『おそろし』続編。おちかの百物語は続いている。
里でもお店でもやっかい者扱いの丁稚・平太に関わる障りに向き合い、
隣家の針問屋の娘と、夭折した双子の娘との物語を聞く。
手習所の先生が、自分の師匠夫婦とひいては習子の父の死に関わってくる幽霊屋敷の不思議を語りに来る。
そして先生の知り合いだという偽坊主が、流浪の途中で逗留していた山村での怪異を語る。
いずれも、危うさと強さをあわせ持つ人の心の不思議を思わせる。
誰しも抱える負の心が、何かをきっかけに人の容量を超えると怪異になって現れてくる。
「くろすけ」の物語は特別だった。
想いが宿るのは人間だけのことではないし、出会って別れてを繰り返すのもまた同じこと。
生きていくのはそういうことだと胸に落ちる。
おちか自身、まだ心の内には晴らすことのできない闇を認めつつ、つながる縁で力強い味方を得ていく。
魔を払うお勝や見た目とは裏腹に頼れる青野先生、手習所のいたずら坊主たち、容貌怪異の行然坊、近場の岡っ引きたち。
怪異譚だし暗さも怖さもあるのだけど、どこか風通しが良くて先が明るい。
何と言っても悪ガキたちのくったくない物言いや、行然坊と青野先生のかみ合わないやりとり、何事につけ大仰なおばちゃん女中おしまのたくましさなど、生き生きとしたキャラクターが好き勝手に動き回っているのが楽しい。
しんみりさせたり、吹き出させたり、その塩梅がさすが。
ここまででようやく8話と百物語には程遠いが、おちかの百物語は続いていく。
彼女が心の枷をはずせるまで、じっくりと付き合いたい。