2024年08月07日

 冬期限定ボンボンショコラ事件

冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫) - 米澤 穂信
冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫) - 米澤 穂信

ずいぶんとお久しぶりの、小市民シリーズ。
ひき逃げによる入院で、高校3年の大事な冬を棒に振った小鳩くん。
現在進行形の謎と、そこに繋がる過去の謎、そして「小市民」へのきっかけも明かされて、ほろ苦さはありつつ、きれいに回収された感がありました。
おそらく本人が気づいている以上に大切な存在になっているふたりの、その後の予感に本が緩みます。

本書でこのシリーズは完結のようですね。
待ち続けている古典部も、ぜひ続きを!

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2023年09月06日

 可燃物

可燃物 (文春e-book) - 米澤 穂信
可燃物 (文春e-book) - 米澤 穂信

変わった癖や奇異なキャラクターもいない、淡々と仕事をこなす刑事たちの中にあって、ひときわ洞察能力に優れた葛警部の推理もの。

見えない凶器、不審な目撃証言、バラバラ死体の謎、不可解な放火犯、立てこもり事件の真相の5編。
それぞれのタイトルも端的で含みあり秀逸。
もちろん組織での捜査であるし単独解決というわけでもなく、証拠や捜査資料に基づく堅実なアプローチで違和感を突き詰めていくのだが、その先のひらめきが鮮やかです。
いや部下もなかなか優秀揃いだけどね。
生活感もなくただ刑事としてのみ描かれていて、これはこれでとても良しだが、バックグラウンドも気になるところ。
続編希望です。
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2019年12月27日

 Iの悲劇

Iの悲劇
Iの悲劇

無人となった村に新たな定住者を募る、Iターン支援推進プロジェクト。
担当する『甦り課』に配属された万願寺は、やる気のない西野課長、新人の観山とともに、移住者たちの対応に追われるが…という連作短編集。

一話ごとに個性的な移住者たちが登場してはトラブルが起き、結局は去ってしまう。
それぞれの事案は役人三者三様の個性とあいまって、むしろコミカルに描かれます。
普段はまるで動く気のない課長が、最終的にはてきぱきと事を収めてゆくので、実はとんでもないやり手?と疑ってみましたが、結末は思いもよらない苦さで。

地方なり役所仕事なりの理想と現実があるのはわかるのです。
でも無意味に踊らされ傷ついた人たち、ピエロ役の万願寺を思うと、後味が・・・なのも米澤作品の味なんですけどね。
がんばれ万願寺。彼の力みすぎない人の良さ、生真面目さが救いです。
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2015年09月14日

 王とサーカス

王とサーカス -
王とサーカス -

『さよなら妖精』の登場人物だった太刀洗万智が主人公ですが、当時のことを思い出すくだりがある程度で、内容も雰囲気も全く別の物語。

舞台は2001年のカトマンズ。
ジャーナリストの太刀洗は、カトマンズのロッジを拠点に雑誌特集の取材準備をしていたが、その矢先に王宮で王族殺害事件が起こる。
伝手を頼って事件関係者への取材を取り付けるが、間もなく彼女は奇妙な屍体を発見することになる。

大事件の起こった現地にいるなら、取材し、実状を世界に伝えることが使命であり、ジャーナリストとして当然のことと考えていた太刀洗。
けれどそんな彼女の信念に、根本を揺るがすような問いが突きつけられる。
そのことにどんな意味があるのか。
なぜ自分には関わりのないことを知りたがり、さらに関わりのない人たちに伝えようとするのか。
他者の悲劇は楽しまれる、それが自分に降りかからないならなおさら。
ラジェスワルの言葉が自分に向けられているように、重い。

自分たちが受け取る、あえて得ようとしなくても垂れ流される、事件の映像や報道。
時に苦々しく思ったり、同情したり、考えを持ったり。
けれどすぐに忘れてしまう。自分には関わりのないことだから。
事件や報道のその後について、興味を持つことは少ない。
それがすでに楽しんでいる、ということなのか。
では遠く離れた場所のことは、知らなくてもいいことなのか。
それはそれで、違う気もする。

誰かを助けた同じことが、別の誰かを傷つけもする。
報道でなくても、人が何かアクションを起こすというのはそういうことだ、と思う。
正しいとか本当のことというものが、いかに個人的で多面的でがあるのかとも。
とかまぁ、いろいろ思いをめぐらせてしまいました。

死体の特殊な状況と犯人捜しというミステリ的な部分もあるけれど、おおむね太刀洗と周囲の人々の葛藤がメインで読ませてくれます。
ゆるぎないものを持つ骨太な彼女、そして混沌として美しいネパールの情景にも惹きつけられました。
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2014年06月11日

 満願

満願 -
満願 -

『夜警』 殉死した部下の真相
『死人宿』 元恋人が山奥に建てた宿で起こること
『柘榴』 美しい中学生姉妹が思いを叶えるためにとった手段
『万灯』 海外勤務ビジネスマンの罪と裁き
『関守』 峠で続く事故の顛末
『満願』 夫殺害で服役した夫人の真の思惑

いずれも、読み終えるとほうっとやるせない溜め息が出てしまうような物語の短編集。
初出のほうで既読のものも多かったのだけど、再読でも充分楽しめました。

静かな語り口で綴られる物語は美しく、読めばたちまち山深い温泉宿や人気のない教室、灼熱の異国、西瓜の匂い漂う部屋といった物語世界へと誘われる。
そして思いもよらない結末は、してやられたーというよりは、背筋がひやりとするような感じ。
いいなぁ まるで怪談のようじゃないですか。
こういう怖さと美しさを突き詰めたような雰囲気、大変好みです。
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2010年08月07日

ふたりの距離の概算


ふたりの距離の概算

ふたりの距離の概算

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/26
  • メディア: 単行本


「古典部」シリーズ。
古典部に新入生の大日向友子が仮入部したが、締め切りを前に入部をやめると言う。
千反田との間に何があったのか?20キロマラソンの間に解かれる謎。

奉太郎は相変わらず「しなくてもいいことは・・・」というスタンスを取っているつもりだが、これだけ細かいことに気づいて省エネってこともないでしょう。
奉太郎自身が変わってきた感じ。
最後まで引っ張られておもしろかったけれど、大日向さんはちょっと思い込みが激しすぎる気も。
それにしても、前作から微妙な雰囲気の二人の距離がこの先どうなるのか?楽しみです。
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2009年10月24日

追想五断章


追想五断章

追想五断章

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 単行本


大学を休学し、伯父の元に居候しながら古書店の手伝いをする菅野芳光は、高額報酬に惹かれ、父親が生前に書いた5編の小説を探すという仕事を内緒で受ける。
やがて芳光は、依頼者・北里可南子の父が、22年前に妻殺害の容疑をかけられていたことを知る。

知人に送られ埋没した5つの掌編。
作中作となる結末のない物語は、意味深い内容だった。
なんでこんな不気味で暗い物語ばかりなんだろう?と首を捻りつつ、次なる物語を探す過程に引き込まれた。
最後まで謎が謎であることも含め、とてもおもしろかった。
しかしいかんせん暗い!
「父による母殺害疑惑」が主軸なのでしかたない部分もあるけれど、謎を追う主人公のおかれた状況といい、彼自身の覇気のなさといい、 読んでいる方までどんどんうつむいてしまうような感じ。
まぁそこが味といえばそうなんですけど。
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2009年02月19日

儚い羊たちの祝宴


儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本



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2007年10月23日

遠まわりする雛

遠まわりする雛 [単行本] / 米澤 穂信 (著); 角川書店 (刊)

久しぶりの「古典部」シリーズ。
4人が古典部に入部して間がない頃から春休みまでの、短編集。

相変わらず奉太郎は「やらなくてもいいことなら、やらない」省エネ主義。
けれど千反田の「気になります」には弱く、この一言が出ると動かざるを得ない。
その「気になります」を封じるべく、謎の先制攻撃を仕掛けた「やるべきことなら手短に」
数学教師の勘違いに怒った千反田に意外な面を見つける「大罪を犯す」
『氷菓』事件の労をねぎらうため強制参加させられた温泉合宿での幽霊騒動「正体見たり」
自分を持ち上げる千反田に反論するため始めたゲームが、むしろ…となった、凝った謎解きの「心あたりのある者は」
初詣先で納屋に閉じ込められた奉太郎と千反田の脱出劇「あきましておめでとう」
摩耶花のバレンタインチョコが消えた「手作りチョコレート事件」
千反田の「生き雛」行列の通る橋が通行不可能になる「遠まわりする雛」

素直でおっとりしているのに、何にでも興味を示し、疑問に当たれば子供のように眼を輝かせる。
そんな印象の千反田が、今回はいろいろな面を見せている。
自分の主義に反する「気になります」の発動を阻止しようと画策する奉太郎も、時には声を荒げたり、兄弟がいることをうらやましがったり、晴れ着で大人びた社交をする彼女に、少しずつ気持ちが動かされていくのがわかる。
謎解きもおもしろかったけど、今回は青春小説的部分のほうが特に。
素直に好意を向けてくる千反田に奉太郎はどう向き合うのか、「こだわらない」主義のため摩耶花との関係を保留し続ける里志は、どう答を出すのか。
でもまあ、傷つけまいとしてつく嘘が、何よりその人を傷つけるんだってことも、わかったほうがいいなぁとか思ってしまうけどね。
そういう青くささも含めて、好きです。このシリーズ。今後にどう繋がっていくのかが楽しみ。
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2007年10月01日

インシテミル

インシテミル [単行本] / 米澤 穂信 (著); 文藝春秋 (刊)

インシテミル・・・英題はThe Incite Mill  どういう意味でしょ?
情報誌に載った「ある人文科学的実験の被験者」アルバイトの募集。
年齢性別不問、期間は7日間。そして時給は1120百円、つまり11万2千円。
何かの間違いだと思いながら、ある者は波乱を期待し、ある者は冗談のつもりで応募し、 危険の匂いを感じ取りながらも24時間モニターに応じた12人は、 地下にある実験用施設<暗鬼館>で過ごすことになった。

物語は車が欲しくて応募した結城理久彦の視点で描かれている。
監獄や霊安室の存在。
いわゆる「地の文で嘘を言ってはいけない」的なふざけた<十戒>を記したカードキー。
ひとりにひとつずつ、ミステリ作品から引用した何らかの武器。
禁止事項、ボーナスなどについて細かく定められたルールブック。
いわく、夜間は鍵のかからない個室からの外出を禁じ、 殺人者、被害者、探偵それぞれにボーナスが与えられる。などなど。
そして<暗鬼館>は治外法権である。
3日目の朝、ひとりが霊安室で銃によって死んでいたことを皮切りに、 疑心暗鬼になった面々のサバイバルゲームとなってゆくのだが、 結城がとても淡々と解決策をめぐらすので、生々しくはない。
キーパーソンであろうと思われた須和名の「1本」も、想像を上回る展開だった。

そもそも、人間をある支配下において観察しようなんてのが悪趣味だし、 こんな経験をしてあっさり日常に戻れるというのも怖い話だけど、不快ではなかったな。
安東は当初わりと気に入っていたので、ちょっと残念だった。
密室あり、心理戦あり、トラップあり、メカあり・・・いろいろごった煮の館物って感じでしょうか。
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