2024年01月05日

 きこえる

きこえる - 道尾秀介
きこえる - 道尾秀介

物語とYouTubeによる音声のコラボレーション。
文字からの印象が音声でひっくり返されたり、謎解きの重要な要素になったり、何が聞こえてくるんだろうとドキドキしながら再生しました。
これはこれで楽しい試み。
『にんげん玉』が一番効果的だった気がします。
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2023年08月13日

 フォトミステリー

フォトミステリー - PHOTO・MYSTERY - - 道尾 秀介
フォトミステリー - PHOTO・MYSTERY - - 道尾 秀介

写真と、タイトルと、そこに寄せたひと言による謎解き掌編。
くすりと笑えるものからゾッととするもの、意味がわからないけど不気味なもの、意味がわかるとすごくこわいもの・・・おおむねダークです。
しかも添えられているのは明るくかわいい子供や動物の写真だったりで、そのギャップがまた不気味。
うまいこと考えたなぁ、よくできてるなぁと思うし、こういう怖さはとても好物。
でも一番好きだったのは『世界平和』の2編。ほんと、平和だわー
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2022年11月27日

 いけないII

いけない II (文春e-book) - 道尾 秀介
いけない II (文春e-book) - 道尾 秀介


前作に続き、各章の間に配された写真が謎解きのカギとなる連作もの。
各話の謎が、写真と後続の章によって解かれたり別の見え方ができるようになったりと、読み進めるうちに、あの時のアレはそういうことだったのかと答えが見つかっていく。
絡まりあう事件を俯瞰で見ている感じなので、謎はきれいに解かれ、きれいに結末します。

ただ結果、誰一人幸せにならず死に結びつくしかなかったというのは、救いがなく怖いし、やるせないなぁ。
それも含めこの物語は、謎の回収そのものよりも、事件の起きた背景、動機に繋がる生い立ちや過去の傷から漂う不穏な空気感が、大変好みです。
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2021年07月03日

 雷神

雷神 - 道尾秀介
雷神 - 道尾秀介

一本の脅迫電話によって、30年前に生まれ故郷の祭りで起きた事件の真相が暴かれ、やがて再び殺人事件が。

空が低く垂れ込める冬の日本海沿岸、そこへ響き渡る雷鳴という情景描写に引き込まれ、雷にまつわるあれこれは興味をそそられました。
そして誰が何を知っているのか、謎解きの展開には心地よく振り回されました。
脇役かと思っていたら探偵役だった彩根という人物、彼はちょっと唐突な印象でしたが。
他作品にも登場しているらしいので、要再読かもです。

すべてなぎ倒し無に帰してしまう、雷という大いなるもの。
その前では、耐えがたい記憶も人を縛る愛憎も、些細な営みでしかない。
だからこそヒトは畏れ敬い、このささやかな幸せだけは守りたいと願い祈るのでしょう。
タイトルに神を掲げたのは、そういうことに帰結するのかなと。

古い体制を引きずる寒村も、捨てたはずの人間関係からも、逃げ切れなかった悲劇。
30年前も15年前も、発端は無邪気な子供心、というのがやりきれない。
残酷だなぁと思うし引きずるけど、そこが道尾さんの味ではあるよね。
一気読みで堪能させてもらいました。
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2019年11月01日

 いけない

いけない
いけない

「弓投げの崖を〜」は蝦蟇倉市のアンソロジーで既読でしたが、こんな連作に育つとは。
少しずつ繋がりのある各章の最後に真相へのヒントが示されて、答合わせができる謎解きものでした。

やっぱり!と思ったり、そういうことか〜と気づかされたり、すっきりしないところはネタバレサイトでこっそり確認したり。
クイズを解くような感覚で読みましたが、よく考えてみればかなりひどい犯罪や工作が行なわれているわけで、平和どころかなかなか恐ろしい街ですよ、ここは。
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2017年08月20日

 満月の泥枕

満月の泥枕 -
満月の泥枕 -

姪っ子の汐子と何とか食いつないで日々を過ごしている二美男と同じ貧乏アパートの面々が、思いがけない事件に巻き込まれていく物語。

娘を失くした事情は胸が痛むし、いろいろ駄目なところはあっても汐子にとってはかけがえのないおいちゃんなのだろう様子には、しみじみする。
アパートの住人もみんなワケありで、よくわからない事件が起きたり、いい大人がドタバタと仕掛けを画策したり、変な宗教がらみで冒険まがいのことをしてみたり。
上手くいくことばかりじゃないし、間違ったり取り返しがつかないことだってある。
でも何とか生きているから大丈夫、というたくましさが心地良い。

何より光っていたのは子供たちふたり、汐子と猛流でした。
達観したふうな汐子も、大人をだまくらかす知恵者の猛流も、「ようでけた子」ながら年相応の子どもなんだなぁと思えるところもあって。
汐子の関西弁も味があって良かった。

切なかったり、あきれたり、笑かされたり。
悪くない。むしろ良い。人情味もたっぷりだし奈々子さんは格好良いし。
ただちょっと口当たりがあっさりめでしたかね。泥臭くガツンとは来なかった。
今回は、そんな感じ。
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2016年09月15日

 スタフ staph

スタフ staph -
スタフ staph -

夫婦でやるばずだった移動デリの借金をひとりで抱えることになった夏野は、都内の駐車場を借りてランチを販売していた。
ところがある日、怪しい男たちにワゴン車ごと誘拐されたことから、アイドルタレント・カグヤの姉をスキャンダルから守るミッションに手を貸すことになってしまった。

タイトルの『staph』
気になってまず調べてみたものの・・・読んでみなきゃわからない意味でした。

夫婦でやるばずだった移動デリの借金をひとりで抱えることになった夏野。
都内の駐車場を借りてランチを販売していたところ、ある日怪しい男たちにワゴン車ごと誘拐され、成り行きでアイドルタレント・カグヤの姉をスキャンダルから守るミッションに手を貸すことになってしまった。

思い切りはいいが何かとやらかしがちな夏野、同居するクールな甥っ子の中学生・智弥、どうやら夏野が気になっているらしい智也の塾の数学講師・菅沼、この3人のやり取りだけでもおもしろい。
終始菅沼のすっとぼけぶりは見事だけれど、不器用な裏に誠実さと思慮深さを感じさせる好人物でもあります。

やがて好々爺の裏顔、金銭がらみの犯罪、脅迫・・・と、次々と起こるできごとがさらに一転、二転していくうち、声にならない願いが見えてきます。
頭の回転がはやくてクールな智弥像は、きつく閉じた蓋から寂しさや怒りがあふれかけている中2男子へ。
人を利用して駒のように扱うのは、本来自分をぶつけるべき相手の代わりに、仕返しをしているようなもの。
でもそうすることでしか自分を保てないと思いこんでいたら。
より所にできる相手は一人しかいない、でも相手はそれほど自分に関心が無い。
そんな思いを抱く同士のカグヤと智弥に切なくなりました。

掛け違いかもしれないのにね。
相手を大事に思えば思うほど、一番言いたいことが言えない。
その気持ちは痛いほどわかるけれど。
たとえそれでみんなが傷ついても、どうせ人生は取り返しがつかないことの連続だ。
それで何かが少しでも変われるなら、ぶつかってみるのもアリではないかと。
この先・・・菅沼先生も不器用に寄り添ってくれたらいいな、と思ってしまいました。
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2012年08月07日

光 [単行本(ソフトカバー)] / 道尾秀介 (著); 光文社 (刊)

おとなしめの利一、くったくのない慎司と、利一がほのかな思慕を寄せる2歳年上の姉・悦子、裕福な家庭を鼻にかけがちな宏樹、祖母とつつましい二人暮らしの清孝。
小学4年生の男の子たちの、友情と冒険と言葉にしつくせない思いが交錯する物語。

第一章「夏の光」は、『Anniversary50』の中でも鮮烈な印象の一篇だった。
あの獰猛で愛情深いキュウリー夫人とその孫たちに、続く物語があったのかとうれしかった。
4年生の男子って・・・ほんと、ばかだなぁと思う。
単純で考えなしで、いいこともわるいことも思いついたら即、行動だ。
大人にはすぐ変なあだ名を付けるし、おもしろそうなこと、わくわくすることなら何人いたっていさめる者などなく、危なっかしいことこの上ない。

でも本当は彼らだって、見た目ほど単純なわけじゃない。
特に、友達より少し早く大人にならざるを得なかった清孝のような少年は、他の子たちより多くの屈折した思いと強さを抱えていただろう。
嫌な奴になることも多い宏樹にしても、それはそれで精一杯の自己表現だったんだろう。
仲良くしていても、一緒にいて楽しくても、時には不満や嫉妬、自己嫌悪や憐憫を感じてしまう。
そういうことを繰り返し、自分の気持ちや相手との距離に名前を付け、推しはかり、大人になっていく。
いくつもの表情を持つ少年たちの、いろいろあっても友達という繋がりが生き生きと見える。

ロマンチックな、あるいは極限での奇跡もある。
大人になった悦子の過去へ向ける目線は、慈しみに満ちている。
みんなより先に大人になったはずの悦子にとっては、それは子供時代から続く思いだったのかもしれない。
男の子のバカさかげんは、とても愛おしいものだから。
光って、何だろう・・・優しさとか強い思いとか、あるいは夢とか・・・
そういうものをお互いに受け渡ししながら大人になれたら。
口にした夢とは違う場所にいても、大人も悪くないなと思える気がする。
がむしゃらな無邪気さを手放したことに少しの寂しさはあっても、忘れがたい想い出は今も自分を強くする。
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2010年10月11日

月と蟹


月と蟹

月と蟹

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09
  • メディア: 単行本


転校生同士の慎一と春也は、裏山のくぼみに秘密の潮だまりを作り、ヤドカリを飼い始めた。
ヤドカリを神様に見立てた願掛けが叶ってしまったことから、やがてそれぞれが抱える鬱屈が彼らを侵食していく。

父の会社の倒産により脚の悪い祖父・昭三と同居するため越してきたが父は病死、母と3人でつつましく暮らす慎一。
慎一と同じく転校生だが、酒癖の悪い父に暴力を受けているらしい春也。
クラスで孤立する彼らに歩み寄る鳴海は、昭三の漁船事故に巻き込まれて母を失っている。
さらに、慎一の母と鳴海の父がひそかに付き合っていることに、子供たちは気づいている。

周りの子どもが当たり前のように受け取っているものを受け取れず、 あきらめ、気づかないふり、何でもないふりで自分を保つ、不自由な子どもたち。
大人への期待をなくしたふりをしても、大人として振舞うには幼すぎる彼らは、 逃げ出せない。出口がない。どこへも行けない。このじくじくとした閉塞感。
行き場のない思いが残酷な願いへ変わっていくのが痛々しい。
子どもは大人に守られ心健やかであってほしいというわがままな願いがあるからだ。
でもほんとうは、そんなことだけではない。
子どもだって後ろめたさを抱え、見て見ぬふりをし、取り出して良いものだけ相手に渡す。
けれど幼くて、大きな理不尽に立ち向かおうとすれば返す刀で自分自身も傷ついてしまう。

祖父の存在が大きい。
慎一の心の内に育つ影を気に懸けつつ、心残りだったろう。
でも、いずれは大人にならなければならない厳しさは伝わったのだと思う。

春也の手紙は、暴力や非力な自分への怒りや苛立ちがはけ口を求めた結果だ。
慎一にしかその矛先を向けることができなかったのだろうし、そのことに自分自身も傷ついていたに違いない。
春也の心の内をなぞると、やりきれない。
そんな彼もまた、たくましく生きる方向を見つけたようだ。

子どもはいつか大人になる。
精一杯もがいて大人になろうとした、暗く残酷で傷ましい時期のことも、きっと糧になる。
彼らの選び取る先が、明るいものでありますようにと願った。
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2010年06月27日

月の恋人


月の恋人―Moon Lovers

月の恋人―Moon Lovers

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本


道尾さんがどんな恋愛小説を書くのだろうというそれだけで読んだ一冊。
もともと恋愛小説は興味が持てないうえ、ドラマ原作という枠があったから、なのだろうと思う。
普通〜の恋愛小説。道尾作品の味がしなかった。
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