2025年05月21日

 ありか

ありか - 瀬尾まいこ
ありか - 瀬尾まいこ

母親に逆らえない、自己肯定感の低いシングルマザーの美空が、周囲の人たちに支えられながら、娘のひかりと共に自分を育てていく物語。

自然に距離を縮めるのが苦手な自分としては、義弟や義母、保育所のママ友、職場仲間といった面々の、さりげなく有無を言わせない好意に和んだし、すごいなぁと思ったんだよね。
そしてそれ以上に、美空の娘に向けるまっすぐな愛情に打たれました。

いろいろな母がいて、子どもとの相性や性格の違いもあって、何が正解かなんてわからない。
それぞれが自分の居場所と、ここにいる意味を求めて生きていくしかない。
せめてできるだけ、自分にも他人にも、心柔らかくありたいと思うのです。

なんて毒親と思っていた母親自身にも変化がありそうで、美空とひかりちゃんの物語はまだまだこれから。
義理の家族との関係だって、変わっていくかもしれない。
でもきっと大丈夫だね、そんな予感に気持ちが温かくなります。
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2025年03月25日

 そんなときは書店にどうぞ

そんなときは書店にどうぞ - 瀬尾まいこ
そんなときは書店にどうぞ - 瀬尾まいこ

瀬尾さんの、作家としての書店巡りあれこれと、近年映画化された作品についてのエッセイ。
ちょいちょい関西弁混じりの自虐ネタ満載で自らを田舎のおばさん呼ばわり、元先生という硬めのイメージから遠く、自己肯定感低すぎじゃないかと心配になるほど。
ただ人に向ける眼差しの温かさは、作品の温度そのものだと感じました。
娘ちゃんとのやりとりも微笑ましい。

『幸福な食卓』を読んだのは20年も前。
巻末の小説は続編と知らずに読みましたが、取り返しのつかない後悔は消えることはないけれど、時と共に傷みが薄れればいい、そんな日も遠くないのかな、と願いにも似た気持ちに。
短くてもしっかり撃ち抜かれました。
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2023年10月03日

 私たちの世代は

私たちの世代は (文春e-book) - 瀬尾 まいこ
私たちの世代は (文春e-book) - 瀬尾 まいこ

まだ終わったわけではないけれど、ようやく山は越えたかと思えるようになった昨今、いろいろな意味で沁みる物語だった。
様々なことが手探りで終わりの見えなかった時期、日々が新しく経験することばかりの子供たちにとって、当たり前を見つけることは本当に難しかっただろうなと思う。

感染症による休校をきっかけにつまづいてしまった子、貧困や偏見にさらされる子たちが、さしのべられる手を借りつつ時間をかけて自立していく。
この物語にはたくさんの優しいおせっかいがあふれているけれど、見守る大人たちの優しいまなざしに、そしてのびやかにたくましく羽化していくかつての子供たちに、胸が熱くなる。
蒼葉が自分をあきらめなくて良かった。
何も派手さはないのに、すごく気持ちを揺さぶられました。
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2022年09月05日

 掬えば手には

掬えば手には - 瀬尾まいこ
掬えば手には - 瀬尾まいこ

うわぁ、いい本読んだなぁとしみじみ思う。
人の気持ちには敏感なのに、自分のことはてんで二ブチンな、すばらしきおせっかいヒーローの物語。

みんなやわらかな心を持っているから、傷つけたくないし傷つきたくもない。
だから引っ込めそうになるのを思わず伸ばした手が、踏み込んだ一歩が、誰かを動かし、それがまた他の誰かの力になって、めぐっていく。
主人公も魅力的だけれど、それ以上に河野さんがいい。
店長も実際に一緒にいたらびくびくしちゃうかもしれないが、いい人だ。
思わずにやりとする「アフターデイ」、その後も見てみたくなる。
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2022年06月10日

 夏の体温

夏の体温 - 瀬尾まいこ
夏の体温 - 瀬尾まいこ

小児病棟での小学生男子友達物語、新米大学生作家と悪人モデル男子、転校生の憂鬱とそれから。
3話目の『花曇りのむこう』って、国語の教科書に載ってるんだと今気づいた。
なるほどなぁとも思うし、分解して理解しようとするよりただ感じてほしいなとも思う。

