2009年05月27日

少年少女飛行倶楽部


少年少女飛行倶楽部

少年少女飛行倶楽部

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 単行本


ビタミンカラーの爽やかな表紙絵がぴったりな、中学生クラブ活動物語。
幼なじみの樹絵里に引っ張られ、中学入学と同時に海月が入部することになったのは、たったひとりの部員兼部長しかいなくて正式にはクラブでも何でもない、飛行クラブ。
目的はただひとつ、空を飛ぶこと。

ファンタジーじゃない青春ものとして、この広げた大風呂敷、どう畳み込んでいくのかと楽しみだった。
成り行きまかせのようで、やるんだったらきっちりやってやろうじゃないのというくーちゃん、のびやかで男気があっていいね。
子どもじゃないけど大人でもない、中途半端な中学生という年頃の少年少女たちが、何かをやろうとして結果、大人を動かすというのも気持ちがいい。
あいだに織り込まれた、恋に友情、それぞれの抱える問題、家族との距離なんていうお決まりの悩みネタに、懐かしい気持ちと保護者欲をかきたてられつつ、 はつらつとした彼女たちに気持ちが引っ張られていく。

加納さんの描く若い子の物語は、どこかそれに合わせようとしてドタバタしすぎで痛いなぁという印象を受けることも多かったんだけど、 今回はとても自然にニヤリとできた。
そりゃ世の中、こんなにうまく物ゴトが進むわけないよと言ってしまえばそれまでだけど、それ以上にすかっと胸がすく気がした。
同じ物語を、カミサマ目線でも読んでみたいなぁ
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2007年08月18日

ぐるぐる猿と歌う鳥

ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド) [単行本] / 加納 朋子 (著); 講談社 (刊)

父親の仕事の関係で、東京から北九州の学校に転校することになった5年生の高見森。
小さい頃から悪ガキだったため、 別れを哀しんでくれる友達もいなかった。
一帯に工場の社宅が並ぶその地域で、新しい学校に通い始めた森は、気の合わない嫌なヤツもいたが、 三ヶ月前に東京から越してきたココちゃん、方言でまくしたてる美少女トトキ、同じ登校班の竹本五兄弟、 そしてもうひとり謎だらけのパックと仲良くなる。
ある日パックの口笛に誘われて体育館の屋根に上った森は、社宅の屋根全体をキャンバスに描かれたぐるぐる猿の絵を 見つけた。そしてパックの謎に関わってゆくことになる。

ミステリーランド。なのでもともと読みやすいのだが、これがどうしてなかなか。
今までの加納作品の中で、一番好きかもしれない。

描かれる子供たちに全く無理がない。
やんちゃ坊主で、親を青くさせたり赤くさせたりしてばかりいる困ったクンの森少年。
もちろん先生にも受けは悪い。問題児だ。日頃の行いが悪いから、何をやっても裏目に出る。
父親からも冷たい目で見られている(と思っている)
けれど彼のなんと生き生きしていること!
思い立ったら考えなしで即行動、口は悪いし手も早いが、実はその心根は優しくて、でもわかってもらえないからちょっとひねてて。
子どもらしい、という言い方は好きじゃないんだけど、そう言うのがぴったりなのびのびとした感じ。
もっともこういう子を持った親は、大変なんですぜ。
ほんと、それはすごーくよくわかる・・・

そんな森が、転校先で出会った新しい友だち。
少しずつ仲良しの距離を縮めてゆくごとに、それぞれがいろいろな葛藤や鬱屈を秘めていることを知る。
そして神出鬼没の不思議少年パック。
彼の正体は?みんなは何を知っている?ぐるぐる猿の絵の意味は?
最初、このタイトルロールって何のことだろうと思ってた。
ちゃんと意味があったんですね。
そして無理とも無謀とも思えるたくらみも、きちんと最悪の場合を想定していることで、 ありえないことでもないかと思えてくる。
こういう子が実際に存在する、というのは事実だから。

少年の成長を絡めた冒険小説でもあり、過去の謎解きが今に繋がる物語でもあり、切ないファンタジーでもある。
様々な事情でパックのような環境にいる子が、子どもとして、人間として、普通に、幸せに暮らせる世の中になるといい。
加納さん、もっと児童小説書きませんか?
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2006年12月17日

モノレールねこ

モノレールねこ [単行本] / 加納 朋子 (著); 文藝春秋 (刊)

塀の上の座ると両脇から脂肪が垂れるほど太った”モノレールねこ”に託した手紙だけで繋がっていた、ぼくとタカキの物語「モノレールねこ」、他5編の短編集。

ダメ親父もダメ叔父も、一番いいたいことを胸にしまいこんでいる家族も友人も、みんなとてもいい人ばかり。
そしていい人には必ずいい結果がもたらされ、真綿でくるんだような思いやりは相手をしあわせな気持ちにする。
どれも、気持ちがほっと温かくなるような優しいお話ばかり。
そこが加納作品の魅力なんだけど、ひねくれているらしい私には、じれったいというか、笑いそこねてしまうようなところがあって困った。

人と人との繋がりって、ちょっとしたことで傷ついたり強固なものになったりするけれど、それはぶつかり合ってこそだと思うんだよね。
黙って見守る優しさというのもわかるけど、黙って苦しんでいることを相手に悟られて相手も苦しめるぐらいなら、言いたいこと言え!って思っちゃう。

最終話の「バルタン最期の日」、お母さんは笑いの意味を違えてると思うけど、良かった。

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2005年12月04日

ななつのこものがたり


ななつのこものがたり

ななつのこものがたり

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: 単行本



お母さんが寝る前にお話をしてくれるという形の、もうひとつの「ななつのこ」
一晩に1話ずつ、不思議を織り交ぜた7話。お母さんの語る口調は優しいけれど、「すいかおばけ」にしても「金色のねずみ」にしても、話の中に悪意や残酷な部分がある。
元の「ななつのこ」を読んだのはもう何年も前で、童話のようなふわふわした印象しか残っていないので、こんなお話だったかな?と思ってしまった。
小さな子どもに聞かせるには、もっと言葉がたくさん要りそうな難しい内容のような気もする。
もっともこれはあくまできっかけ。お母さんの名前が回文になっているということは、このお母さんは駒子さんなのかな?自分が出会ってきたいろいろなことのように、 本も人もすてきな出会いをして欲しいという願いは伝わってくる。菊池健さんの、細密で優しい絵がすてき。
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2005年07月11日

てるてるあした


てるてるあした

てるてるあした

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2005/05
  • メディア: 単行本



「ささらさや」の姉妹編。
時間の経過からすると続編なのだが、今回の主人公はこの世のすべての不幸をしょったような気持ちで佐々良の街に降りたった、15歳の少女・照代。
希望の高校にも合格し、満足感にひたっていた彼女は突如、自分の家が多重債務に陥っていて夜逃げするしかないこと、そして自分は両親と離れ、 佐々良に住む元先生だったという母の遠い親戚に預けられることを知る。
そんな照代が、預けられた久代をはじめ、サヤやエリカ、ばあちゃん連中と関わっていくうち、両親の元では得られなかったものを得て、 自分の足で歩いて行こうとするいわば照代の成長記のような物語。
そこに、久代の家に現れる不思議な幽霊の謎が絡んでくる。

見栄っ張りで生活能力のない両親を恨み、それでもひとりで知らない人のところへ放り出される不安を思えば親恋しく、 当たり前のように高校に通う人を見ればひがみたくもなる。
厳しい久代に優しい気持ちが持てず、人をうとみ、そんな自分に嫌悪する。
そういう少女の気持ちがていねいに描かれていて、これは中高生向きでは?とも感じたが、彼女がとても素直に成長していくので、すんなり自然に気持ちをなぞっていけた。

テルちゃん、いい子だねぇ。時にくじけたって、明るさは何よりの強さだよ。
愛情っていうのは甘やかしてやることではないけれど、甘えられる場所は必要だ。大人でも子どもでも。子ども時代に甘えられなかったおかあさんは、 久代や娘に甘えることでもう一度子供時代をやり直し、
大人になっていくのだろう。テルちゃん、大変だけれどね。彼女なら大丈夫だな。そんな気がする。
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2004年07月06日

スペース


スペース (創元クライム・クラブ)

スペース (創元クライム・クラブ)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2004/05/31
  • メディア: 単行本


「魔法飛行」に続く、駒子シリーズ3作目。
なので大人の女性へと一歩足を踏み入れようとしている駒子も登場するのだが、今回主に物語を引っ張っていくのは、駒子と同じ短大に通う双子姉妹の姉の方、まどか。

前半は、駒子が瀬尾さんに持ちかける謎の材料として長い手紙が続き、これがなんと言うか、まじめな人が無理しておもしろいことを言おうとしているようで、 うーんちょっと辛いかなーと感じていた。
加納さんの言い回しは時々、回りくどくて笑えない…と思うときがある。
もっとも私信というのは、そういうしょうもないもんではありますが。
ところが一転、まどかの物語が動き始めると、これはもう、良いのだ。
一生懸命カラを破って、自分の居場所を作ろうとするまどか。こういうのって共感できる。
話がうまく運びすぎるとも言えるけど、本当に運命としか言えない出会いや偶然があるのは知っているので、けっこう素直に読めた。
謎めいた瀬尾さん、彼の素顔も少しずつ明かされていくのかな。これからが楽しみ。
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2003年08月21日

コッペリア


コッペリア

コッペリア

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/07
  • メディア: 単行本


両親と養父母を失い、天才人形作家・如月まゆらの作る人形に魅せられた青年・了は、一目ぼれした人形そっくりな女性・聖に出会う。 小さな劇団の主演女優で、人形を演じることになっていた聖もまた、自分そっくりな人形と出会い、愕然とする。「人形」を軸に、作る者、 それを援助する者、崇拝する者、演じる者、それぞれの人生と思いが交差するミステリー。

前半は戦闘的で目新しく、後半はやっぱり加納さんだな、といった印象。 人間関係が入り組んでいてややこしく、一人一人はとても個性的で、 特に生きているような人形を作る天才人形作家というのが興味深かったのに、結局は恋愛がらみで終わってしまったのがもったいないなぁという気がする。
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2002年12月19日

虹の家のアリス


虹の家のアリス (本格ミステリ・マスターズ)

虹の家のアリス (本格ミステリ・マスターズ)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 単行本


「螺旋階段のアリス」に続くアリスシリーズ。 相変わらず暇な仁木探偵事務所に、安梨沙が伯母や以前関わりのあった人たちから仕事の以来を引っ張ってくる6話。   今回は、仁木の息子・周平や、安梨沙が身を寄せている娘・美佐子に関わる事件もあり、仁木の家族や安梨沙の子供の頃のことなどが少しずつ見えてきた感じだが、 謎解きという点ではいまいちかなぁ

それにしても加納さんの作品は、どうしようもない悪意や、善意の人が不幸な目にあうということがないので、安心して読めるのがうれしい。
『鏡の家のアリス』は、「これはもしかして…」という予想を裏切るスリルがあったし、表題の『虹の家のアリス』は、ほほえましい種明かしで一番好きな物語。
作品の後に、かなりのページを割いて加納作品についての評論と、加納さん自身へのインタビューがあり、これもなかなかおもしろかった。  小さな子を持つ母親の描写がとてもリアルなのは、やっぱりご自身の体験に基づくものだったのねーと納得した。
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2002年09月29日

掌の中の小鳥


掌の中の小鳥 (創元推理文庫)

