2025年10月12日

 酒亭DARKNESS

酒亭DARKNESS (文春e-book) - 恩田 陸
酒亭DARKNESS (文春e-book) - 恩田 陸

場所も語り手も違う居酒屋の片隅で語られる、程よい怖さの奇妙な話。
よそ者ならではの高揚感と気軽な距離感が心地よく、各地の雰囲気も味わえて楽しかった。
やっぱりいいんだよねぇ、恩田陸の語り口は。

開いた裏口に絡み合う無言の視線がなんとも怖い『曇天の店』、淡い郷愁と取り帰りのつかない怖さの『昭和94年の横丁』が特に好み。
常に形を変え続ける川や風には、様々なものが混ざりやすいのかもしれないね。
横書きは少し読みにくかったけれど、締めくくりの『ムーン・リヴァー』もしみじみと優しく、良かった。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月20日

 鈍色幻視行

鈍色幻視行 (集英社文芸単行本) - 恩田陸
鈍色幻視行 (集英社文芸単行本) - 恩田陸

呪われた小説とその作者の謎を追う物語。
順番としては、先に出た本書の方から読むのが良いらしいが、本作中で『夜果つるところ』の最後に明かされる部分がわかってしまうので、私は先に『夜〜』を読んでいて良かったなーとは思いました。

たびたび映画化されようとし叶わなかった小説『夜果つるところ』。
そして身元どころか存在さえ不確かな謎の作者、飯合梓。
この小説に、作者に魅せられた関係者たちが描く謎解きのかたちは、それぞれの生き方と深くかかわっていて、小説の解釈は自分の人生を語ることでもあるようだ。
彼らは語り終えて清々しく、この旅で気づきを得た主人公夫婦の変化は、たぶんこれから。
飽きることなく堪能でき、一応の大団円にほっとした。

それにしてもタムラ氏、気になるよねぇ
瑪瑙のカフスリンク・・・どこかに繋がっている気もするんだが、これだけがもやもや。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月28日

 夜果つるところ

夜果つるところ (集英社文芸単行本) - 恩田陸
夜果つるところ (集英社文芸単行本) - 恩田陸

『鈍色幻視行』の作中作品という位置づけだが、本編をまだ読んでいないので普通に恩田作品として楽しみました。

かつて少女が、墜月荘という山深い娼館で暮らした日々の出来事をつづった物語。
自分の身元も人目を避ける理由もわからない少女、謎めいた3人の「母」、館を訪れる男たちのまとう空気が、どんどん不穏さを増していく。
そして物語の進む先が見えてきたとき、やはりあの事件に繋がるのかと、何とも言えない気持ちになった。
残酷で美しく、はかない、幻視のような物語でした。

切り口は全く違うけれど、『ねじの回転』もテーマはあの事件だったよね。
興味をひかれるものがあるらしい。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月30日

 愚かな薔薇

愚かな薔薇 - 恩田陸
愚かな薔薇 - 恩田陸

たたみかけるように繰り出される魅力的な謎と、想像を上書きし続ける展開、そして変わりゆく自分に迷いや恐れを抱きつつ、自らの意思で一歩を踏み出す少年少女たちのみずみずしい力強さ。
ごっつい厚さなのに、ぐいぐいと引き込まれ一気読みでした。
小さな町の伝統行事から時空を超えて広がり、未来への希望を感じさせてくれる結びも良かった。
とても楽しい読書でした。
これだから恩田陸はやめられない。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月26日

 灰の劇場

灰の劇場 - 恩田陸
灰の劇場 - 恩田陸

恩田作品にしては、入り込むのに時間のかかった一冊だった。

女性2人が橋から飛び降りたという三面記事が気になった作家、その記事を基にして書かれた、そしてその小説が舞台化される話という3つのパートから成る物語。
概要しかわからない女性2人が、どう生きてなぜそういう結末を選んだのか。
想像を巡らせ変わりゆく日々を過ごす中で作家が思い至ったのは、生と死は隣り合ったり裏表でさえ無く、日常と地続きなんだということなのではないか。

その境目に至る物語はそれぞれで、こうして描かれる女性2人の姿も、あったかもしれない一つの形なんだと思う。
彼女たちがそっとしておいてほしかったのか、語られたかったのか。
本当のところはわからないけれど。

砂の降り積もる情景は、鎮魂にふさわしい気がした。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月16日

 スキマワラシ

スキマワラシ (集英社文芸単行本) - 恩田陸
スキマワラシ (集英社文芸単行本) - 恩田陸

兄は引手コレクターという渋い趣味を持つ古道具屋、その手伝いをしている弟の散多は、
古い記憶を持つモノに触れるとその過去が見えるという特異体質を持っている。
ある古いタイルに見えた亡き両親との関わり、古い建物に現われる少女、やがて出会うべくして出会った縁…

次々と繋がり広がる謎に引き込まれ、心地よく引き回されました。
謎の答えは少しだけ、ふくらんだイメージだけが鮮やかで、多くの謎は思わせぶりの中。
恩田さんらしい幕切れですが、細部を突き詰めて解釈をひねり出すより、美しく少し怖い謎の心地よさを
楽しめばいいかなと。

