚して山口へ移ることになった飯島七緒の友人・明美が、介護していた祖母の死後「自分を鍛えに」群馬へ発った真意を知る「プレジール」
長年の会社勤めから雫石の旅館へ転職した東山朋生が、香菜里屋での一面識しかない「背表紙の友」から荷物を受け取る「背表紙の友」
店からメニューを消し、定番料理であるタンシチューを作ることをやめた工藤の決意と常連客のはなむけ「終幕の風景」
香菜里屋がなくなって一年後、雅蘭堂をはじめ店の常連だった人たちの間を、工藤の行方を奇妙な男が尋ねまわる「香菜里屋を知っていますか」

さりげなくも対する客にぴったりの酒と肴を提供しつつ、持ち込まれた謎にひとつの答えを見つけ出す、ビヤバー《香菜里屋》の店主・工藤。
おなじみのそんな情景も今回は、ちょっと雰囲気が違っていた。
これまで、様々な縁で工藤と関わってきた古いなじみたちがそれぞれ転機を迎え、伴侶を得るものがあれば、惜しみながら香菜里屋を離れていくものもいる。

前作よりちらちらと見え隠れしていた、工藤の過去と待ち人の理由が明かされ、そして香菜里屋の幕引き・・・
なんだかあっけないほどの旅立ちだったけれど、きっとどこかで新たなよりどころを作っているに違いない、という常連たちの温かな想いで締めくくられている。
香菜里屋を軸にゆるくリンクしていた他シリーズの登場人物が勢ぞろい、というのはいかにも大団円っぽいけれど。
うーん。しかし問題がきれいに片付いたわけじゃないよね。
きっと…と希望を持たせるだけで終わってしまうのかなぁ
新たなふたりの出発、その後もぜひ見てみたい。
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2006年05月17日

ぶぶ漬け伝説の謎


ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー

ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/04/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


裏京都ミステリーって、これ、シリーズになったんですね。
大悲閣に居候を決め込んだバカミス作家ムンちゃんと、みやこ新聞記者の折原のマイナーな京都のエッセイが引き起こすトラブルに、 元裏世界の住人有馬次郎が巻き込まれて・・・という内容だが、謎解きはさておき、登場する面々の掛け合いがばかばかしくておもしろい。
地名や食べ物、京都人の感性など、観光用とはちょっと違う京都紹介という感じかな。
土地勘があると「へえ、そんなことが」とか「そんなところにそんな物が?」となかなか興味深い点も多いんだが、そうでない人にはどうでしょ。
ちなみに冒頭の「二十歳の原点」は、かなり思い入れのある一冊なのでした。
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2006年04月26日

深淵のガランス


深淵のガランス

深淵のガランス

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本


銀座の花師でありながら、凄腕の絵画修復師という顔を持つ佐月恭壱が主人公となる物語。
修復を請け負った洋画家の傑作の下に隠された絵にまつわる「深淵のガランス」と、古い時代の洞窟壁画の修復と、分割された絵画の復元をめぐる「血色夢」
いずれも、いわくつきの品々とそこに秘められた思いを解き明かしつつ、闇すれすれの一流仕事をやってのけるところが魅力。旗師・冬狐堂の絵画版という感じ。
そしてどうやら、名を伏せて登場している、面倒ごとを招く「あの人」というのは、陶子さんらしい。
冬狐堂シリーズほどスリリングではないけれど、絵画の修復過程がとても興味深くておもしろかった。
これもシリーズになるといいなぁ
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2006年03月18日

暁の密使


暁の密使

暁の密使

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本


明治30年代。清を下し、ロシア帝国との関係に緊張が高まる日本より大陸に渡り、西蔵(チベット)を目指す東本願寺派僧侶・能海寛がいた。 彼の使命は、維新後の神仏分離政策によって危機に瀕している仏教界を救うため、仏教の原典「チベット大蔵経」を入手すること。
しかし純粋に仏道を求める能海の決意とは別に、その道行には近代国家への道を模索する日本政府の秘策が隠されていた。
 
鎖国下のチベットは、弱体化しつつある清国、シベリア鉄道によって一気に勢力を伸ばそうをしているロシア、 それをけん制したいイギリスなど各国にとって要の地となっていた。
そこへ向かう能海の道行は、様々な障害に阻まれる。
行く手を阻もうとする者、ひそかに導こうとする者、それぞれの思惑を秘めて暗躍する各国のエージェント。ひそかにささやかれる「パワーゲーム」という言葉。
諸国とのかけひきに否応なく巻き込まれ、それでも宗教上の悲願を自らに刻みつけるよう進む能海に、
厳しい自然が追い討ちをかける。

陰謀と過酷な自然という障害を乗り越えていく冒険小説や山岳小説のようなおもしろさの中に、能海という人の心の強さ、純朴さが光る。
その人柄ゆえ、利用もされるが、利害を超えて好まれる、助けられることもあったらしい。
虚実織り交ぜて描かれる物語の中で、能海という人物の人となりがとても魅力的だった。
同じく仏教者としてチベットをめざし、歴史に大きく名を残したのは河口慧海。
能海は雲南省西北部で終焉を迎えたとされる。
自分に課せられた秘密の使命を知らされ、命がけの悲願が無に帰した能海はいかに無念だったか。
激動の時代、 こうして国益のために散った人たちが多くいたのだろうことを思わされた。

軽めのミステリもいいけど、こういう読み応えのある物語も良し。北森さん、ますます期待です。
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2005年09月11日

写楽・考


写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮エンターテインメント倶楽部)

写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮エンターテインメント倶楽部)

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 単行本



楽しみにしていた、蓮丈那智フィールドファイルシリーズ3弾。
零号教場の前で撮った内藤の写真が那智にたいするお守りになるという新たな都市伝説と、内藤が助手の佐江とともに民俗調査に向かった御守り様人形に関わり、 依頼者の当主が惨殺された事件との奇妙な符号を那智が看破する『憑代忌』
円湖湖底で発見された古い神社跡に対する発見者の推察が、絵画盗難事件と関わってくる『湖底祀』
学生時代に狐目とともに訪れ、事件に遭遇した御厨家の奇祭が今年もちょうど行われることを知った那智が、再び訪れた御厨家で未解決だった事件の謎を解く『棄神祭』
当主が失踪し、残された古文書と式直男名義の学説の謎を追う内藤たちが、古文書に秘められた
大いなる謎掛けに行き着く『写楽・考』

毎回のことながら、事件の謎と民俗学的考察が細部まで入り組み、考察が謎を解くきっかけになり、
それがまた新たな考察を生むといった流れに引き込まれる。
読んでいる間はミクニと那智、第二の那智となりそうな佐江助手のかけあいがおもしろくて、雰囲気で読めてしまうのだが、 さてではどういう話だったか?と考えるとあやしいので、きちんと理解できているわけではないらしい。まぁ知的好奇心をくすぐられつつ、というところ。
民俗学って、おもしろいなぁ。単に神社の入り口だと思っていた鳥居の、その起源や原点からどう進化したのか、なぜ鳥が居るところなのか、 というあたりがとてもおもしろかった。
古事記や日本書紀に込められた寓話や、神様のルーツなども興味深い。

今回も、『写楽・考』で冬狐堂の陶子と那智との深い信頼関係が見えるが、これって最強のコンビだよねぇ。 一度は民俗学を見切り現場を離れた狐目こと高杉康文、この人もこれからどうなるのか、どうするのかとても楽しみだ。
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2005年02月26日

瑠璃の契り


瑠璃の契り―旗師・冬狐堂

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本


旗師・冬狐堂の連作短編集。
目を病んだ陶子に付けこむように、富貴庵の芦辺から委託された返品を繰り返す人形。仕掛けられた企みをはね返し、旗師であり続けることを強く思う『倣雛心中』
才能に恵まれながら若くしてこの世を去った友人の追悼画集が復刻版として送られてきた。陶子が自分の才に見切りをつけた苦い思い出がよみがえる『苦い狐』
硝子と深い関わりのあるらしい、瑠璃ガラスの切り子椀の作者を追ううち、切り子椀に込められた深い思いと哀しみに行き着く『瑠璃の契り』
ある人形を競り落とすことを頼まれたのち、行方がわからなくなったかつての夫・プロフェッサーDを追って博多へ赴いた陶子は、人形に関わる麒麟堂の三田村のはかりごとに巻き込まれる『黒髪のクピド』 以上4編。

いずれも骨董に関わる、真実を見抜く自分の力だけが頼りという熾烈な人間関係に舌を巻く。
それぞれが自分の良しとするやり方で生き抜いている、その人間性も含めての駆け引きがとてもスリリングだ。
だからこそ、陶子と同じく自分の腕一本で生きている硝子や、雅蘭堂との結びつきにホッとする。
甘えることも、必要以上に立ち入らせることもしない、けれど心から信頼できる間柄。
カッコ良いのだよね。これが。

切り子硝子、磁器、ビスクドールといった品物に関するあれこれも、読んでて楽しかった。
この冬狐堂シリーズは、かなり嫌なヤツも登場するけど、それが後を引かないのがいい。
陶子の目が今後どうなるのか、少し心配。
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2004年11月16日

蛍坂


螢坂

螢坂

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/09/22
  • メディア: 単行本


なんと一年ぶりの北森さんでした。もっとどんどん新刊、出して欲しいです。
さて本作「蛍坂」は表題を含む5編は、「香菜里屋」シリーズの3作目。
これだけでもう、ある程度以上のクオリティは約束されたようなもの。

カメラマンとしての名声を得るため別れた、今は亡き女との最後の場所。そこに託された伝えられない思いを16年後に知ることになる「蛍坂」、小さなタウン誌に掲載された、 焼き鳥屋でみんなから愛された猫の話から、猫の石碑、幽霊話と思いもよらない事態に発展した「猫に恩返し」、
土地開発の波に、最後まで首を縦に振らなかった画材屋の真実「雪待人」、作家の秋津が公園で見かけた路上生活者に疑問を抱いたことから思わぬ事件を招いてしまう「双貌」、
病弱だった父の弟・脩兄ィが死の間際に託した、幻の焼酎・狐拳を探し出そうとする真澄に、工藤がひとつの答えを示す「狐拳」
影のハイパー探偵・工藤にかかると、表に見えていることとは全く違う裏の事情や、秘められた思いが、時に安堵を、時に残酷さをともなって明らかにされてゆく。
そして問題を抱える人は、おいしい酒とさりげなく凝った肴、いつの間にかするりと心の内に入り込んでしまう絶妙な距離感の工藤によって、悔いも哀しみも、 静かに受け入れられるようになる。
要するに香菜里屋は癒しの場でもあるわけだ。

友人のバーマン香月がちらりともらした工藤の待ち人とは、いったいどんな人なのか。
ここまで来ても、工藤のプライベートは全くといっていいほど明かされていない。
その謎がまた、次の楽しみでもあるんだけど。
料理は今回もすばらしい。垂涎もの。「ご家庭でも簡単にできますよ」…できませんって。
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