2003年07月14日

カザルスへの旅


カザルスへの旅 (中公文庫)

カザルスへの旅 (中公文庫)

  • 作者: 伊勢 英子
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1997/05
  • メディア: 文庫


読まなくきゃ、読まなきゃと思いながら、なかなか手がつけられなかった伊勢さんの本。
13才から18才まで学んだセロの恩師が敬愛していたカザルスを訪ねる旅、芸大卒業後、家を飛び出しパリで一人暮らしをしていた時代のこと、そして宮沢賢治に惹かれ、 遠野・花巻への旅、原風景とも思える北海道の子供時代の物語。
 
多くは伊勢さんの自分探しとでもいうべき旅の記録なのだが、読めば読むほど、伊勢さんという人に惹かれてしまう。 
ひとところに落ち着き安定することを良しとせず、いつも自分を追いつめて駆り立てていくような生き方。このままではいけないというあせりと飢餓感、 そして自信に裏打ちされているような、見切り発車のような、衝動的な行動力。 全てが私を奮い立たせる。
心安らぐ物語りもいいけど、自分は今何をやっているのか?このままでいいのか?と我が身に問わずにはいられないこういう本も、私には必要なんだと感じる。

伊勢さんが賢治に惹かれるのは、彼女もまた身のうちに修羅を飼う人だからだろう。
音楽をよくする人なら、もっと伊勢さんの感じたものに近づけた気がする。それがとても残念。
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2002年09月14日

はじまりの記憶


はじまりの記憶 (講談社文庫)

はじまりの記憶 (講談社文庫)

  • 作者: 柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 文庫


ノンフィクション作家と画家のふたりが、「かなしみ」や「空」「存在理由」といった同じキーワードでリレーしながら、幼少期の思いや風景を語る連作。
伊勢さんに思い入れのある私は、彼女の生い立ちや子供の頃の話を、とても興味深く読んだ。
年子の妹がいて母に甘えられなかった幼児期、北海道での野生児時代、溺れた記憶から拒否反応を持っていた水の克服、父や祖父、そして娘たちへの思い。
逆子で大難産の末生まれた彼女が、いかに勝気で思いこむと一直線で、風変わりであるか、
その魅力が、思わず笑えるイラストとともに見えてくる。
 
子供がぐんと伸びる前には、必ず妙に甘えたり逆らったりするけれど、そうやって自分の存在と
それを受け止めてくれる誰かや何かを確かめているのだと思う。
幼少期の原風景に立ち返るというのは、大人になってからその作業をしているようなものだから、
なるほど確かに、すごく前向きな姿勢なのだな。
私の幼少期も、子供であるための哀しみに満ちていた気がする。
そうした思いが、結局今の自分を形作っているのだと思うと、ただいらだちながら前を見続けるより
時には振り返ってみるのもいいかもしれないと思える。
柳田氏の描く植物のスケッチも、こまやかでほほえましい。 絵も、人柄を表すようだ。
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2002年04月14日

1000の風 1000のチェロ


1000の風・1000のチェロ

1000の風・1000のチェロ

  • 作者: いせ ひでこ
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 大型本


同じチェロ教室の少女は、ぼくのチェロの音を犬の声みたいだと言った。
いなくなったグレイを忘れられずにいるぼくは、神戸から来たというその少女と、阪神大震災復興支援コンサートに、1000人を越すほかのチェロ弾きと一緒に参加する

13歳の時からチェロを弾く絵描き・伊勢さんが訪れた、大震災あとの神戸の情景と、そこに住んでいた人や者たちへの思い、そしてグレイを喪った痛みが、「ぼく」の姿に重なる。
時の助けを借りてもなお越えられない、喪った者への悲しみと慈しみが、それぞれの物語を抱えたチェロ弾きたちの思いとともに、再生へと向かうようなすがすがしい絵本。
「みえないいぬをだきしめてひいた」チェロの音色は、きっと願う相手のもとに届いたことだろう。
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2002年04月10日

ぶう


ぶう (中公文庫―てのひら絵本)

ぶう (中公文庫―てのひら絵本)

  • 作者: 伊勢 英子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 文庫


いせさんちのプレーリードッグぶう≠ニ、小さいMちゃんたちが、読んで楽しく見ておかしい。
でも、下手な漫画よりおもしろい。 まだ元気だった頃の、弟分・グレイもちょこっと出てます。
図書館だと、絵本・児童書・もしくは「動物の飼育」コーナーにある場合も。
飼育の参考になるかどうかはあやしい…というより、今はプレーリードッグって飼えないんだっけ。
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2002年03月27日

