
戸村飯店青春100連発
- 作者: 瀬尾 まいこ
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2008/03/20
- メディア: 単行本
高校卒業と同時に家を出て、東京の専門学校へ行く兄・ヘイスケと、卒業後は実家の戸村飯店を継ぐんだろうとぼんやり思っている弟・コウスケ。 さして仲の良くない兄弟が離れて暮らすうち、見えてきたお互いのこと、自分のこと・・・そしてそれぞれ歩み出したその先は。
読み始めてすぐ、あれ、これはどこかで…?と思ったら、第一章は「Re−boyn」に加筆修正されたものだとか。
家を出て東京へ向かおうとする兄を送り出す、弟の目線で書かれた第一章に続き、章ごと兄弟交互の目線で同じ時間軸を描きつつ、物語は進む。
「ゴーストライター」で気になっていたのは、むしろ兄ヘイスケの方だった。
へらへらっとした顔の裏に、屈折した何かが感じられたから。
同じ親から生まれ、同じ環境で育ったはずの兄弟。でも違うんだよねぇ、それぞれ。
近いだけに、仲が良いならとことんだが、そうでなければ、マイナスの思いをいつまでも引きずってしまったり、あえて無関心になったりするもの。
コウスケはアホだが、自分が思っているほど不器用じゃない。
人の顔色や雰囲気をくみ取るのがうまいし、単純でまっすぐ。わかりやすい。
そして、こういういじりやすい子はかわいがられる。
何でも器用にこなすと思われていたヘイスケが、本当はとても不器用で、失敗することに臆病で、でも仮にも兄だからそんな素振りを見せるのはかっこ悪くて。
18年間、何でもない顔をしてきたヘイスケの胸中も、痛いほどわかる。
息が詰まったら、そこを離れてもいい。回り道は無駄じゃない。
静かに別れを惜しんでくれる人や、ぼろ泣きしながら見送ってくれる友、思いを言葉にして人に伝えること、人を傷つける痛み。得難いものをヘイスケは手に入れたはず。
ヘイスケに渡した封筒の中身といい、何となく店を継ぐ気でいたコウスケを蹴り出したことといい、この兄弟には、子どもを一人の人間として育てた愛情深き両親という強いバックボーンがある。
なんたって親父さんが、最高。
おかしくって、ちょっと身につまされて、幸せな物語だった。
瀬尾さんの描く少年は、やっぱいいなぁ