何と言ってもね、この兄弟のお互いを尊重し合う距離というか空気感がいい。
彼らのあちこちへ興味の飛ぶ何気ない会話だけで、もう引き込まれてしまいます。
さらに彼らが導かれていく先々に展開する心象風景も、目に浮かぶように鮮やか。
古いものに新たな命を吹き込み、その先へ繋いでいくもの。
ハナちゃんはその役目を託されたのかもしれません。

いいなぁ恩田陸。やっぱりこういう感じが好き。
そう思った人、きっと多いよね。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月27日

 錆びた太陽

錆びた太陽 -
錆びた太陽 -

二十世紀半ばに起きた原発テロにより、日本は国土の約二割が立入制限区域となり、いつしかマルピーが存在するようになっていた。
ある日、制限区域を管理するボスたち人型ヒューマノイドのもとに、国税庁職員の女がやってくるという前代未聞の事態が起きる。

人の立ち入ることのできない大地、タンブルウイードが風に舞い、存在できるのは環境に耐えうる遺伝子を得たものだけ。
そして、マニュアルどおりの日々を過ごしていけるロボットたちがそこを守っている。
そんな荒涼とした風景のはずが、昭和ネタ満載のうえ謎の女・財護徳子は天然爆弾、ロボットさえも感化する。
コミカルで否応なく引き込まれます。

でも、最終的に手に負えないものに手を出してしまったという焦燥感みたいなものが、作者の感覚としてあるのかなと思う。
都合の悪い副産物は無かったことにするという、空恐ろしい予見。
『もはや、ニッポンはダメかもしれない』
言っちゃだめでしょそれはと思いつつ、少しの共感に恐怖する。
するすると読めてしまうけれど、根本にはコワイものが潜んでいる気がします。
それでいて、読後には何かしらの希望が持てるような。

ボスたちの活躍をもっと見てみたかったなぁ
マルピーたちがこの先どうなるのかも気になります。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月12日

 タマゴマジック

タマゴマジック -
タマゴマジック -

かつて地方紙で連載した『ブリキの卵』12編と少し不思議な話11編を、仙台をテーマにした小説2編ではさんだ、ちょっと変わったつくりの一冊。
『魔術師一九九九』は、かなり以前に『象と耳鳴り』の一編として読んでいるはずなのだが、20年近くも前とあって、自分の感想を読み返しても記憶にない。
椅子が無くなる話ね・・・机が消えるミステリもあったよなぁ、アレどうなったんだっけ?などと寄り道思考しつつ、二度おいしい思いをさせてもらいました。

SFやホラー風だったり、一応オチのつく推理物だったり、多様な話なのにどこか空気が似ている。
それも何となくうすら寒くなるような、推し量って答えが出たとしても、結局アレは何だったんでしょうねぇと不安を残すような感じ。
さくっと読める短さですが、個人的には大変好みな、独特の雰囲気は味わえるかと。

posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月04日

 終わりなき夜に生まれつく

終りなき夜に生れつく -
終りなき夜に生れつく -

『夜の底は柔らかな幻』の過去編。

ボランティア医師団としてアフリカの集落を訪れていたみつきと軍勇司、そして傭兵となった青柳が巻き込まれた事件 『砂の夜』
遡って軍勇司と葛城晃、そして藤代有一との奇妙な関係が始まった、医学部に入学したての頃の話 『夜のふたつの貌』
さらに在学中の葛城へ入国管理官が接触、適性調査のキャンプで神山と再会する 『夜間飛行』
ただ生きていくだけの日々を倦んでいた神山が、生き方を決めるきっかけとなった 『終わりなき夜に生まれつく』
という4編。

山でのあの夜を生き残り下山した少年たちは、消えることのない闇を抱えながら、それぞれの道を選び取っていく。
戦いの場で自分を解放する者、闇に抗おうとする者、受け入れると決めた者。
葛城の印象がずいぶん違うんだよね。
どうしてあの残虐な管理官ができあがったものか・・・

おねえ言葉で性格めっちゃ男前な軍の主役級キャラは顕在。好みです。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月01日

 失われた地図

失われた地図 -
失われた地図 -

負の記憶を持つ場所に突如発生する「裂け目」
それを封じるため奔走する一族の物語。

「蜜蜂と遠雷」の真っ当さとは正反対の、不穏で、思わせぶりで、いきなり本編始まって盛り上がってきたかと思いきや唐突に終わる感覚。
あぁこれだわ、恩田さんだーと妙に納得してしまう。
グンカというのが笑えるんだか気持ち悪いんだか、ちょっとイメージしにくいんだが、好きなタイプの一編ではあります。
まぁ少々こじんまりとした印象ではあるので、あの子供から物語が続き広がったらいいなとは思う。

直木賞受賞第一作なんていう煽り文句もあって、「蜜蜂と遠雷」から興味を持った人からするとナニコレーと思われるかもですが、いろいろなカラーがあるので、あれこれ試してみていただきたいなぁと思うわけです。
装丁も凝っていてすてき。
posted by てまり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 恩田 陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする