2024年08月25日

 病葉草紙

病葉草紙 (文春e-book) - 京極 夏彦
病葉草紙 (文春e-book) - 京極 夏彦

とある長屋で起こる様々なできごとを、店子の本草学者が虫の仕業として真相を見抜く、いわゆる安楽探偵ものでした。
探偵役の本草学者・棠庵は、前巷説にも登場していた人のようですが、時代的には前巷説より40年近くさかのぼる物語。

探偵が棠庵先生なら、差配の藤介がワトソンといったところ。
答えが妖怪ではなく虫の仕業というのが目新しいけれど、無いものに名前を付けて対処するという点は、妖怪同様の知恵なのでしょう。
起きる事件は意外と重たい内容だったりもしますが、何しろ飛び交う掛け合いが軽快で、落語を見ているような楽しさでした。

藤介も最後にはが思いがけない活躍ぶりでしたが、どうでしょう、私はむしろぼんくらのままでいてくれた方が…と思わなくもない結末でした。
まだ若い棠庵の揺らぎが見えたのは、良かったのかもしれません。
新しいシリーズとして続いて欲しいなぁ
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2024年07月04日

 了巷説百物語

了巷説百物語 (角川書店単行本) - 京極 夏彦
了巷説百物語 (角川書店単行本) - 京極 夏彦

洞観屋・藤兵衛を狂言回しにオールスターの活躍(しかも、おじいが圧倒的に格好いい!)、能天気に周りを振り回す百介も相変わらずで、なかなか表に出てこない又市を仲間じゃないと面倒がる口ぶりながら慕う面々にほろり、チャンバラにはらはらし、そして治平に号泣・・・。
さらに、いかにもな中善寺の曽祖父も登場し、誰もが傷を負い悲しみを抱えての大団円は、胸に迫るものがありました。
時代が移れば化け物使いも通じなくなる、すべてにいつかは終わりが来るとわかっちゃいるけど、寂しいなぁ
物理的に重いのが難でしたが、堪能しました。
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2023年02月26日

 書楼弔堂 待宵

書楼弔堂 待宵 (集英社文芸単行本) - 京極夏彦
書楼弔堂 待宵 (集英社文芸単行本) - 京極夏彦

舞台は未だ江戸の記憶と地続きながら、文明開化の呼び声も高い、明治35年頃。
書楼弔堂を探す客たちが訪れる甘酒屋の主人・弥蔵が本書の語り手。
それぞれに生き方を模索する客たちが、書楼弔堂店主によって新たな一歩を踏み出す、これも憑き物落としのような物語かと。

岡本綺堂の来歴など、名や作品名しか知らなかった人物の背景も興味深かった。
がしかし何といっても、闇深そうな過去が見え隠れする弥蔵と利吉との掛け合いが、テンポといい間合いといい、まるで落語のようで楽しくってしょうがない。
弥蔵の重しが取り払われた憑き物落としも、見事でした。
毎回思うのだけど、有無を言わさぬ仕舞い方が小気味よいのです。
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2020年09月22日

 今昔百鬼拾遺 月

今昔百鬼拾遺 月 (講談社ノベルス) - 京極 夏彦
今昔百鬼拾遺 月 (講談社ノベルス) - 京極 夏彦

既刊「鬼」「河童」「天狗」の合本。
3冊とも既読だが大幅な加筆訂正があるとのことで、再読。
どこが違うのかはわかりませんが。

『河童』は、お嬢さんたちの河童談義に加え多々良先生の登場で、一番妖怪を楽しめる一遍でしたが、圧巻はやはり『天狗』の成敗かな。謎解きも面白かった。
京極堂の登場ならずとも、時代に先駆ける感覚を持った女性陣の活躍で楽しめました。

そもそも「去年の春の事件」がどんな顛末であったかすっかり忘れているので、『絡新婦の理』はぜひとも再読したいところです。が、重いんだよなぁ…
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2020年07月22日

 虚談

虚談 (怪BOOKS 幽BOOKS) - 京極 夏彦
虚談 (怪BOOKS 幽BOOKS) - 京極 夏彦

嘘だということにしなければ、訳が分からず怖くて気持ちの悪い9話。
記録がないから未読なのかと思うのだけれど、ちくらという奇妙な言葉に覚えがある気もする。
そしてやはり意味が分からない。そもそも嘘だから意味はないのか。
忍者の出る家、これなんか普通に怪談だよね。
真っ黒い人が天井から逆さにぶら下がってきたら、普通それを忍者だとは思わないだろう。
ハウスもそう。ありえない現実をそのまま受け入れている人自身がコワイ。
嘘だから。嘘であってほしい。でもリアルがそこまで・・・
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2019年07月08日

 今昔百鬼拾遺 河童

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)
今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

相次ぐ不審な溺死を端に、河童と宝石強盗やのぞき魔事件が関わりあう奇妙な事件。
憎めない妖怪馬鹿の多々良先生や益田君も登場し、百鬼夜行シリーズらしさが増した感の本書。
冒頭の河童談義をはじめ、地方色豊かなカッパという存在がとても興味深く、多々良先生ならずとも頬が緩みます。
京極堂のように十重二十重からがっちり囲い込むのではなく、女性二人が時に感情に訴えながらのロジカルな解明、
これはこれでが楽しめました。
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2018年06月15日

 ヒトごろし

ヒトごろし
ヒトごろし

何しろ重たくて持ち運びが難しいため、読み終えるのにけっこう時間がかかってしまった。
ずいぶんと剣呑なタイトルだが、ただ人を殺したいという思いに突き動かされ、そのために侍という立場を目指し、新撰組鬼の副長と呼ばれるようになった土方歳三の物語。

何だこれは、これが土方という男かと思う。
京極流解釈で描かれた土方は、ただのヒト殺し人でなし人外を自認し、理に勝ち冷徹でありながら彼なりの美学を持ち、言い様は悪いがとてつもなく格好良かった。

理想は邪魔だし、主義主張もない。
他者に能力以上の信頼を寄せることはなく、不利益不要なら排除をためらわない。
それでも近藤勇や実家方に対してだけは、理だけでは詰められないものがあったように思う。
失い続ける敗走の道行は痛ましいが、人外は思いがけず人としてのぬくもりに包まれて最期を迎える。
哀切極まる、小憎らしいほどの京極節だ。

ついでながら、壬生浪士組から新撰組、池田屋事件、戊辰戦争、函館戦争・・・と、歴史に名を残す数々の争いや事件も正直なところ点として何となく覚えているだけだったので、幕末からの流れをおさらいさせてもらった感じ。
個人の資質や行動の背景がイメージしやすかったぶん、本書ではクズ扱いの沖田や坂本龍馬も含め、彼らのことを他方面からも見てみたくなった。
参考文献とされた読み物にも興味が湧きます。
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2017年05月30日

 虚実妖怪百物語 序・破・急

虚実妖怪百物語 序・破・急

1400ページ近いこの3冊をまとめてみようかと思ったが、無謀というか無駄な気がしてやめた。
要するに、妖怪をめぐる大戦争である。
妖怪、幽霊、魔人、魔物に操られる政府や人民、そして妖怪関係者や巨大ロボまでが入り乱れてのお祭り騒ぎだ。

そもそも妖怪関係者っていう括りがすごい。
妖怪専門誌や実話怪談系の編集関係者、寄稿者あたりはともかく、作家、研究者、アニメの声優に至るまで、いわゆるオバケ、もしくはなんだかよくわからないモノに関わったことがある人たちが全て、妖怪側の関係者として登場する。
作中に登場する京極氏自身の自己演出も興味深いところです。
これまで事あるごとにおっしゃってますね、確かに。 「不思議なことなど、無い!」
今回も力説されていましたなぁ

妖怪はもともと無いもの。
無いものがあるのはおかしい。
それを「不思議」と片づけてしまうのは思考停止の極みだと。
不思議なことなどない、よくわからないことがあるだけだ、と。
この無いのにあるモノ、見えないけれどあるモノ、怪と名付けられるこういうものが人と人の間を繋いできたのだと、そんなふうに感じました。
そして無いものに形を与え、みんなで共有できるようにしてくれたのが、水木大先生というわけですね。

妖怪がわらわら登場するあたりまではわくわくしながら一気に進めますが、集大成並みのボリュームは半端じゃない。
いろいろな意味でお疲れ様でした。
願わくは『鵺の碑』・・・早く読みたいです。

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2014年07月06日

 遠野物語拾遺 retold

遠野物語拾遺retold -
遠野物語拾遺retold -

『遠野物語拾遺』という本を知らなかったので、リミックスとどう違うのさ?と思ったけれど、京極本ならおもしろくないはずはないので。
『遠野物語remix』同様、順番を並べ替えて読みやすくなっているけれど、それ以上に京極色で語り直されていて好み。

自然のものは身近であり畏れるべきものと思えばこそ、人は謙虚にならざるを得ないのだろう。
昔から伝えられ続けられている行事や風習には、恐れ戒め感謝する気持ちが込められているようだ。
かと思えば本書には、禁忌にわざと挑戦した男だとか、何の戒めも教訓もなさそうな話もあった。
遠野物語より時代が進んだこともあるのかなと思う。
読み物としてはリミックスよりむしろおもしろかったかな。
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2013年01月14日

眩談

眩談 (幽BOOKS) [単行本] / 京極夏彦 (著); メディアファクトリー (刊)
眩談 (幽BOOKS) [単行本]

京極夏彦 (著)

メディアファクトリー (刊)




『幽』に掲載された5編他、記憶や思い出にまつわる物語の多い作品集。

忘れるのは思い出したくないから。
そんな思い出したくないことを、忘れたことを、思い出してしまったら。
記憶が歪めば今の足元も揺らぐ。
そんな、怖いというより不思議さや惑いに彩られた物語たち。

実家にずっと祀られている得体の知れない『シリミズさん』
他にいくつも怪異が湧く家なのだから、けっこう怖い話なのだ。
が、家人がなんとなく気持ちが悪くて扱いに困るというスタンスに加え、例のシリミズさんが他の怪異をやっつけちゃったりもして、どうも怖いというのは違う。
おかしみがあって、これも好きな1編。

一番は、思い出を埋める『むかし塚』。懐かしいような安らぎのある物語。
思い出は薄れても、何が本当だったかわからなくなってしまっても、過去はお話になってずっと埋めたところにある・・・なんてすてきなことだろう。
自分の中にもそういう場所があれば、安心できる気がする。
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