『夏の体温』と『花曇りのむこう』は確かに、少年の気持ちの揺らぎや葛藤に、ああそうだったよなと懐かしく思ったり、それを見守る大人たちの向き合い方がいいなぁと思ったりした。
お手本と言ってもいいくらいの、人に対する優しさだ。
でもそれ以上に、何よりストブラが良かった!
瀬尾さんの描く、物腰だけは丁寧なひょうひょうとして憎めないヤツがとても好きだ。
言葉で、物語で、そっと誰かの背中を押したり手を引いたりできるって、すごいな。
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2021年05月31日

 その扉をたたく音

その扉をたたく音 (集英社文芸単行本) - 瀬尾まいこ
その扉をたたく音 (集英社文芸単行本) - 瀬尾まいこ

かつての夢はミュージシャン、今や目的もあいまいで親の仕送りで暮らす29歳無職の宮路、
たまたま老人ホ‐ムで出会った、神がかったサックスの音。
その音に惹かれて老人ホームに通うようになった宮路は、渡部の関わり合いの中で変わっていく。

食うに困らないとここまで人間はぼんくらになるのか
自分は何者でもないことは棚に上げて、逃げるなとか本気を出せとか渡部に迫る宮路のだめっぷりに、読んでいるこちらが赤面したくなるほど。
でも渡部はそんな宮路に腹を立てるでもあきれるでもなく、友達になることを持ちかける。
ばかだなぁとは思うけどばかにはしてはいないよ。
口先だけの宮路に比べて、淡々としつつもこの懐の深さよ。
どんな青年なのかと思ったら、他作品にも登場しているらしい。
既読だけど覚えていないので、こりゃ再読の必要ありかと。

で、宮路はというと、音楽は何もしないことの言い訳のようなもので、このままじゃダメだなと
思ってはいるけど何をすれば良いのかわからないから何もしていない。
そんな三十路前とまともに付き合ってくれる友も無く、精神的引きこもり状態。
そしてある意味バカにしていた入居者にそれを見抜かれ、使い走りにされるが、たぶん
誰かの役に立つとか必要とされることで、自分にも価値があると思えるよいになっていったんじゃないかな。
甘ちゃんだけど根はまじめなんだよね。

助けたつもりで助けられたり、不勉強な思い込みで傷つけたり、ただ誰かのためにであっても結果は様々。
それでも、思いは人を変えることさえある。
そっと背中を押してくれる優しい手を感じます。
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2019年06月21日

 傑作はまだ

傑作はまだ
傑作はまだ

毎月養育費を振り込むと写真が一枚送られてくるだけで、一度も会ったことのない25歳の息子の智が突然、はじめましてとやって来た。

人にも自分自身にも興味を持たず、そんな人が不思議と作家としての仕事だけはそこそここなしていたので、とりあえず生活はできているという状態の主人公・加賀野。
興味は無くても義務は果たさねばと真面目ではあるらしく、不本意でできてしまった子供に養育費だけは払い続けて20年。
その都度写真が送られてきても、ああそうかと思うだけ・・・ってどんな人なの。

そんな何かしらを欠いた主人公のもとにいきなり息子を名乗る息子であろう青年が現れ、愛想よく、でも手厳しいこともずけずけと口にし、何のこだわりもなく踏み込んでくる。
加賀野が智に振り回され、あたふたしながらいつの間にか、ごく身の回りながら周囲のことに目を向けられるようになっていくあたりが、読んでいて一番楽しかった。
息子の成長写真を見ても関心を持たなかった人が、相手を喜ばせたいと思うようになる。
そして自分自身も親にとっての息子だということに思い至る。
こういう気づきの繋がり、いいなぁと思う反面、この生活が続くわけじゃないよねと先が気になった。

そして結末の種明かし。
善意と愛情に支えられ、家族がみんな幸せになる、そんな結末はとても好きです。
うーんしかしこれは。。。
でき過ぎでもいい、と思えるほどには気持ちが沿えなかったみたいです。ちょっと残念。
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2012年06月08日

僕らのごはんは明日で待ってる

僕らのご飯は明日で待ってる [単行本] / 瀬尾まいこ (著); 幻冬舎 (刊)

3年前に兄を亡くして以来、無気力無関心の葉山亮太。
高校の体育祭で米袋ジャンプのペアとなったことから、やたら話しかけてくる上村小春と付き合うことになった。
亮太は小春にそそのかされるまま大学に進学、そして変遷しながら大人になっていくふたりの道が描かれる。

