2025年04月03日

 猫の刻参り

猫の刻参り:三島屋変調百物語拾之続 - 宮部 みゆき
猫の刻参り:三島屋変調百物語拾之続 - 宮部 みゆき

本書での百物語りは、化け猫、河童、迷い家にまつわる3話。
それぞれに多くの人々の苦難や悲しみ、あるいは気付きや戒めの込められた話だったけれど、モチーフがなじみ深いだけに、得体の知れない怖さというのは少なかった気がします。
三話目は、迷い家での様々なしきたりや母子と山桃との交流が楽しかった。
けれど背景となる三島屋は、様々な掛け違いから穏やかならざる展開に。
さてこの結末は吉なのか、この先はと、緊張をはらんだままで気になります。
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2023年10月05日

 青瓜不動

青瓜不動 三島屋変調百物語九之続 - 宮部 みゆき
青瓜不動 三島屋変調百物語九之続 - 宮部 みゆき

おちかが無事におっかさんになって、まずはめでたい巻。
見守るような思いで待っていた読者は、自分だけじゃないはず。
それに引き換え富次郎はまだ迷いの中。
生き方を選べるからこその迷いで、幸せなことではありますが。

そんな三島屋での悲喜こもごももさることながら、暮らし向きもお国言も違う黒白の間での話は今回も壮大で、不思議な導きに満ちている。
身分や性別といった「どうにもならないもの」のために苦しみながら、それを乗り越えていく人々の話は、時に残酷でもの悲しくもあるけれど、たくましさに打たれ、温かさに心震えるものだった。
人の思いというものの重みを、今更ながらに感じました。
そして、読んだそばから次が待ち遠しい〜
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2022年08月28日

 よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続

よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続 - 宮部 みゆき
よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続 - 宮部 みゆき

姉にかけられた呪を飲んで産土神の里へ飛ばされた男の半生、渡し船の船頭と水神様との顛末、池の向こうから現れたひとでなしと村人との闘いという3編。
読みごたえは表題作が一番はと思うが、ひとでなしと来たらそういうことかと造形が想像できてしまったのは残念だった。
もちろんどの話も、振りかかった悪意や困難を乗り越えてきた人たちの強さややさしさに感じ入り、人とはこんなにもとは思うところは多いのだけれど。
富次郎の印象が薄いのかなぁ・・・のほほんとしてますもんね。
伊一郎が三島屋に戻ったことで、何か変化があるかもしれません。

それにしても、おちかの出産を心待ちにし、案じてやきもきするみんなの姿が目に浮かぶようです。
おちかの一層の幸せを願って、次作を楽しみにします。
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2021年06月27日

 魂手形 三島屋変調百物語七之続

魂手形 三島屋変調百物語七之続 - 宮部 みゆき
魂手形 三島屋変調百物語七之続 - 宮部 みゆき

小旦那の富次郎に代替わりして続く、変わり百物語。
今回は火伏せの秘事、娘が語る母との身の上話、魂の里からの来客の3話。
恐ろしいというよりも、もの悲しかったり不思議な話が多く、引き込まれました。

語り手はほんの少しだけ重荷を下ろし、聞き手もまた大事な気づきを得たりと、富次郎にとっても大切な機会になっているのでしょう。
そして何よりおちかの吉事がうれしい。
不穏な気配に煩わされなければ良いのだけど・・・
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2018年09月27日

 この世の春

この世の春 (上)(下)巻セット
この世の春 (上)(下)巻セット

乱心により座敷牢に押し込められることになった当主と、その奇妙な症状に対処するべく寄り添う気丈な女性を軸に描かれる、とある藩の物語。

上下巻の長さも気にならない読みやすさで、登場人物はみな感情移入しやすい個性派ぞろい。
主人公の多紀は心優しい女丈夫で、盛り立てる女中たちもそれぞれの強さを秘める。
半十郎の従兄弟というだけではない気持ちが見え隠れするのも、微笑ましい。
そして謎は順当に解かれ、残酷な膿をあばき出すことで病は治癒へ。
気持ちの良い読後感の物語でした。

ただ、何だろう。。。当主の症状には現代的な解釈がつく反面、その敵側の仕掛けはよくわからない呪い系、多紀の出自に関わることも尻すぼみな感と、何となくすっきりしない面も。
本文ではないけれど、不幸で孤独なヒーロー?というのも、そぐわないと思う。
さらに言うなら表紙絵が与える印象も、もうちょっと考えて欲しい。

期待値が大きいのでつい文句も出ますが、読んでおもしろいのは間違いない。
終盤の在るべき形に向かって盛り上がり、成るべくして成った幸せのかたち。
安定の読後感です。

ついでに、物語とは全く関係ない話。
本文中に「雨戸を閉てる」という言い回しが出て来ます。
雨戸をたてる?と首を傾げられたことがあるので、そういう言い方がちゃんとあることにホッとしたという・・・とても個人的な感想でした。
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2018年09月02日

 あやかし草紙 三島屋変調百物語 伍之続

あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続
あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続

塩断ちして願掛けした娘が家に招き入れてしまったモノが招く不幸『開けずの間』
声を失った姫様と、その源となる悲劇 『だんまり姫』
面の形をした魑魅を封じる家 『面の家』
読む者の寿命を教える冊子にまつわる話 『あやかし草子』
富次郎、兄の伊一郎が子どもの頃のちょっと不思議な思い出 『金目の猫』

ちかと共に百物語を聞くようになった富次郎が描いた話は、絵として封じられ、「あやかし草子」と名付けた箱にしまわれ、始末をつけられる。
それが引き寄せた縁によって、ちかの新たな門出となりました。めでたい。

語られる話には、人の強欲とか弱さというものにやりきれない思いをすることも多い中、『だんまり姫』の一国様があまりにも健気でいじらしく、素朴な語り手の人柄と相まって、心に沁みました。
次は代替わりで、富次郎による聞き捨てが始まるのでしょう。
それもまた楽しみ。
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2017年09月12日

 三鬼 三島屋変調百物語 四之続

三鬼 三島屋変調百物語四之続 -
三鬼 三島屋変調百物語四之続 -

三島屋の黒白の間で、招かれた客が胸を塞ぐ思いをおちかに語る、変わり百物語4弾目。

先立ってしまった家族への思いが高じて起きた事件を小作人の娘が語る『迷いの旅籠』
夏場は必ず休業する仕出し屋の謎と顛末『食客ひだる神』
山番士として異様な体験をした元江戸家老の懺悔『三鬼』
娘を閉じ込め祀り上げて守ってきたある家の末路『おくらさま』

可笑しみや心温まる不思議な話もあれば、悲しみが高じて道を違えたり、理不尽や怒りが怖いモノを生み出してしまう話もあり。
語り口が静かなだけにひそひそと、恐ろしさや切なさ、やりきれなさが伝わって来る。
ただどれほど忌まわしい話であっても、客は語ることで胸のつかえを下ろし、あるいは区切りをつけて去っていく。

少女のままの心だけ飛ばして語りに来たお梅さんの言葉は、おちかにも響いただろう。
折しも青野先生が去り、新たな出会いもあるよう。
人の縁は移ろうもの。
けれど本当に失いたくない縁ならば掴み取りに行けばいいし、できないと思うならそれまでのこと。
彼女はひとりだけれど、ひとりきりではない。
修行はまだ続くようですが、おちかの覚悟は明るく、先が楽しみです。
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2016年09月17日

 悲嘆の門

悲嘆の門







サイバーパトロールのバイトを始めた大学生の孝太郎は、巷を騒がす殺人事件の噂を追ううち、動くガーゴイル像の謎を調べていた元刑事の都築を知り合う。
やがてふたりは思いもよらない世界に巻き込まれていく・・・

