![金色の野辺に唄う [単行本] / あさの あつこ (著); 小学館 (刊) 金色の野辺に唄う [単行本] / あさの あつこ (著); 小学館 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41SqcaokNPL._SL160_.jpg)
穏やかに死を迎える老女と、そこに立ち会う家族の物語。
ときどき、死に囚われることがある。
痛いとか苦しい思いをするのは嫌だな、できれば眠るように死ねたらいいな、でも病院のベッドで死ぬことになるかもしれないな・・・なんて。
だから、ここに登場する大おばあちゃんの死んでゆく様は、とてもいいなと思った。
躍動する命は美しい。
己に向かい、己の望む姿に向かい、闘う命にも打たれる。
それでも、ただ静かにあるだけの命もまた、いとおしい。
好きな同級生に比べ、自分の凡庸さに打ちひしがれる少年。
穏やかな父のもとに後妻として来た継母。
人の上に立つ風格と容姿に恵まれ、けれど愛情に焦がれ続けた祖母。
美しすぎる娘を産んだことで夫に疑われ続けてきた曾祖母。
そんな曾祖母に思いがけず救われた青年。
大おばあちゃんの、穏やかで包み込むような人柄が温かい。
「珠を持っている」のは、誰より彼女なんだと思う。
ためらう背をぽんと押してくれる、温かな手の持ち主。
そうなるまでに、大おばあちゃんにもたくさんの葛藤や慟哭の日々が
あったのだろう。
年を重ねて何物かを得るためには、ぎりぎりと歯噛みしつつも高みを仰ぎ、過ちにうろたえ、思うに任せぬことに打ちのめされつつも、じたばたと生きていくしかないんだな。
喪われることを悼み、秋の黄金色の中を送る情景が、とても美しい。
たとえ涙は流れても、そういうふうに送られたい。
そう送られるように、生きていたい。