掌の中の小鳥 (創元推理文庫)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 文庫


パーティ会場のカフェバーで、ひょんな偶然から出会った冬木圭介と穂村沙英と、彼らをめぐる人々の、甘酸っぱさとほのかな苦味ただよう連作短編集。

『掌の中の小鳥』 佐々木先輩とばったり再会した圭介は、かつて想いを寄せていたが先輩と結婚した容子が、絵をやめるきっかけとなった一枚の絵についての真相に気がつき、 やりきれない思いになる。 
そして義理で向かったパーティ会場のカフェバーで沙英と出会い、高校時代登校拒否していた彼女に、 学校に戻るきっかけを与えてくれた祖母の機知を知る。
『桜月夜』 「EGG STAND」というその店の女主人・泉さんとの意外な関わりと、沙英の語るある狂言誘拐の意外な関わりが見える物語。
『自転車泥棒』 沙英が歩道橋から転げ落ちた老人を助けたことと、自転車を盗られたこと、そして待ちぼうけをくった圭介が喫茶店で傘を盗られたこと、 それらが絡まりあうひとつの物語。
『できない相談』 久しぶりに会った幼なじみの武史と、その昔流行った「できる・できないゲーム」をやり、どうしても謎の解けない沙英に圭介が謎解きをする。
『エッグ・スタンド』 圭介が従兄弟の礼子に無理やり連れて行かれたお茶会で起こった指輪盗難事件と、かつての旧友「うそつきミチル」との出会い、 そしてその顛末の本当の意味を、泉さんが解いてみせる。

加納さんの物語には、無駄がとても少ない。 どの言葉ひとつ、しぐさひとつをとっても、重要な伏線だったり、その人物を形作る大きな要素だったりするからだ。 なので話をまとめるのが難しい。
ちょっと斜に構えているけれど、そんな自分に欠落感を持っている頭のいい圭介。
対して沙英は、生まじめだけれど引っ込み思案ではなく、素直で心のまま自分を表現できる、
まさに得がたい女性。 
日常のちょっとした謎、それを解いて現れるのは善意や思いやり。 加納さんの魅力的なところだ。
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2002年06月02日

ささらさや


ささらさや

ささらさや

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/09
  • メディア: 単行本


突然の事故で最愛の夫を失ったサヤは、夫の親兄弟に赤ん坊のユウ坊を取られまいと、佐々良という町の、伯母さんが残してくれた家に引っ越した。
見知らぬ町で乳児を抱えサヤは四苦八苦するが、本当に困った時や不思議な事件が起るたびに、
魂だけになった夫が、誰かの体を借りて助けに来てくれるのだった。
やがてサヤには、小さな事件を通して3人のお婆さんとエリカ親子という友達ができるが、
ついに夫の家族に居場所を突き止められてしまう。
 
サヤは、根はしっかりしてそうなのだが、気が弱くてバカをつくほどお人よし、悪意の前ではおろおろし、
死んでしまった夫を想ってはメソメソし、 自分は弱いと思い込んでしょっちゅう泣いてばかり。
子どももいるのに、そんなんで大丈夫?と思ってしまうけれど、育児に関しては、育児書を頼りに
そこまでがんばらなくてもというほど、一生懸命、正道を突き進んでいる。
まぁ最初の子は誰だって不安だし、手の抜きどころがわからないから夢中でやるもんだけど、
そうしてユウ坊が高熱を出すと、まだポロポロ泣いてしまう人なのだ。
これではダンナさんも、おちおち成仏できなくて当然である。
幸い、ダンナさんの力も借りながら、旅館の女将・お夏と、女学校時代の同級生久代、珠子、
そしてはっきり物を言うばかりに誤解されやすいエリカという友達もでき、やがては夫のいない空白を現実で埋めてゆけることに気づく。

この4人の、歯に衣をきせない、言いたい放題の応酬。 ポンポン飛び交う会話の面白いこと!
親しくなってもベッタリせず、でもいざという時は協力を惜しまない、いい友達だなぁと思う。
そういう人たちを惹きつけるだけのものが、サヤにはあったということかな。
「おばあちゃんの知恵袋」みたいな話もおもしろいし、電車内で泣き出したユウ坊をうるさがる男を
「エラソーに躾がどうとか言う手合いに限って、実際は奥さんに任せっ切りだったりするんだよね。
そんで子供が何か問題を起こすと、奥さんに『お前の責任だ』とか平気で言っちゃうの。」と切って捨てるエリカには、拍手喝采である。
まったくもって同意見。 子連れに冷たいオジサンは、とても多いのだ。
ついでに、階段やエスカレーターしかない建物で「ベビーカー禁止」というのを、「じゃぁどうしろって言うの?」と思いつづけてきた私は、 子連れで出かける大変さにいたく共感してしまった。
ともあれ、読後感は清々しい。 加納作品の中で、今のところ一番好きな物語だ。

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