グレイのしっぽ


グレイのしっぽ

グレイのしっぽ

  • 作者: いせ ひでこ
  • 出版社/メーカー: 理論社
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 単行本



グレイ最終章。 てんかんの発作がひんぱんに起るようになったグレイのために、グレイ用バリアフリーの家に引っ越した絵描き一家。  けれど、大きな発作を起こしてCT検査を受けた結果、肝臓と脾臓に悪性で進行の速いガンが見つかる。  痛みをとるための手術を受け、つかの間グレイらしい表情を見ることができたが、5歳の誕生日を迎えたグレイは、進行する病に蝕まれ弱っていく。
そして、グレイという支えを失いつつある家族は、いら立ち、不安定になる。

死にゆく者を看取るというのは、こんなにも大変で、切なくて、やりきれないものかと思う。
できることなら、何も、誰も、喪わずに生きていたい。 でもそれは、叶わないことなのだ。
ならば、グレイが最後までグレイであるように、ただ、生きられる時を精一杯生きる、その誇り高さに見合うように、最後まで目をそらさず、その死を見届けようとする絵描き。 壮絶な覚悟が痛いほど伝わる。  
渡された絵と文字で、その情景を追ってきた私もまた、グレイの喪失感から、しばらく抜けられそうにない。
けれど、グレイが逝って2年後、阪神大震災復興のためのチェロコンサートに参加した絵描きが、
哀しみや痛みを乗り越えていくように、頭をしゃんと上げて、生きていかなければと思う。

今、生きていること。 そして、一人ではないこと。  それは幸せなことなのだ、と思わずにいられない。 この本を、子供のための本棚だけに埋もれさせておくのは、絶対にもったいないと思う。
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2002年01月29日

グレイがまってるから


グレイがまってるから (中公文庫)

グレイがまってるから (中公文庫)

  • 作者: 伊勢 英子
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫



建築家と絵描き、大Mと小Mの姉妹の家族もとにやってきた、ハスキー犬の子犬グレイ。
1年ほどの間に抱えられないほど大きくなってしまったグレイとの、しつけ・訓練・散歩・病気…
生き生きとしたスケッチと、慈しみに満ちた言葉で、絵描きや家族との日々が語られる。

主人を主人とも思わないグレイのなめた態度に、思わず大笑いしてしまう場面もあるが、
グレイと共に風の匂いをかぎ、流れる雲をながめる…そんな場面を読み進むうち、
同じ風景の中に立ち、風を感じているような気にさえなる。 文もだが、何より絵がすばらしく、いいのだ。
一瞬の表情や情景を絵という形で見せてくれる絵描きさんに、憧れてしまった。
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2001年12月24日

気分はおすわりの日 


気分はおすわりの日 (中公文庫)

気分はおすわりの日 (中公文庫)

  • 作者: 伊勢 英子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 文庫



気まぐれでおねぼうな絵描きと、建築家、その娘達大Mと小Mの家族にハスキー犬のグレイが
仲間入りして五年。  甘えん坊でものぐさで、どうしようもなくかわいいヤツ・グレイの闘病と看取るまでの日々を、スケッチとともに書きとめたもの。

読む、というほどのものではないとタカをくくっていた。
あちこち書き散らされたグレイの表情を、犬好きなら楽しめるだろう、ぐらいに思っていたのだ。
ところがグレイとの日常、病気をしたり、バカな事をしたり、それを見守る絵描きの目は、
一人の子供に対するのと変わらない暖かさと重さを持った「おかあさん」の視線だった。 
そして死にゆく彼を見つめる、厳しい目でもあった。 家族だったのだなぁと思う。
犬であることを忘れるような、グレイのしぐさ、表情が微笑ましい、すてきな1冊だった。
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2001年04月30日

マキちゃんの絵にっき


マキちゃんの絵にっき (中公文庫)

マキちゃんの絵にっき (中公文庫)

  • 作者: 伊勢 英子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 文庫



小さいマキちゃんの目を通して描かれる、お姉ちゃんのマエちゃん、絵を書くお仕事をしているお母さん、いつも忙しいけどお母さんとは違ったいい匂いのするお父さん、 保育園の先生達、
そして少しずつ大きくなっていくマキちゃん自身・・・
「おとうさんしているときや、おかあさんしているとき、すくないかもしれないけど、マエちゃんやマキちゃんがいてほしいときは、いてくれるから、まあいいや、 と思います。」
言葉の裏に「ごめんねマキちゃん」が見え隠れする、挿絵もすてきな絵本(?)です。

本屋で拾い読みしている時、不意に鼻の奥がツンとなってしまいました。
私も「こどもだったときがわすれられないおとな」なのかもしれません。
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