最初のとっかかりは魅力的な謎がずらりで、かなり良い手応えだったのだけど、早いい段階で、うわぁやっぱりそっち方向に行っちゃうのか〜と気落ちしました。
良く言えば、ネットを介して悪意が増幅する現実社会と、異世界とが入り混じった壮大な物語ではありましたが。
事件にファンタジーが絡むと、何でもありになっちゃうんだよね。。。

子を思う情から非情な手段に訴えたガラと、正義感という名の我欲に突き動かされていく孝太郎と。
老練な元刑事をはじめ、心に闇を抱える人びとの造形はさすがで、善悪がいかに相対的なものであるかを思わせられます。
孝太郎の危うさに好感を持てなかったので、今ひとつな感を残してしまいましたが。

異世界の設定に心が動かなかったのは、これが続編ということもあるのかも。
でもやっぱり好みの問題でしょうね。
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2013年10月03日

泣き童子

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 [単行本] / 宮部 みゆき (著); 文藝春秋 (刊)

おちかが客の不思議な話を聞く、変わり百物語の3弾目。

今回も、心を冷やす話から情に彩られた話、奇妙な話と、様々な人たちがおちかのもとを訪れ、彼女は見知らぬ景色とそこで生きる人たちの暮らし、さまざまな人の行き様を胸の内に収めてゆく。
相手の心を試す者に不和をもたらす池、山津波の生き残りが見た夢、めぐる業に囚われた差配人の懺悔、北国の化物、節気ごとにある仕事を請け負う男の話・・・そして怪談語りの会にも呼ばれることとなる。

一番ひやりとしたのは表題の『泣き童子』
これはまさに怪談。因果がめぐる古典的ともいえる怪談話はやはり、恐ろしくも悲しく切ない。
怪物まぐるの話は、現在新聞紙上で連載中の物語を思わせるところがあって、そちらの正体も気になっているところだ。

胸の内にこごった物を語ることで語り手は少し肩の荷を下ろしてゆく。
それはおちかにとっても、時に自分の身に起きた悲しい出来事を思い出させもするが、自責だけではない思いに向けるよすがとなるのかもしれない。
おちかの三島屋での暮らしも一年が過ぎ、年下の奉公人おえいが加わった。
周囲の人たちに恵まれて、修行と自認する変わり百物語は、まだまだ続きそうで楽しみ。
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2010年09月11日

あんじゅう


あんじゅう―三島屋変調百物語事続

あんじゅう―三島屋変調百物語事続

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 単行本



『おそろし』続編。おちかの百物語は続いている。
里でもお店でもやっかい者扱いの丁稚・平太に関わる障りに向き合い、
隣家の針問屋の娘と、夭折した双子の娘との物語を聞く。
手習所の先生が、自分の師匠夫婦とひいては習子の父の死に関わってくる幽霊屋敷の不思議を語りに来る。
そして先生の知り合いだという偽坊主が、流浪の途中で逗留していた山村での怪異を語る。

いずれも、危うさと強さをあわせ持つ人の心の不思議を思わせる。
誰しも抱える負の心が、何かをきっかけに人の容量を超えると怪異になって現れてくる。
「くろすけ」の物語は特別だった。
想いが宿るのは人間だけのことではないし、出会って別れてを繰り返すのもまた同じこと。
生きていくのはそういうことだと胸に落ちる。

おちか自身、まだ心の内には晴らすことのできない闇を認めつつ、つながる縁で力強い味方を得ていく。
魔を払うお勝や見た目とは裏腹に頼れる青野先生、手習所のいたずら坊主たち、容貌怪異の行然坊、近場の岡っ引きたち。
怪異譚だし暗さも怖さもあるのだけど、どこか風通しが良くて先が明るい。
何と言っても悪ガキたちのくったくない物言いや、行然坊と青野先生のかみ合わないやりとり、何事につけ大仰なおばちゃん女中おしまのたくましさなど、生き生きとしたキャラクターが好き勝手に動き回っているのが楽しい。
しんみりさせたり、吹き出させたり、その塩梅がさすが。

ここまででようやく8話と百物語には程遠いが、おちかの百物語は続いていく。
彼女が心の枷をはずせるまで、じっくりと付き合いたい。
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