2019年01月21日

 風と行く者

軽装版 風と行く者 (軽装版 偕成社ポッシュ)
軽装版 風と行く者 (軽装版 偕成社ポッシュ)

『天と地の守り人』の後、バルサは市場でサダン・タラム〈風の楽人〉と20年ぶりに再会し、なぜか命を狙われる隊の護衛を請け負うことに。
それはまだ拙かった過去の自分、そしてジグロとの思い出を呼び起こす旅となった。

バルサはタンダと穏やかな日々を過ごしつつも、やはり身に染みこんだ生き方を変えることはできないんだな、そういえばジグロが逝ってずいぶんになるんだなぁ・・・などと思い出し、懐かしく読みました。
ジグロがバルサに生きぬくための知恵と力を教え込む様は鬼気迫るものがあります。
お互いを失うことを恐れ、常に神経を研ぎ澄ます場面の緊張感は胸が痛くなるほど。
けれど厳しさの裏に、不器用で愛情深いまなざしがひしひしと伝わってくるのです。
サダン・タラムと同行した日々を彩る色と匂いと音もまた、鮮やか。

さらに、異人種というだけで疑い憎しみあう、数百年に及ぶ不幸な積み重ねが、物語の核でもあります。
自らの力で活路を見出そうとする若い当主や頭たちは、託された願いを明るい未来へ繋げてほしい。
失ってから気づくことも多いけれど、大切な人の言葉や思いは自分の中にあるのだから。
そしてそれが、受け継ぎ受け渡されてゆくことの幸せを思う。

相変わらず、しみじみと胸に満ちる物語。 またいつか再会したいな。
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2008年04月29日

流れ行く者


流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2008/04/15
  • メディア: 単行本



バルサとタンダの子供時代を描いた、守り人番外編。

追っ手から逃れ、故郷から逃げ出して7年。
ジグロと共に酒場や隊商の用心棒として日銭を稼ぎながら、街から街へと渡り旅を続ける13歳のバルサ。
カンバル王医の娘として生まれながら一転、7年の荒々しい月日は彼女を常に神経を研ぎ澄まし、孤独に耐え、ひとりで生きるための術を身につけつつある たくましい少女へと変えた。
本編のバルサはすでに一人前の武人で、王子を庇護する立場だったけれどかつてジグロに守り育てられたこういう過去が、のちのチャグムとの関係に大きく影響したのだろうね。
相手を殺すことをためらったり油断したり、半端な情けをかけようとすればすなわちそれが自分の命取りになる。
実際に自分の手で人の命を奪う衝撃に慟哭するバルサが痛ましい。
闘い続け、ひとりで生きる力を身につけるごとに、失っていったものも多かったのだろう。
それでも彼女は自分の生き方を肯定する。
聡明な彼女のこと、命がけで自分を守ろうとしてくれるジグロが、巻き添えで道を外したという贖罪の念もあったに違いない。
未熟な彼女に、生きる術を容赦なく体で覚えこませながら、あくまで武人としての誇りを失わないジグロがそばにいたから、バルサはあのような人になったのだなぁとしみじみ思う。

そしてまた、彼女たちには拠り所があった。
師となるトロガイおばさん、バルサを待ちわびるタンダ。
バルサを少女として気づかい、愛情をかけてくれる、タンダの家族。
家族に囲まれ、里に根付いた暮らしをしながら、ここではないどこかに惹かれるタンダもまた、はみ出し者のひとりだったのだろう。
ジグロの留守中、はみ出し者同士、兄弟のように稲刈りや魚獲りにはしゃぐふたり。
この先の壮絶な道を思うと、切ないほど鮮やかな子供時代が胸に迫る。
彼らにもそういう時があって良かった。

本編は終わってしまったけれど、そして彼らは多くを代償に安らかな時を得たけれど、
物語のあちこちに、まだ掘り下げてほしい物語がたくさん眠っている気がする。
そして余談だけど、やっぱり仁木さんの絵は良いね。
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2007年03月18日

天と地の守り人 第三部


天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)

天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本



病床にあったタルシュ帝国王が、次期国王の選定を右腕である太陽宰相アイオルにゆだねその生を閉じる頃、ロタとカンバルの援軍を率いたチャグムは、 バルサとともに新ヨゴ皇国に帰ってきた。
故郷を離れて2年、迫りつつあるタルシュ軍を討ち、ナユグに訪れた春の影響で、都を押し流し何万もの民が命を落とすであろう大天災の予兆を知らせるためチャグムは、 2度も自分を亡き者にしようとした父と向き合うため都に向かう。
そしていつ雪崩が起こるかわからない状況の中、バルサは戦地に赴いたタンダの行方を捜しに行き、
呪術師トロガイは全ての人々に警告を発するため、かつて師が命と引きかえに行った大呪術「金の蜘蛛」の術 に挑む。

2年ほど前に「精霊の守り人」を手にして以来、楽しみに読み続けてきたシリーズの最終章。
読んでしまうのが惜しくて延ばし延ばしにした末、とうとう読み終えてしまったこの本も、シリーズ中のどの章も、変わることない感動と胸の痛みをもたらしてくれた。
現世と異界の重なり合う世界に生まれたチャグムは、天の神の血筋である王家に生まれながら、その異質さゆえ父である王からも疎まれ、苦難の道を歩まなければならなかった。
けれど父の代わりに、バルサをはじめ多くの人が、チャグムの何よりまっすぐな気持ちに惹かれ、見守り、手をさしのべてくれた。
「正しい」とは何だろう?と、ずっと考えさせられてきた。
チャグムに対し冷淡であり続けた帝もまた、天の神の血筋として君臨することがすなわち国の安泰と信じて生きてきただけのこと。決して相容れることのない父に対し、血を見ることなく決別できたことに何よりほっとしつつ、チャグムは胸中でどれほど慟哭していたことかと思う。
母である妃は、皇子として生まれた不幸を嘆いたけれど、チャグムは過酷な運命を負ったからこそ、父や、それ以前の帝が見ることのなかった世界を見て、交わることのなかった人々の姿を知ることができた。そうした中でチャグムは、多くの人を統べるための力をはぐくんだのだと思う。
生きとし生けるものすべてが関わりながら、移り変わっていく。
人はその中の小さなひとつの存在に過ぎない。
その小さな存在が、迷い、悩み、助けを得ながら、進むべき道を選び取ってゆく。
バルサも、穏やかな暮らしの心地よさに慣れていくことだろう。
たくさんの痛みを心の片隅に、生きるというのはそういうことだよなぁと、晴れ晴れとした気持ちで思う。
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2007年02月18日

天と地の守り人 第二部


天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33)

天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 単行本



タルシュのハザール王子の密偵に追われ、ロタ国王弟イーハンの命を受けたカシャルに助けられながら、バルサとともにカンバルの王都をめざすチャグム。思いがけないカンバルの内通者などの困難を乗り越え、チャグムはようやくカンバル国王ラダールとの同盟にこぎつける。
事態がひっ迫する中さらに、ナユグが何百年かに一度の春を迎えようとしていた。
チャグムは、雪崩と土砂崩れによる甚大な被害が予想される新ヨゴ皇国へ向かう。

バルサと会うまで、たったひとりで数々の苦難を乗り越えてきたチャグム。
様々な思いや利害を抱えた人々全てにとって、誰も傷つかず、誰にとっても幸福な解決などというのは理想に過ぎないのかもしれない。けれど、幼い頃から一貫してそういう理想を心からの願いとして抱き続けてきたチャグムには、希望を託してみたいと人に思わせられる力が蓄えられてきたのだと思う。
人の思いに敏感で、目的を遂行するためには体面も投げ打つチャグムはもう、純粋なだけの少年ではない。それが誇らしくもあり、痛ましくもある。
戦が始まるまで、もうひと月もない。温められた大地は、いつ奔流となって襲い来るかもしれない。
戦地のタンダは無事、戻ってこられるのか。かつて国を追われ、命をも狙われたチャグムが、父である帝とどう対するのか、帝は父としてチャグムをどう受け止めるのか。すべての決着は次巻、いよいよだ。
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2006年12月15日

獣の奏者 I 闘蛇編/II 王獣編

獣の奏者 I 闘蛇編 [単行本] / 上橋 菜穂子 (著); 講談社 (刊)獣の奏者 II 王獣編 [単行本] / 上橋 菜穂子 (著); 講談社 (刊)


戦闘用の獣である闘蛇が大量に死んだ責めを負い、獣ノ医術師だった母が処刑される時、十歳のエリンは母の操る闘蛇によって遠国へ運ばれた。そして蜂飼いのジュウンに助けられ穏やかな暮らしが続いたが、やがて山中で出会った王獣に心惹かれ、王獣の医術師になることをめざす。

母のように深い知識で獣を助けるものになりたい。
獣を力で支配するのではなく、ともに歩めるものになりたい。
自分の気持ちのまま獣に接した彼女の成し遂げたことは、やがて争いの火種を抱える国にとって大きな力となってしまう。
わからないものに対する恐怖。
それをさらなる恐怖でねじ伏せていくのか、歩み寄って距離を縮めるのか。
今もなお人が迷い続けている問いのように思える。

人が良かれ、正しいと思うことは、立ち位置や考え方によってそれぞれ。
ならばそれも、深く考え、自分で選び取っていくしかない。
エリンもまた、獣と自分に問い続けながら生きてゆくのだろう。
どうぞこの少女の先が、明るいものでありますように。そう願わずにはいられない。

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2006年12月07日

天と地の守り人 第一部

天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド) [単行本] / 上橋 菜穂子 (著); 二木 真希子 (イラスト); 偕成社 (刊)

サンガルからロタ王国へ、故国を救うため命がけで奔走するチャグム。
しかしそれぞれの国情は複雑だった。
救うべき新ヨゴ皇国は他国に助けを求めることなく国を閉ざし、ヨゴとカンバルの上層部には、国情に危機感をつのらせタルシュと通じるものがいた。そしてチャグムが頼みとしていたロタ王国は、タルシュと通じた南部の大領主たちによって、国を二分する戦いが起きようとしている。
一方タルシュ内部でも、やせつつある国土と枝国による内乱の恐れに加え、病床の皇帝になりかわるため王子兄弟が抗争を繰り広げており、各国の内情はさらに複雑だった。
チャグムの行方を追うバルサは、タルシュのラウル王子配下でありながらチャグムを案じる風変わりな密偵ヒュウゴからチャグムへの示唆を携えて、ロタ国王弟イーハンのもとをめざす。

自分の国や家族を守りたい。その思いは同じなのに、戦うことでしか解決できないのは悲しいことだ。
だからこそ、チャグムと向き合った人はみな、統べるために必要な冷徹さのなさを危ぶみながらも、その理想にかける一途さに望みをたくしてみたくなるのだろう。
心根を表す優しい面立ちに、強い意志の力を宿したひとみを持つチャグム、16歳。
守ろうとしている自分の国にさえ、戻れる場所はない。それでも、心の底を見すえてバルサとともに歩み出す。もうね、胸がいっぱいいっぱいになります。
草兵として前線に駆り出されたタンダと、アスラたちが感じる大きな災いの予兆も気になる。
チャグムたちの行く先を、祈るような思いで見守るしかないのね。

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2005年10月11日

狐笛のかなた


狐笛のかなた

狐笛のかなた

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 理論社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 単行本



母から受け継いだ「聞き耳」の才を持つ小夜。
かつて小夜に命を助けられ、今は敵対する呪者の使い魔となっている霊狐・野火。
そして幽閉の身から一転、総領の息子として表舞台に出されることになった小春丸。
ふたつの国の止むことなき領地争いの渦中に巻き込まれてゆく彼らの物語。

望んで得たわけではない特殊な才能や境遇に翻弄されながら、自分の意思で生きる道を選び取り大人になってゆく少年少女たち。
こういうまっとうなわかりやすい物語にしか感動できなくなったのかと複雑な思いを抱きつつも、野火の思いの強さ、 そして迷いながらそれに応えようと手を伸ばす小夜のけなげさに、心をつかまれてしまった。
自分にとって何が一番大切かを知っている者ほど強いものはない。
野火は小夜を守る、と言った。自分の命がある限り。
どんな物語の中であっても、何度出くわしても、この言葉の重みには打たれる。

恐れで人を縛っても、いつまでも繋ぎとめておけるわけではない。孤独から逃れたければ、自ら強くなるしかない。 子どもが考えるほど世の中は単純じゃないというけれど、生きていくのに本当に大事なことはそうたくさんはない。
欲のぶつかり合いから始まった争いは憎しみを生み、それがさらに争いを大きくしていく。
憎しみと怨嗟の果てにあるものは、双方の灰燼だということに領主は気づいたが、 それに比べ今現在も絶えることのない世界中の争いを思い、心が痛む。

春満開の野を駆け巡る小夜たちの姿が、まざまざと目に浮かぶ。幸せな気持ちで読み終えた。
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2005年09月08日

蒼路の旅人


蒼路の旅人 (偕成社ワンダーランド (31))

蒼路の旅人 (偕成社ワンダーランド (31))

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2005/04/23
  • メディア: 単行本



サンガル王から新ヨゴ皇国に援軍を求める親書が届き、国王はチャグムの母方の祖父トーサ大提督を援軍に差し向けることにした。 祖父の失脚をも狙う父国王に反発したチャグムは、罠と知りつつ祖父の舟に乗り込み、二度と帰れぬ故郷を後にした。

バルサとともに他国を回り、生きる術を学んだ。サンガル王国で様々な王家のありようを知った。
これまで宮中の外で経験してきた多くのことが、チャグムをひとりの人間として大きく、魅力的に成長させたんだなぁと思う。 そしてそのことが、周りの大人、時には敵をも動かす。
欲もなく、他者をねじふせる力もほしがらないチャグムは、くみしやすい相手と侮られるかもしれない。
確かにチャグムはまだ、したたかというには幼すぎる。 でも、彼はまだ成長し続けている。
強大な大国であるタルシュ帝国も、その内にいくつもの火種を抱えているようだ。

チャグム15歳。父親に命を狙われる皇子という枷を、どうはねかえしていくのか。
新ヨゴ皇国は、このままタルシュ帝国との争いにのみこまれてゆくのか。
自分の意思で先の見えない新たな道へ泳ぎ出したチャグムに、ジンと同じく、祈るような思いを抱いた。
ここからまた、大きな物語が始まるんだなぁ。とても楽しみだ。
この巻から描かれるようになった、佐竹さんの絵もすてき。
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2005年08月23日

神の守り人 来訪編・帰還編


神の守り人<来訪編> (偕成社ワンダーランド)

神の守り人<来訪編> (偕成社ワンダーランド)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2003/01/22
  • メディア: 単行本

神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド)

神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2003/01/22
  • メディア: 単行本



タンダとともに出かけた市で、人買いから兄妹・チキサとアスラを助け出したバルサは、アスラが神様と呼ぶ恐ろしい力を持っていることで、利用され、 もしくは命を狙われようとしていることを知る。
残虐な神サーダ・タルハマヤを封じ築いたとされるロタ国の建国に関わる秘密に、貧富の差が激しいロタ国南部と北部の確執、 虐げられるタルの人々といった様々な思惑が絡むなか、バルサはアスラを救おうとして闘う。

幼い少女に母が降ろした大いなる力。
善か悪かというのは、人それぞれの立場で違ってしまうという難しさを思わされた。
母は娘と不幸な自分たち一族のために喜び、アスラ自身も自分に力があることを誇る。
けれどそれは意に沿わない人を虐殺する恐ろしい力で、大いなる力をアスラごと滅しようとするスファルも、父を見限って一族のために力を使おうとするシハナもまた、 正義は自分にあると考えている。
そんな中、アスラ自身のことを一番思いやり、守ろうとしたのがバルサだった。
穏やかな子供時代を過ごせなかったバルサにとって、守るものがいない子どもほど、放ってはおけないのだろう。この豊かな母性が、 闘士としての彼女とはまた別の魅力なのだ。
彼女とて、安らぎだけでは物足りなく感じ、闘いを求めてしまう自分が内にいることを知っている。
誰しも心のうちにあるいろいろなものを折り合いをつけ、時にはねじ伏せて、「自分」を確立してゆくのだ。過酷な運命にみまわれたアスラにも、 平安が訪れるといいなと思う。
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2005年08月03日

虚空の旅人


虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド)

虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 単行本



「守り人」外伝。ヤタルーシ海のサンガル王国新王の即位の儀に招かれた新ヨゴ皇国では、皇太子チャグムをシュガとともに送り出した。ところがそこでは、 南の大陸タルシャ帝国がひそかに侵略を図っており、サンガル王国の支配下にある島々の長が反乱を企てていた。

海を抱く異国で、臣下を切り捨てることのできないタルサン王子、その弟を命がけで守ろうとする王族の次姉、国益のためには身内さえ見殺しにする長姉らと関わりながら、 皇太子としての自分のありかたを模索するチャグム。
国益のためとはいえ、むざむざ人が傷つけられたり命を落としたりすることを良しとしないチャグムは、タルサンと同じく、 幼く人が良すぎ賢明でないかもしれない。
けれどそういう自分の危うさを知り、それでもそういう風にしか生きられないというチャグムは、 結局異国の皇族や、そばに付き添うシュガに影響を与えていく。
チャグムもまた、全く価値観の違う世界に身を置いて、自分の行く道を確信したのだろう。
理想を追い、そのための努力は惜しまないチャグムの先が楽しみだ。
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