2025年12月03日

 くもをさがす

くもをさがす - 西加奈子
くもをさがす - 西加奈子

あのコロナ禍の最中、外国で命に係わる闘病生活がどれほど大変だったかなんて想像もつかないけれど、西加奈子はボロボロになってもなお、凛としてたくましい。
もちろん、ある程度客観視できるようになってから、人に伝える目的をもって書かれている作品なのだが、人が生きて死んでいくという当たり前のことに真正面から向き合わざるを得ない気持ちになりました。

カナダと日本との国柄の違いは様々あれど、彼女に関わった仕事人たちの自信とユーモアにあふれた姿がまぶしかった。
彼女の人柄ゆえ、ではあるのでしょう。
どう変わっても自分の体を美しいと思う彼女は、命の喜びにあふれていて、私を心から励ましてくれる。
苦しみも恐れも、それと同時に大いなる喜びも、生きていてこそ。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年12月26日

 わたしに会いたい

わたしに会いたい (集英社文芸単行本) - 西加奈子
わたしに会いたい (集英社文芸単行本) - 西加奈子

西加奈子は私と違う文化を持っている。
私にとっては禁忌と思えるほど生々しく感じたままを語り、とてつもなくかっこいい。
私が恥ずべきと思い込まされてきたものを、彼女は当たり前に口にする。
だって自分のことだから。自分の体なのだから。

あらすじにもある生きづらさ、という言葉は好きじゃない。
どれもこれも一緒くたにして、すごく物分かり良さげに響くから。
自分自身への肯定感も、越えられると思う壁の高さも、傷つきやすさも、人それぞれなのに。
持って生まれた性への違和感にさえ、何かの名前を付けなければならない不自由さ。
そんなことは思いもしなかった。
理解あるつもりの無知を恥じた。

最終話の「チェンジ」、いいね。
そう簡単に変われない部分もあるけれど、振り切って爽快。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月10日

 サムのこと 猿に会う

サムのこと 猿に会う (小学館文庫) - 加奈子, 西
サムのこと 猿に会う (小学館文庫) - 加奈子, 西

サムと猿ってどんな話?と思ったら所収されている3編のうちの2編のタイトルだった。
まぎらわしい。どちらかひとつにするとか、何なら3つ全部並べればいいのにと一人突っ込む。
さらに覚えてもいなかった『サムのこと』は『あおい』に併録されていたということなので、既読らしい。
そういえば初期2冊の西加奈子作品は、実はそこまで入り込めなかったんだよなぁということは思い出した。

あらためて初期作品だという3編を読むと、どかんとはじける予感を秘めた印象。
もだもだしてて優しくて、だめだったり情けなかったり青くさかったりしても、生きてるだけでまるごと良し、というような。
何にも代えがたい何でもない日々をすくい上げる目線が、あたたかい。
太宰を「発見」したときの興奮は、覚えがあるなぁと微笑ましかった。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

 サラバ!

サラバ! 上 -
サラバ! 上 -
サラバ! 下 -
サラバ! 下 -

読み終えて思わず「やりよるなぁ、西加奈子!」と唸ってしまった。

イランで生まれ、日本、エジプトと父の仕事の都合で生活の拠点を変えながら育った歩という少年の目に映る、家族や友人と世界との繋がりを描いた、30年にわたる壮大な物語だった。

注目を集めたいばかりに奇異な行動に走り、孤独のうちに引きこもる姉。
それを反面教師として、常に目立たず主観を持たず傍観者であろうとする歩。
子どもに強く踏み込むことなく、我が道を歩む母。
そんな家族を大きな愛情で包む父。
親族や近所のおばちゃん、ストリートチルドレン、女中さん。
それぞれの場所で出会い関わるすべてが、生々しくいきている。

何より、タイトルにもつながる、エジプシャンの少年ヤコブとの出会いと別れが鮮烈で美しい。
そしてそれは年を重ね、子供時代には有効だった逃避に追いつめられていく歩にとって、自分自身を取り戻す道しるべともなる。
胸が熱くなるくだりだ。

出会い、別れ、変わって隔たって、時には憎んだり、憎んだことさえ忘れたり。
家族だって時がたてばかたちを変えていくけれど。
信じるとおもうより前に、ずっとそこにあるもの。
そういうものがあれば、大丈夫。ちゃんと生きていける。と思わせられる。

事あるごとに流される「つながり」という言葉。
すばらしい言葉なのに、言葉になったとたんどこか胡散臭いと思っていた。
西加奈子の物語には、そんなものすべてをどーんと押し流してしまう、力強さがある。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月13日

 ふくわらい

ふくわらい [単行本] / 西 加奈子 (著); 朝日新聞出版 (刊)

鳴木戸 定、の物語。またとんでもない名前を付けられたものだ。
彼女の言葉も思考も行動も、その名に恥じぬ人物像。
さらに存在感ある守口廃尊をはじめ、いくつもの人生がむき身でぶつかってくるようだった。
そんな暴力的なまでの生々しさを受け止めるのに気力が要ったけれど、読後感は晴れやか。
どの人生もいとおしくなる。
そして今さらだが、西さんは、本当にプロレスが好きなんだなぁ。と思う。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月03日

円卓

円卓 [単行本] / 西 加奈子 (著); 文藝春秋 (刊)

祖父母、両親、三つ子の姉の8人家族で暮らす小学3年生の琴子。
意味の解らない言葉、気になった言葉をジャポニカの学習帳に書きとめ、琴子は考える。
人と違うことをかっこいいと思い、ただ幸せでやかましい家族に囲まれた平凡な自分もそうなりたいと願っている。
自分の気持ちがからまわりする時、吃音の幼馴染・ぽっさんと話をする。
ぽっさんの言葉は優しい。並んでふたりで考える。なんでやろう?
「分かった」ことをひとつずつ獲得していく、琴子たちの成長の物語。

子供の成長はおもしろい。
あるときを境に、ぐんと顔つきが大人びる。
たぶんそれが、気づきの時なんだろう。
大人にとってはまぶしい限り、担任の先生のようにうろたえてしまうのもわかる。
そういう場面に立ち会えた、喜ばしい読後感が残る。

登場するみんなが個性的で好感が持てるけれど、特にぽっさんがいいね。
ぽっさんの許容度、共感度は、思わず胸が痛くなるほどだ。
そしてそれは、琴子も同じ。
好きなもの、何かええなあと思うことを詰め込んだ手紙は、同級生の心にも届いた。
そこには、邪魔なほど大きい深紅の「円卓」も、そこに集まる「みつご」たち家族もある。
こんなにもええことあるやん、あんたかてあるやろ?って。

琴子、小学3年生。大物になる、なんかしらの。
歌うような大阪弁が生々しくリズミカルで良かった。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月21日

炎上する君


炎上する君

炎上する君

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/04/29
  • メディア: 単行本


引きこもり女性の心を揺らす、女将さんの生々しい営み「太陽の上」
拾った携帯電話での不思議なやりとり「空を待つ」
小説家を目指す書店員「甘い果実」
燃える足をもてあましている男に恋をしたふたり「炎上する君」
ただ綺麗でい続けるだけの人生を振り返る老女「トロフィーワイフ」
この上なく綺麗なお尻に翻弄された「私のお尻」
とても疲れた人だけが行ける街から戻った人「舟の街」
風船病患者の選択「ある風船の落下」

自由奔放な短編集。二人称が新鮮だった。
疲れたり傷ついたりしたときは、立ち止まってもいいし、逃げてもいい。
でも傷つきたくない、関わりたくないと思うときこそ、 本当は誰かに有無を言わさずこの手を引っ張り上げてほしいと願っているのかもしれない。
時や運が味方してくれることもあるけれど、選ぶのは結局自分だ。

「ある風船の落下」が一番印象的。
痛みのないところには喜びもない。彼女の選択が心強いハッピーエンドだ。
「炎上する君」のふたりも好きだなぁ。
男も女も蹴り飛ばし我が道をゆくふたりが、かっこよかった。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月04日

ミッキーたくまし


ミッキーたくまし

ミッキーたくまし

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本


犬猫との妄想会話、多発する漫画的脱力事件、思わず吹きだす鋭い突っ込み。
少女漫画的恋愛指南には、ワンパターンな少女漫画的恋愛も、見方を変えればこうまでおもしろがれるのかとニヤニヤ顔が止まらず、 一転、お母さんからの分厚い手紙にはうるうるでした。
子どものように素直でもあり、少々下品でもあり、大阪のおばちゃん的乙女とでも言いましょうか、不思議な魅力の人です。
かなわんなぁ。おもしろすぎ。

それにしても31歳です。
自分の娘だったら、おもしろがってばかりもおれません。
あんたもういい年なんやからとか、もうちょっと落ち着きなさいとか、その言葉使いはどうよとか、言うに違いない。
そしてそんな注意を受けない人だったら、きっとこんな天然の文章は書けないのでしょう。
とすれば、西さんのお母さんも偉大なのね。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月09日

きりこについて


きりこについて

きりこについて

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/04/29
  • メディア: 単行本



「人間、中身だよ」そんな言葉がどれほど嘘で、どれほど本当のことか。
でも「容れ物」と「中身」は別物じゃなく、お互いに干渉しあってその人となりを作ってる。
自分を肯定できる人は幸せだ。そして猫は偉大だ。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月29日

ミッキーかしまし


ミッキーかしまし

ミッキーかしまし

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本



エッセイ集。
何でミッキー?と思ったら、耳の形からそう呼ばれたことがあるらしい。
テヘラン生まれで小学生時代のほとんどをカイロで過ごしたという経歴に、へえ〜と思う。
そういった幼少時代の経験はきっとどこかに生きているんだろうが、その後の大阪暮らしは彼女をこてこての大阪娘に育てあげたらしい。
「脳みそつるつるエッセイ集」というだけあって、いやもう、好き放題。
お酒の上での武勇伝には事欠かず、『仁義なき戦い』を熱く語り、友とつるみ、猫の逆襲され、幽体離脱訓練を試みる。
たくましいというか、気にしちゃいないというか、懲りないというか。
好きだなぁ、こういう人。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 西 加奈子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする