2014年10月17日

 陰陽師 酔月ノ巻

陰陽師―酔月ノ巻 -
陰陽師―酔月ノ巻 -

橘盛季が通うようになったある女の家での怪異 『銅酒を飲む女』
母が自死した桜の下で琴を弾いた娘が消えた 『桜闇、女の首。』
鬼を相手の双六に首を賭けた藤原兼家の話 『首大臣』
観音教に守られていた橘g麻呂が生き返った『道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語』
思い人の願掛けに行った橘為次が、異形の女にめだまを取られる 『めなし』
都に出没する白楽天の詩を吟ずる虎の話 『新山月記』
天の川伝説によせた話 『牛怪』
式部卿宮の屋敷を夜ごと徘徊する五位装束の男 『望月の五位』
息子たちを思うあまり鬼となった母 『夜叉婆あ』

雪の頃から桜が散り、梅雨を過ぎ、秋風に吹かれ、やがてまた梅が香る頃までの9編。
強い思いは人を鬼にも獣にも変え、時には人ならぬものに人の姿を与えたりもする。
起こる事件それぞれは恐ろしげな怪異だけれど、それらもまた、移ろう季節の中で流され、めぐる物事のひとつのように思える。

人も獣も妖かしも、同じようにそこにただ在るということ。
すべてが移り変わってゆく中で、晴明と博雅が酒を酌み交わす姿だけが変わらない。
博雅の思いに、しみじみとしたものを覚えます。
特に『首大臣』の雰囲気が好き。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月03日

 大江戸恐龍伝 第一巻

大江戸恐龍伝 第一巻 -
大江戸恐龍伝 第一巻 -

マルチな才能を発揮する平賀源内と丸山応挙は、百五十年ほど前に観音寺に拾われた男が持っていたという、龍の掌を見た。
龍宮へ行ったと口にしていたその男の残したからくり匣から出てきたのは、金を含んだ石と謎の種、秦の銭、そして文字と絵の書きつけ二枚。
それらの謎をさぐる源内はやがて、書きつけを狙う一味がいるらしいことを知る。

全五巻ということなので、物語はまだまだ序章。
いやしかし平賀源内、おもしろい男だねぇ
発明家としての名前しか知らなかったので、ここまで多才だったことにまず驚いた。
自由奔放な発想で、人を丸めこむことにも長けた、いかがわしきをおもしろがる男。
そういうイメージがふくらむ。

百五十年も前の、龍宮に関わるらしい不思議な遺物。
それをつけ狙う一味。
冒頭に登場する巨大獣。
さてこの大風呂敷はどう畳まれるんでしょう。楽しみ。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月03日

呼ぶ山

呼ぶ山 夢枕獏山岳短篇集 [単行本] / 夢枕獏 (著); メディアファクトリー (刊)

『呼ぶ山』は2年前と新しいが、34年前の『山を生んだ男』をはじめ1980年代に書かれたなつかしい短編が並ぶ。
九十九乱蔵や三蔵が活躍する作品を手はじめに、獏作品をむさぼるように読んでいた頃のもの。
でも少しも色あせないのな・・・むしろ、まだ若かったから、勢いがあるね。
怖れや憧れを超える山への渇望が、地熱のように言葉の底から伝わってくる。
螺旋や人という存在へのこだわりは、この頃から変わらず持ち続けているんだなぁと感慨深く再読しました。
特に『ことろの首』や『鳥葬の山』は、今でも印象深い。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月07日

陰陽師 醍醐ノ巻

陰陽師 醍醐ノ巻 [単行本] / 夢枕 獏 (著); 文藝春秋 (刊)

広隆寺山門に現れた笛の名手と帝の前で競うことになってしまった博雅『笛吹き童子』
やんごとなき老女が紡ぐ夢『はるかなるもろこしまでも』
晴明が怪しの百足を退治する『百足小僧』
蝉丸の琵琶の音と月守りの老人『きがかり道人』
阿倍仲麻呂・陽玉環・玄宗3者の思いと妄執が憑りついた夜光杯『夜光杯の女』
天狗に信心して都の僧を見返そうとした僧都『いたがり坊主』
僧になった賀茂保憲の兄が引き起こす厄介ごと『犬聖』
僧としては足りないところのある実恵に訪れた怪異『白蛇伝』
獣との約定に悩む基次の相談事『不言中納言』

散る桜、紫陽花、焼き鮎、蝉の声、桔梗、秋の虫、夜の匂い・・・
季節を彩る庭をながめ、ひとことふたこと交わしながら屋敷の簀子の上に座して酒を飲んでいる。
そして何事かの事件に引っ張られて、出かけてゆく。
いつもの博雅と晴明の姿だ。
型どおりであるのに、何編読んでもしみじみとする。

月明かりのなか、風に季節が匂う。
折々の草花や風物が、変わらぬふたりの上にも時が流れているのを感じさせる。
そこだけがまるで異界のように、屋敷の一歩外は生々しい欲があふれている。
恨み、うらやみ、焦がれ、抑えてもあきらめてもこぼれ出すほどの想い。
己に見合った場所をみつけることができた者はしあわせだ。

重量感ある美しさの『夜光杯の女』、ふんわりとやるせない『はるかなるもろこしまでも』、 おかしみのある『きがかり道人』が特にお気に入り。
そしてお楽しみのあとがき。
そうか、60になっても「ぜんぜんどうってことない」し、「なおりません」のか。安心しました。

posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月09日

陰陽師 天鼓ノ巻


陰陽師 天鼓ノ巻

陰陽師 天鼓ノ巻

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


悪い気を瓶の中のものに取り込んで渡り歩く『瓶博士』
悲しみのあまり己を失った夫婦が、琵琶の音に心を取り戻す『器』
夢うつつに菩薩と交わした無理な約束を違え、娘に取り付いた蛇に悩まされる『紛い菩薩』
身代わり如意輪観音の障り『炎情観音』
博雅の笛と蝉丸の琵琶、突如舞い降りた霹靂神の鞨鼓が秋の天に響く『霹靂神』
蝉丸の哀しい過去『逆髪の女』
木霊に憑いた山神『ものまね博雅』
博雅が鏡の中に取り込まれてしまう『鏡童子』

晴明のまっすぐな言葉に思わずうろたえる博雅はまさに、よい漢。
あいかわらずの掛け合いに頬がゆるむ。
扱いを間違えれば害ともなる、いろいろな神様が登場するのも楽しかった。
思わず神をも引き込んで音を合わせるくだりは何とも心地よかったが、蝉丸の琵琶に宿る、静かでこわい気持ちが痛ましい。
桜の中で恨み焦がれた夫の琵琶に舞う逆髪の女・・・恐ろしく哀しく美しい絵だ。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月13日

黄石公の犬

闇狩り師 黄石公の犬 (トクマ・ノベルズ) [新書] / 夢枕 獏 (著); 徳間書店 (刊)

無骨なランクルとごっつい九十九乱蔵、好きだったんですが。
表紙絵のせいでしょうか、イメージが違う・・・乱蔵、おっかないです。
獏さん、鮎釣りしたいんだろなぁ。
そこが一番生き生きしてみえたので。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月09日

キマイラ青龍変


キマイラ青龍変

キマイラ青龍変

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
  • 発売日: 2006/02/15
  • メディア: 単行本


今回よりハードカバーからの出版となり、天野さんのため息ものの妖艶な表紙絵から、
久しぶりのキマイラを堪能させてもらった。
ただし今回は外伝。龍王院弘が宇名月典善と出会い、闘いに歓喜する自分を知っていく物語。
これはこれでおもしろい。しかし早く本筋の物語の進む先が読みたいなぁ
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月12日

東天の獅子 第一巻

東天の獅子〈第1巻〉天の巻・嘉納流柔術 [単行本] / 夢枕 獏 (著); 双葉社 (刊)

明治時代、時代遅れと思われていた柔術を柔道の講道館へ創りあげた嘉納治五郎を
中心とした物語のはじまり。
いつものことながら長い、長い。しかし読ませる。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月07日

陰陽師 夜光杯ノ巻

陰陽師 夜光杯ノ巻 [単行本] / 夢枕 獏 (著); 文藝春秋 (刊)

安倍晴明と源博雅が出会う都の不思議を解き明かす連作シリーズ。
由緒ある阮咸が、名もなき古い神が、地中深く時を待つ蝉が、博雅の葉二の音やささやかれた言葉、法話などによって 命を吹き込まれ、人の形をとって現れては不思議を為す。
晴明はいつものごとく、地獄の獄卒さえたばかるしたたかさで、世にも恐ろしい事実をさらりと言ってのける。
情に厚く単純明快な博雅が、どういうことだ?とわけを訊ねたがるのを、まぁまぁ、そのうちわかるからといなしつつ、 ひょうひょうとしている晴明。いつもながら、いいコンビだなぁ

菊屋敷に現れる女の正体を明かす「花占の女」が、ぞくぞくと来る。
虹にまつわる「蚓喰法師」がユーモラスで、消えた葉二を追って竜宮で神々や精霊と舞い踊る「龍神祭」は豪華絢爛。
ひとつ踏めば宇宙が消滅し、ふたつ踏めばまた新しい宇宙が生まれる。このスケールの大きさがいい。
京の古い神を葉二が目覚めさせてしまう「無呪」はわりと地味なんだが、現在新聞で連載中の「宿神」と重なる部分が あって、おもしろく読めた。

最終的にもう、何がどうなっても晴明と博雅がいれば、それだけでひとつの形ができてしまうおもしろさはあるんだが それがマンネリにならないところが、すごい。
あとがきにて「倒れるまで仕事 起き上がれなくなるまで遊ぶ」 これこれ。これが獏氏ですよ。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月21日

大帝の剣3 「飛騨大乱編」「天魔望郷編」

大帝の剣3 <飛騨大乱編> <天魔望郷編> [単行本] / 夢枕 獏 (著); 天野 喜孝 (イラスト); エンターブレイン (刊)

万源九郎、伊賀の忍びたち、頭上に金属球を浮かせた異形の黒鉄鬼、柳生十兵衛三巌をまいた宮本武蔵が、それぞれの理由で、舞と同行している牡丹を追っている。
さらに、山賊となっていた夏の陣の生き残り・三島以蔵と元真田忍群の海野六郎は、蘇った死者・佐々木小次郎に出会い、黒鉄鬼と武蔵を追う。
すべての向かう先・飛騨には、黄金の独鈷杵を有する玄覚寺がある。そこでは、祥雲が行っていた万匹殺生の邪法が満願となり、独鈷杵が鳴った。
一方、天空より飛来したものたちの正体も少しずつ明らかになる。
王家の血筋争いから、オリハルコンを求めて地球にやってきたランは舞の中に、それを追うラホホは才蔵、オッタは百姓・弥太八に入り込み、地上・天空双方の目的のため、探索し、闘う。

さてさて、追う者追われる者が三つ巴、五つ巴を超え、しかも体の持ち主と意識を乗っ取っている者の利害が反することもあり、こうなると誰が敵やら味方やら。
なかなかの好人物だと思っていた才蔵が、乗っ取られたことで人離れした凄みを増し、蘇ったものの進むべき道に迷っていた小次郎は、内なる者と対話を始めた。
どうやら小次郎に宿ったのは、ランの味方のように思われ、仇敵武蔵と相対して終わりというわけにはいかないようだ。
前巻まで、最も存在感の大きかった武蔵だが、その武蔵とぶつかり、道行を共にすることになる源九郎も、ここへきてようやくその存在がふくらんできた。
元豊臣方の三島以蔵という男も、開けっぴろげで人好きのする不思議な魅力を持っている。
うなり始めた独鈷杵は何を呼ぶのか、源九郎の知らない力を秘めているらしい大剣・裏切りを象徴する逆さ磔のゆだのくるす・空海の握る独鈷杵・・・ この三つがそろう時、何が起こるのか。
続きが待たれる。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢枕 獏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする