2015年04月28日

 有頂天家族 二代目の帰朝

有頂天家族 二代目の帰朝 -
有頂天家族 二代目の帰朝 -


前作を読んだのはなんと7年半前だったので、帰朝する二代目とはどこの二代目?と思いつつ手にした本書。
ほぼ抜け落ちている事件や関係性やらを思い出しながら、楽しみました。

はるか英国より戻ってきたのは、赤玉先生の息子でした。
仲違いをしている親子がどうなることかと思いきや、当人そっちのけで狸と天狗、人間が入り乱れての大騒ぎ。
あっちで画策、こっちで暗躍、気炎を上げて反撃とあいかわらずのドタバタぶりですが、
下鴨一家それぞれの変化や成長が目覚ましい。

奥手の長男は煮え切らない状態から抜け出て(そのもだもだぶりも愉快でしたが)、次男は世捨て狸を廃業。
矢三郎は余計なことに首を突っ込んではた迷惑なのは相変わらずながら、海星との関係に変化がありそう。
と、どうやらあちこちでほのぼのと事が進んでいる気配です。
何にしても、海星がいじらしいね。

ところで早雲が、どうしてそこまで下鴨一家に敵意を抱くのかが不可解。
経緯が前作に描かれていたものか・・・忘れてしまいましたが。
総一郎に対する劣等感でもあったんでしょうかねぇ

気に入らぬものはバッサリ切り捨てて我が道を行く弁天の、プライドを打ち砕く事件もあります。
二代目もまた、素直に師に向き合えない屈折したものがあったのでしょう。
普段はただの偏屈老人と化している赤玉先生の、秘めたる師弟愛にやられました。

とかく人はやっかいなもの。
狸たちの心優しき阿呆ぶりを見習うべし。
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2011年03月10日

四畳半王国見聞録

四畳半王国見聞録 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 古屋 兎丸 (イラスト); 新潮社 (刊)

阿呆神を祀り、非凡で無益な才能を発揮する京都の学生たち。
四畳半と阿呆で繋がる彼らの営みはやがて、阿呆神の君臨する王国へと開かれる。

ほぼ一気に読みあげたけれど、誰がどこに所属する何やら?関係を整理しようとしたらややこしかった。
マンドリン説法によって阿呆を量産する男。
勉学から逃避した鞍馬山で遭難する男。
妄想的数学証明によって恋人を出現できると信じる男。
桃色映像のモザイクをつまみ取る男。
精神的な凹みを周囲の空間にまで広げる男。
存在に気づかれないことに反旗を翻す男。
いずれも阿呆である。
しかしばかばかしくはた迷惑であっても、どこか憎めない。
こういう人たちは凡人になろうなどと思ってはいけない。

女性陣もただ者ではない。
理知的な面差しの乙女は、睡眠を誘発する映画しか作れず、
おしとやかな印象の裏でホラーを愛好する娘は、器用にも恋人と寝言で会話する。
意図せず研究室仲間を奴隷扱いする三浦さんと鈴木君のやりとりが、おもしろかった。

それにしても『もんどりダンス』に『ペコちゃんの憂鬱』・・・
これって何!?いったいどんな儀式なんだ?
阿呆王国の謎は深い。
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2010年06月26日

ペンギン・ハイウェイ


ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/05/29
  • メディア: 単行本


小学4年生のアオヤマ君は、研究熱心な少年だ。
彼の住む町にある日突然ペンギンが現れ、そして消えた。
どうやらその事に、アオヤマ少年が親しくしている歯医者のお姉さんが深く関わっているらしい。
彼は友人と一緒に、ペンギンの謎を追って研究と冒険に乗り出す。

少年の日の、まだ見ぬものへの恐れや憧れ、とまどいがいっぱい詰まったひと夏の冒険談にわくわくした。
アオヤマ少年は、自分を子供ではなく、未熟な大人だと考えている。
行動も発想も、自由だ。
現実と夢の中のような世界がみごとに融け合った、森や野原や街を、興味のおもむくまま闊歩するアオヤマ少年たち。 その勇ましさと彼等をとりまくお気に入り相関図が愉快。
彼の好奇心と探究心、頭の中にある大きな世界は、どこまででも広がっていくようだ。
たとえ答の先に別れが見えたとしても、知らなければ良かったとは彼は思わないだろう。
いいぞ少年、はじまりも果ても、すべては君の胸のうちにある。
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2009年08月28日

宵山万華鏡


宵山万華鏡

宵山万華鏡

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/07/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


祇園祭宵山の夜を舞台に繰り広げられる物語6編。
1編目を読んだとき、おおこれは久々に「きつねのはなし」風怖い話かと喜んだら、続く2編目はいつもの妄想爆発路線だった。
いんちき宵山を仕掛けられ、いいように翻弄されるお人好しのヘタレ男と、無駄で過剰な熱意にどんちゃん騒ぎ、荒唐無稽な舞台の裏にちらりと見える青春と、 どこまでも広がる妄想を具現化する森見節に、にやにや笑いが止まらない。
けれどそれを仕掛けた張本人は、得体の知れない別の顔を持つ。
にぎやかで心浮かれる祭も、一歩その喧騒から外れれば別世界のような深い闇。
光のあたる表が陽であればあるほど、ともなう影も濃い。
屋上のバカ騒ぎから地上に目を転じれば、偽者でない宵山のはずれでは、迷い、さらわれ、閉じた場所から抜け出せない人がうろたえ、失ったものを追う人は現実から去っていく。

にぎやかしい喜劇2編をはさんで、前後にひやりとした怖さ。
見上げれば涼やかな金魚玉も、落ちて踏めばこの上なく嫌な感触。
めくるめく妄想と、それをなぎ払うがごとき上質なファンタジー。
趣の異なる物語が、それぞれを補うように係わり合いながら妖しげなひとつの宵山を作り上げている。
赤い色をまぶたの裏に残し、森見風宵山は少し、こわい。そしてとても好み。
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2009年05月05日

恋文の技術

恋文の技術 [単行本] / 森見 登美彦 (著); ポプラ社 (刊)

手紙のみの小説・・・若干、及び腰で読み始めたのだけれど、いやはやさすが森見氏。笑わせてくれました。
一方的な手紙であるにも関わらず、何人かに宛てた手紙を並行して読むことで遠く離れた京都の人間関係、そこで起こった事件(?)などなどが浮き彫りになって、 物語の流れが見えてくる。

「おっぱい事件」といい、とうてい敵わぬ相手に宣戦布告しては撃沈したことといい、大まじめなんだがとってもふざけているのだ。
人の恋路にはあれこれ薫陶を垂れるくせに、いざ自分の恋となるとなかなか腰があがらない。
ようやく恋文にとりかかっても、書いては脱線し、書き直してはまたどこへいくつもりかわからない恋文を延々と失敗し続ける守田氏は、けなげでさえある。
最後には否応でも、守田氏の恋を応援したくなるのだ。
たとえ大文字山での告白がうまくいっても、前途多難であろうよとは思いつつ。

守田氏を介して見る森見氏、というのがおもしろかった。
そうか、パンツ番長は守田氏の友人談だったのか。とかね。

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2008年09月22日

美女と竹林

美女と竹林 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 光文社 (刊)

虚実交えたエッセイもどき、というよりほぼ、妄想に埋没しかけている森見氏の日常とでもいうべき書。
竹林が好きだから竹を刈りに行こう、とする森見氏の話なんだが、
実際に竹を刈りにいく時間が取れず、その穴埋めとして言いわけやら
竹林経営者としての未来という夢物語=妄想やらをふくらませ、
憧れの本上まなみさんとのご対面に舞い上がったりするわけです。

美女はともかく、奇特な友人・明石氏との会話がおもしろい。
友は類なのだなと思った次第。
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2007年10月13日

有頂天家族

有頂天家族 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 幻冬舎 (刊)

「狸のはなし」三部作の第一弾。

平安時代から続く狸の一族・下鴨一族は、偉大なる父亡き後、母と四兄弟力をあわせ、長年対立関係にある夷川一族と攻防を繰り返していた。
そこへ、かつては名天狗であった恩師の報われない恋、狸鍋を不可欠とする秘密結社・金曜倶楽部の存在などが関わり入り乱れて、狸と天狗と人間三つ巴の物語。

まあとにかく、おもしろい。何しろ主人公は狸。
器大きく人望(?)も厚かった父が、狸鍋にされてこの世を去り、残されたのは堅物の長男、父亡き後蛙となって井戸の底に引きこもる次男、お調子者の三男、未熟者の四男の四兄弟と、そんな息子達と宝塚歌劇をこよなく愛する母。
この三男・矢三郎が語り手となって、古来脈々と伝えられてきた「阿呆の血」を体現するのだ。
阿呆といえば、対立する夷川一族もかなりのものである。
矢三郎の同窓でもある双子の従兄弟・金閣・銀閣は得意げにあやしげな四文字熟語を使い、その妹でかつて矢三郎の許婚だった海星は、決して姿を見せずに悪口三昧。
けれどこの海星は、ちょっとかわいいところもあるのだ。

そして狸阿呆なら天狗も阿呆で、その双璧をなすのが、かつては「如意ヶ嶽薬師坊」という名天狗でありながら、今は飛ぶこともできず人間の弁天への報われない恋心に悶々としている赤玉先生。
自分でさらって天狗教育を仕込んだ美女の弁天に、いいようにあしらわれ、手の内で転がされながら浮かれたりすねたりする赤玉先生がまぁなんと言うか、かわいいんですねぇ

五山送り火の夜の納涼船合戦、夷川早雲の悪巧みと派手なドタバタの合間に、形は獣や異形のものなれど、あまりに人間らしい彼らの師弟愛、家族愛がある。
良いねぇ、実に。
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2007年09月11日

四畳半神話大系

四畳半神話大系 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 太田出版 (刊)

京都下鴨にある廃墟同然の下宿・幽水荘を基点に、彷徨し、咆哮し、妄想をほしいままにする大学生の物語。

主人公なる大学生と、妖怪めいた友人・小津、同じ下宿に住む樋口師匠、凛とした明石さん。
彼らが、映画サークル「みそぎ」、神様の弟子、ソフトボールサークル「ほんわか」、
秘密機関<福猫飯店>の関わる組織4パターンそれぞれに、役割や立ち位置は違えて登場する。
そこへ幻の超高級亀の子束子や、熊のぬいぐるみモチグマン、猫ラーメン、カステラ、占い師の老婆が好機の印と判じたコロッセオなどのアイテムが絡んで、不毛で無為な大学生活を彩るわけ。

ひとつ間違えれば堅苦しい物言いの森見節なんだが、妙に笑える。
ファンタジーなんて生易しいもんではなく、これはまさに妄想。極まれば笑うしかない。
でも最初にこれを読んだら、森見さんの次作を読む気になったかどうかは?あやしいなぁ。
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2007年05月24日

【新釈】走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 祥伝社 (刊)

「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」を下敷きに、全く別の物語に仕立てた連作。
古ぼけた岩波文庫のような装幀も美しい。

いずれも、京都吉田界隈を舞台に、延々と終わりを見ない大作を書き続ける非凡にして孤高の男・斉藤秀太郎と、彼と何らかの形で関わる人たちの物語だが、元となる物語のエッセンスが、おもしろさをふくらませ、やるせなさを倍増させる。
詭弁論部だのパンツ番町戦だのと、「夜は短し〜」とゆるくリンクする部分も多くあり、やはり最もスピード感あふれ、ばかげた「走れメロス」が一番おもしろかった。
天才は非凡であるがゆえに孤独だが、無意味無益でも、それを共有できる者があれば爽快なものとなり、なければ天狗にでもなるしかないということか。

作者の思惑通り原典にも興味がわくが、しかし日本語って難しい。
今回はずいぶんと辞書も引いた。
「杯盤狼藉」「久闊を叙する」「融通無碍」・・・などなど。
使わず知らずにいる美しい日本語が、まだまだあることを思い知る。
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2007年02月07日

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女 [単行本] / 森見 登美彦 (著); 角川書店 (刊)

むんと胸をはり、我と我が道を闊歩してゆく黒髪の乙女と、彼女に思いを寄せながら、偶然を装って彼女に出会うほどのことしかできない小心者の先輩の物語。
時を置かずに3冊読んだせいか、独特の言い回しにも慣れ、なんともメルヘンチックなおもしろおかしい物語を楽しめた。
食えない仙人風の李白老人や、職業が天狗という樋口氏、自称本の神様だという少年など、怪しげな愛すべき人たちもたくさん出てくる。

学園祭のくだりが一番おもしろかったな。
構内に出現してはまた消えるゲリラ寸劇や韋駄天コタツ、それを羨望しつつ追う事務局長、そんなドタバタをどこ吹く風で緋鯉を背負って歩く天然純粋な乙女が、やがて騒動に巻き込まれ奇遇に出会い続ける先輩の心中にようやく気づく大団円。
メルヘンですよ。滑稽だけど陳腐ではないのね。
楚々として豪快な乙女の魅力ゆえ、でしょうか。
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