2013年08月24日

さくらゆき 桜井京介returns

さくらゆき 桜井京介returns (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

画家の養女の中毒死事件、稀覯本をめぐる事件、学園の校長宛てに届いた脅迫状、自分の名を嫌う少女。
スクールカウンセラーになった蒼を通じて、京介が謎に関わる4編。

それぞれ30代、40代になった蒼と京介。
蒼の印象はほとんど変わらないけど、京介、穏やかになったねぇ・・・
そして、かつてさしのべられた手を、今度は若い世代に。
中学生にさえ見抜かれるほど、孤高の影は隠しようがないけれど、それでも人を慈しむ温かさを持ちえた。
その成長を見守るような気にさせられている読者としては、感慨深いものがあります。
彼らの幸せがいつまでも続きますように。

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2010年05月12日

緑金書房午睡譚


緑金書房午睡譚

緑金書房午睡譚

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


しばらく前から高校を休学している木守比奈子は、大学教授の父が研究休暇で1年間イギリスへ行くことになったため、亡き母の親戚だという金子緑朗の営む古書店「緑金書房」に身を寄せることになった。
屋根裏部屋を住処とし、朝食を作り、できるだけ店の手伝いをしようとする比奈子だったが、謎の多いその店でひとりになると奇妙な物音や気配を感じるようになり、やがてさらに不思議な出来事に遭遇する。

招かれた者だけがたどり着ける、謎の古本屋。
となれば、店主が変わり者でも猫がしゃべっても不思議はない。
何より独特の心地よさを持つ古本屋という空間は、それだけで多くの不思議や秘められた物語をもっている気がする。
謎と、ほのかな想いと、自分の先への強い思い。
不器用そうな当人同士はこの先、確かに一筋縄ではいかないかもしれないし、残された謎も多い。それでもまずは一歩。

昼間の夢のようなファンタジーを、江戸っ子口調のクロさんが締める。
この按配がいいね。
比奈子の両親の物語も見てみたい。
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2009年06月19日

魔女の死んだ家


魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/10/26
  • メディア: 単行本



多くの取り巻きに囲まれる一方、魔女とも呼ばれた「あたし」のおかあさま。
10年前の事故死の真相が、ある探偵によって暴かれる。

ルビが振ってあるので、そういえばミステリーランドだったとわかるけれど、内容は叙述的仕掛けのある本格ミステリ。
きれいに収まりはついていましたが、死を選ぶことはなかったんじゃないかという残念な気持ちも。
まっ、それはいいとして。
その探偵というのがなんと・・・だったので、思わずにやり。そっちのほうが印象に残って。
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2009年05月14日

桜の園


桜の園 神代教授の日常と謎

桜の園 神代教授の日常と謎

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/04/23
  • メディア: 単行本



同僚の大島に頼み込まれ、大島の親族が住む「桜館」と呼ばれる古い洋館を訪れた神代と友人の辰野が、 かつてその館で起こったある事件の真実に迫る『桜の園』

実母の祥月命日、墓前に供えられた花と歌の謎と、「桜館」のメイドだった道子から依頼された不審者解明、 さらに先だって関わった大島の親族からの、絵画消失事件の解明という三つの謎解きが、あるキーワードでシンクロする『花の形見に』

ふたつの中編から成る本書は、建設探偵の番外編。
前作『風信子の家』では46歳だった神代さんが本書では47歳ということなので、時系列的にも続き物になるようだ。 蒼がまだずいぶんと子どもっぽくて、懐かしい感じ。
思えば『風信子の家』が、建設探偵にはまるきっかけだったのよね・・・
神代ファンとしては、本編が終わっても番外編は続くかも?と期待してしまうなぁ
『花の形見に』では、本編の主要メンバーも登場してにぎやかな場面もあり、どちらかというと血のつながりにまつわるやや重苦しい感じが軽減されている気がする。
謎というなら人の心ほどわかりにくいものはなく、だからこそ推し量って、踏み込んで、関わろうとするのでしょう。
本編以上に本格なんだけど、「命と思いは切れることなく、繋がっていく」
ってな言葉にしみじみさせられます。

余談だけど、副題の「神代教授の日常と 謎」の、「と」  なぜ傍点が?表示しにくいったら・・・
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2009年02月06日

黒影の館

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

建築探偵シリーズも本書とあと1冊を残すのみ。
作者自身のあとがきにもあるとおり、すでに本格だとかそうでないとかいうことは問題でない。
ミステリの要素をちりばめつつも、前出本に忍ばせていたパーツを拾いあげ、 総括して最終巻へつなげるための一冊という感じ。
多くのファンと思いを同じくする深春と蒼に迫られた神代教授が、長らく秘められていた京介の過去の一端を語り始めるわけです。
まだ、京介を引き取ることになった時のことは伏せられているので、これが最終巻の目玉なのかなと。
終わってしまうのはとても残念だけど、次が待ち遠しい。
それにしても神代さん、やっぱすてきだー
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2008年04月01日

アベラシオン

アベラシオン (上) (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)アベラシオン 下 (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

留学生の藍川芹は、ヴェネツィアのパーティーで殺人事件を目撃してしまったことから、事件の関係者である美術エッセイスト、アベーレ・セラフィーノ・デッラ・トッレの 屋敷に招かれる。 
由緒あるアベーレの一族の蒐集した膨大な美術品を秘匿した館「聖天使宮」には、アベーレの弟である車椅子の美少年・ジェンティーレと、 ギリシャ神話の神々の名を名のる不審な老男女が滞在していた。 疑心暗鬼のまま館にとどまった芹は、ジェンティーレを通じ血統にまつわる一族の暗部を知らされるが、やがて思いがけない人物の殺人事件に関わることになる。 

絢爛たる美術品、建築物、切り離せないキリスト教の影響とその推移・・・ イタリアという国の美術史をベースに、作品や歴史を読み解く楽しみが味わえる。 
そして舞台は、美術品の宝庫であり、ハプスブルク家の血を引くという兄弟の館。 
大いなる富の影にある、歴史の暗部に関わる一族の秘密、それを継ぐ兄弟の確執。 
地下迷路あり、謎の大仕掛けあり、全くの部外者である芹にとって誰が敵で味方なのか?というハラハラ感のうちに続く、見立て殺人事件。 
謎解きの要素も楽しめるけれど、ああいう結末とは・・・ 
でも、富と力を得ていびつなまま繋がってきた一族の象徴ということで、まぁ許せるかなと。 
それよりもまず、アベーレが芹にこだわった理由がやはり、納得できない気がするなぁ・・・ 
アベーレにしろジェンティーレにしろ、芹の普通の健全さに惹かれたのかもとは思えますが。 
という細事はさておき、これだけ盛りだくさんな要素をよくぞまとめ上げてくれました。 
読み応えは充分。
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2007年12月09日

胡蝶の鏡

胡蝶の鏡 (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

『桜闇』所収「塔の中の姫君」、その後の物語。
「塔の〜」で四条彰子とヴェトナム青年と駆け落ちに手を貸した京介たちは、ひとり息子を連れ、帰郷していた彰子と再会する。しかし同行してきた義弟のロンに、ハノイで彰子が孤立していることを知らされ、そして婚家レ家祖父の日本人嫌いの原因となっている、九十年前にレ家で起きた日本人学者助手の死に関わる謎を解くよう頼まれる。
やがて婚家に戻った彰子は、息子を残したまま突然失踪、京介と深春はハノイに向かう。

軸となるのは、現存の建築家にして建築史学者であった伊東忠太の虚実あわせた物語。
そこに大戦、ヴェトナム戦争が招いた悲劇、家族内の確執などが絡み、九十年前の事件の謎が解かれ、老人は過去と再会する。そして新たな一歩へ。
小技の謎解きもあり、ミステリとして楽しめる部分もあるが、ヴェトナムという国への思い入れと、心情的なものに重きを置いた物語という印象。

それとは別角度の物語も、着々と進行中。
京介は、料理をし、ジムに通い、自立した健康的な生活を始めるという挙動不審ぶり。
今回は事件に関わらなかった蒼は、彼にとって重大な転機を迎える。
京介の、自分を駒にしてゲームを支配するのどうのという言動も、不穏極まりない。
第三部は始まったばかり。さてこの助走は、どう転がっていくんだろう。
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2007年12月02日

失楽の街

失楽の街 (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

第二部最終章。
グラン・パと生き難く感じている少年達の関わる物語。
主要人物総出演で、それぞれのキャラが際立ってます。
やはり神代さんが一番すてきだー

東京都内で小規模な爆発事件が続き、工藤刑事は職務外で探す少年との関わりを危惧していた。
やがて連続爆弾魔事件の災禍は神代の周囲にも及び、マレーシアから帰国した京介が
<火刑法廷>の爆破予告をネットで見つける。
同時期、不審な様子の小劇団「空想演劇工房」主催者・祖父江晋は事件と関わりがあるのか?
連続する事件現場には、どんな繋がりがあるのか?京介が謎を追う。

爆弾魔が誰なのか、何故なのか。
予告その他からプロファイルされる犯人像と、犯人側からの描写であれこれ想像するのが楽しかった。
そして爆破事件と抵触する形で、40年前に退官教授の息子が事故死した事件があり、
これにも京介がけりをつけて見せる。
心の内にどんな爆弾を抱え込んでいるか知れない、人こそ怖ろしけれというところ。
脇役だが、工藤刑事と幼馴染の出世頭・漆原の、刑事として、人としての迷いや矜持、
掛け合いもおもしろかった。
工藤さん、いい味出してます。

今回中心となるのは、戦前に建てられた集合住宅『旧朋潤会牛込アパートメント』だけれど
それ以上に、東京という街自体が舞台となる物語。
理想の都市、理想のコミュニティをめざした人たちそれぞれの夢と幻滅、
理想郷とは成りえなかった街と自分への破壊衝動。
人が街を創り、街が人を育てていた良き時代は、東京に限らずあったんだよねぇ。確かに。

神代教授の生い立ちや養父に対する後悔の念、今だからこその想いも綴られる。
共感もし、ますます惹かれてしまうのでした。
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2007年11月12日

Ave Maria


Ave Maria (講談社ノベルス)

Ave Maria (講談社ノベルス)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/05/11
  • メディア: 新書



蒼、W大2年の4月。 翌年夏に時効が成立することからかえって薬師寺事件の関心が集まっている中、事件のことを忘れて生きることに齟齬を感じはじめていた。
そんな矢先、マンションには「響」から「REMEMBER」というカードが舞い込み、美杜杏樹の名を知る男の立ち上げたサイトには、事件の現場写真が掲載されていた。
そして突然の翳の拒絶。
封印されていた事件当時の記憶の中に「ひびき」を見つけた蒼は、自分の力で過去に正面から向き合う覚悟を決める。

『原罪の庭』では語られなかった、薬師寺事件もうひとつの面。
確かに蒼の純粋さには幼さを感じることも多々あったけど、あの事件、それまでの幼少期を考えれば、
ゆっくり心が育っていく過程なんだろうぐらいに思っていた。
本当に忘れてしまえるならそれでもいいと私は思うんだけどね。
蒼は、忘れてしまえなかった。いつも誰かに助けられ、かばわれて、見ないふりをすることに耐えられなくなってきた。ならば、というのが本書。

蒼と事件の関わりについて、勝手に解釈し、共感し、あるいは憤る人たちが突付きまわし、自分の周囲で起こる不幸に、自分の無力さを痛感する彼。
斉藤に対し、自虐的にすごんでみせる蒼はあまりらしくないけど、なーんか精一杯ってとこが、かわいいわねぇ。やっぱ。
自分の内側を見つめる作業は、伴った痛みの分、かけがえのない人たちの隣を歩く自信を少しばかりもたらしたみたいだ。
「建設探偵」の活躍する「ミステリ」であることからはずいぶん離れてきたけれど登場人物が魅力的であればどうしてもその人となりにも踏み込んで欲しくなるし、これはこれで良し、と思う。
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2007年10月04日

月蝕の窓

月蝕の窓―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス) [新書] / 篠田 真由美 (著); 講談社 (刊)

三年前、京介たちが調査できずに終わった那須の明治建築「月映荘」に、再調査の機会が訪れた。
「月映荘」はいわくつきの建物だった。
11年前、閉ざされた家の中でふたりの女が殺害され、ひとり生き残った少女・茉莉は7年後、兄を犯人と名指しする。事件の真相はわからないまま兄はその2年後マンションから墜落死し、その場に居合わせた松浦が今はセラピストとして茉莉のそばにいる。
赤色に怯える未亡人と、心を病んでいる様子の茉莉の、奇妙な関係。
門野に紹介された霊感少女・輪王寺綾乃に、命に関わる危険を忠告されながらも、調査に先駆けて作業用のプレハブに泊り込むことになった京介だったが、そこで再び殺人事件が起こる。

これはけっこう凝っていた。
密室殺人、不可能犯罪、赤い月などの謎解きに加え、心理療法的アプローチ、霊能者対ガチガチリアリスト京介、謎かけの童話、そしてあわや!の顛末。
京介はつくづくとヒーロー向きでないと思われる。
しかし、なくしたサンダルあたりからどうも怪しげだった松浦という人物、はたと思いあたってこれまたつくづく、シリーズ物は順番に読むべきだと痛感。
後の巻で出てきますね、この人。その発端がこの巻だったというわけか。
京介の内心葛藤は、否が応でも周りからつつかれてゆくわけだ。
彼はいつか自分を肯定できるようになるんだろうか。なってほしい・・・
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