付き合ったり別れたり、突き放したり寄り添ったり。
お互いに好き合っている男女の物語なんだけど、恋愛の高揚感も色気も全くない。
欠落感を抱える者同士が、ただ相手を必要として一緒にいることを選んだあたたかさだけがある。
恋愛というより、もともと家族愛に近いふたりなのかもしれない。
しっかり者の小春と、おっとり人のいい亮太の、真剣なのにかみ合っていない会話がおもしろすぎる。

たびたび困難が、お互いを必要としあう気持ちを揺るがす。
でも一番ゆずれないことだけを大切にした。
強がりな小春がとてもいじらしかった。亮太もいつの間にかたくましくなった。
このふたりならきっと大丈夫、読んでいるこちらも幸せな気持ちになった。
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2010年03月16日

僕の明日を照らして


僕の明日を照らして

僕の明日を照らして

  • 作者: 瀬尾まいこ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 単行本


母の再婚相手の優ちゃんは、普段温厚なのにときどきキレて隼太を殴る。
それでも優ちゃんを失いたくない隼太は、母には秘密にして、ふたりで何とか状況を変えようと奮戦する。

ふだん温厚なのに時々どうしようもなく暴力を振るってしまう母の再婚相手・優ちゃん。
殴られること以上に、「女手一つ」の重荷から開放してくれた彼を失いたくない隼太。
二人の秘密に気づかず、成長していく息子に少し寂しい母。
過去の失敗から隼太には慎重に接する優ちゃんの両親。

家族だから、親子だからわかりあえるはず、という幻想はここにはない。
誰もが闘っている。
そんな小手先のことで事態が収まるものか、とも思った。
でも何が幸せなのかを考えたとき、隼太の願いと覚悟は痛いほどわかる。
人が他の人と場所や時間を共有して生きていくには、どうしたって試行錯誤の努力が必要なのだし。

その後3人が家族になれるのか、別の道を歩むのか、いくつもの答が先にある。
結末に、うぅ〜んとうなってしまいながらも、再出発の一歩だと思いたい。
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2008年07月04日

戸村飯店 青春100連発


戸村飯店青春100連発

戸村飯店青春100連発

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 理論社
  • 発売日: 2008/03/20
  • メディア: 単行本



高校卒業と同時に家を出て、東京の専門学校へ行く兄・ヘイスケと、卒業後は実家の戸村飯店を継ぐんだろうとぼんやり思っている弟・コウスケ。  さして仲の良くない兄弟が離れて暮らすうち、見えてきたお互いのこと、自分のこと・・・そしてそれぞれ歩み出したその先は。

読み始めてすぐ、あれ、これはどこかで…?と思ったら、第一章は「Re−boyn」に加筆修正されたものだとか。
家を出て東京へ向かおうとする兄を送り出す、弟の目線で書かれた第一章に続き、章ごと兄弟交互の目線で同じ時間軸を描きつつ、物語は進む。
「ゴーストライター」で気になっていたのは、むしろ兄ヘイスケの方だった。
へらへらっとした顔の裏に、屈折した何かが感じられたから。

同じ親から生まれ、同じ環境で育ったはずの兄弟。でも違うんだよねぇ、それぞれ。
近いだけに、仲が良いならとことんだが、そうでなければ、マイナスの思いをいつまでも引きずってしまったり、あえて無関心になったりするもの。
コウスケはアホだが、自分が思っているほど不器用じゃない。
人の顔色や雰囲気をくみ取るのがうまいし、単純でまっすぐ。わかりやすい。
そして、こういういじりやすい子はかわいがられる。
何でも器用にこなすと思われていたヘイスケが、本当はとても不器用で、失敗することに臆病で、でも仮にも兄だからそんな素振りを見せるのはかっこ悪くて。
18年間、何でもない顔をしてきたヘイスケの胸中も、痛いほどわかる。

息が詰まったら、そこを離れてもいい。回り道は無駄じゃない。
静かに別れを惜しんでくれる人や、ぼろ泣きしながら見送ってくれる友、思いを言葉にして人に伝えること、人を傷つける痛み。得難いものをヘイスケは手に入れたはず。
ヘイスケに渡した封筒の中身といい、何となく店を継ぐ気でいたコウスケを蹴り出したことといい、この兄弟には、子どもを一人の人間として育てた愛情深き両親という強いバックボーンがある。
なんたって親父さんが、最高。
おかしくって、ちょっと身につまされて、幸せな物語だった。
瀬尾さんの描く少年は、やっぱいいなぁ
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