2026年01月20日

 エレベーターのボタンを全部押さないでください

エレベーターのボタンを全部押さないでください (ホーム社) - 川内有緒
エレベーターのボタンを全部押さないでください (ホーム社) - 川内有緒

タイトルに惹かれてみたら、『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』作者、有尾さんのエッセイでした。
有緒さん自身の生い立ちや何をどう選択して生きてきたのか、といった生身に近い部分に触れるにつけ、ひたすら、はぁーすごいなと。
私ができないことの言い訳にしてきたあれこれを、足かせだとさえ思わず身軽にどこへでも飛び越えていく彼女の行動力には、驚かされるばかり。
ハラハラしたりしみじみと思いを深めたり、私の人生では経験しえなかった旅をさせてもらった気分でした。
親目線の話は少し柔らかく温かいのも、すてき。
気になるテーマが多い中、行旅死亡人の話は次の宿題になりそうです。
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2025年09月01日

 奇のくに風土記

奇のくに風土記 - 木内 昇
奇のくに風土記 - 木内 昇

草花とは自然と語らい心地よく過ごせるのに、人との関りは苦手な十兵衛。
後に本草学者となる少年が、師匠や友人、時には人ならざる者の助けも得ながら、人としても変わりつつ、好きな道を邁進していく物語。

欲もなく、ただ好きなことを好きなだけ突き詰めている十兵衛は、妖や自然に近いところにいるようでいて怖れを忘れず、とても幸せそう。
まるで静謐な山の中にいるような瑞々しい臨場感に、思わずもれる心からの「美っついのう」には、こちらまでため息を誘われます。
大いなる自然の中で、人の営みなどささやかだけれど、生きて死んでいくことそれぞれがかけがえのないものだと改めて思うのです。
良い物語でした。
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2024年10月07日

 深淵のテレパス

深淵のテレパス - 上條 一輝
深淵のテレパス - 上條 一輝

これは好きになりそうだなと思っていたら、本当に好みの、正統派タイプのホラーでした。

臭いや音による感覚的な怖さ、背後にある残酷な過去、正解にたどり着くか恐怖に追いつかれるのが早いかのハラハラ感、安心させてくれたあとのお約束・・・いいですねぇ。
そして何より晴子さんが魅力的。
あしや超常現象調査の面々も謎を残しているし、続編を期待します。
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2024年07月16日

 かわいないで

かわいないで (文春e-book) - 加納 愛子
かわいないで (文春e-book) - 加納 愛子

劇場に勤めるお笑い好き女性の話と、女子高校生の微妙な距離感がリアルな話の2編。
前編は、芸人自身ではなく劇場関係者という視点が面白かったが、やはり後編の表題作が好き。
脳内うるさいタイプって、何ですのん。
考え過ぎちゃう小心者のもだもだが、微笑ましくて仕方ない。
関西弁のテンポとかニュアンスがまた、良いのです。
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2023年12月19日

 をんごく

をんごく (角川書店単行本) - 北沢 陶
をんごく (角川書店単行本) - 北沢 陶

横溝正史ミステリ&ホラー大賞ということで、気になった一冊。
これは大当たりでした。読みやすいのにちゃんと怖い。そして愉快要素もある。
大正時代の大阪商人街が舞台、柔らかな大阪弁が人とも化け物ともつかぬ者たちの世界観によく合っていました。

妻の死を受け入れがたい壮一郎が、思いがけない形で人ならざる者と謎を追うミステリであり、謎の着地点はとんでもないホラー。
けれど全編を通して、壮一郎の妻への迷える思いが切なく、エリマキ自身の己を問う葛藤などあり、情緒的にも引き込まれました。
エリマキにしろ、やり手婆さんのような巫女にしろ、どこか憎めない存在で面白かった。
怖いのはやはり、人の念ってことでしょうかね。
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2023年06月05日

 目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

目の見えない白鳥さんとアートを見にいく (集英社インターナショナル) - 川内有緒
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく (集英社インターナショナル) - 川内有緒

意味深なタイトルに作者同様、触るとか聞くとか?見る以外のナニカを使って「見る」ということ?という程度の発想しか湧かなかった。
読み終えても、「見える」私には「見たことがない」白鳥さんがアートを鑑賞してどんなものを受け取っているのか、わからない。
けれど見える見えないに関わらず、同じものを見て体験しても、受けとめ方はそれぞれなのだし、その当たり前のことが面白いのかも。
正直、美術館で作品を前にあれこれ話し合うグループは苦手だったのだが、見ているものを言葉にすることで、思いがけない発見があったり理解が深まることもあるんだなぁと気づかされた。

そして何より、アートの概念が変わった。
作者をはじめ登場するのがとてもフットワーク軽くパワフルな人揃いなので圧倒されてしまうのだが、これがアート?と思うような数々の体験に、知らずと思い込みや偏見に縛られていたんだなぁと目を開かせられた思い。

わからないから面白い。
そんなふうに頭も心もやわらかでいたいものです。
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2023年03月09日

 怪談忌中録 煙仏

怪談忌中録 煙仏 (竹書房怪談文庫 HO 474) - 下駄 華緒
怪談忌中録 煙仏 (竹書房怪談文庫 HO 474) - 下駄 華緒

火葬場職員や葬儀社勤務経験のある筆者が語る、不可思議な話。
実話怪談の動画を拝見したこともあり、覚えのある話もちらほらでした。
しかし普段足を踏み入れることなく、興味をもつこともためらわれるような火葬場や葬儀に関わる話はやはり、とても興味深かった。
そして真摯にそういう仕事についておられる方々にも、頭が下がりました。

人の姿から骨になる、その最後に立ち会う場なのだから、きれいごとだけでは済まない現実があるよね。
ということに今更ながら思い至り、ひやりとしました。
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2023年02月21日

 密室黄金時代の殺人

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫) - 鴨崎暖炉
密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫) - 鴨崎暖炉

密室と青春と、ミステリ愛と。
雪に閉ざされた館というオーソドックスな設定から繰り出されるトリックの数々に、本格いまだ健在とうれしくなりました。
軽く読めるのでパズルみたいだなぁという印象もありつつ、キャラクターが個性的で楽しめました。

まぁでも続編は・・・思案中。
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2022年05月07日

 四十九夜 地獄蝶

怪談四十九夜 地獄蝶 (竹書房怪談文庫 HO 523) - 黒木 あるじ, 我妻 俊樹, 小田 イ輔, 葛西 俊和, 郷内 心瞳, しのはら史絵, 渋川 紀秀, 朱雀門 出, つくね乱蔵, 冨士 玉目, 黒木 あるじ
怪談四十九夜 地獄蝶 (竹書房怪談文庫 HO 523) - 黒木 あるじ, 我妻 俊樹, 小田 イ輔, 葛西 俊和, 郷内 心瞳, しのはら史絵, 渋川 紀秀, 朱雀門 出, つくね乱蔵, 冨士 玉目, 黒木 あるじ

絶賛、逃避的読書続行中につき手にしたのは、10人の語り手による実話怪談。

こうしてみると好みの怖さというのはほぼ、理由がわからない、説明のつかない怖さに惹かれるように思う。
ヒヨコ頭の子供を父親がバットで殴り倒すだとか、ある人物はどう描いても顔が黒丸になってしまうとか、結果何をどう被害を受けたわけでもないのに、ただ事では無いことだけはわかる。
一番無残だったのは、その家で暮らすと必ず子供が死ぬ家。
わからない何かに対して、高をくくってはいけないという戒めか。
しきたりというのは、意味がないように見えても実は試行錯誤の末に残された答え、なのかもしれない。
それが正解なのかどうかはいざ知らず。
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2022年04月18日

 実話怪談 玄室

実話怪談 玄室 (竹書房怪談文庫) - 神沼三平太, 若本衣織
実話怪談 玄室 (竹書房怪談文庫) - 神沼三平太, 若本衣織

怖いという以上に気味が悪いというか、ヒトコワの嫌な話が多かった。
いつも一緒にいる家族、信頼する相手の豹変、けれど何事も無かったかのように日常は続いていく。
これは怖い・・・

夕方以降のインターホンに対する厳格なルール『夜の訪問者』
祖父の通夜でのできごと『閉めておいてね』
オタ活女性を脅かした穏やかな母の別の顔『ポスター』 
廊下の奥にビスケットを供える叔母の『ビスケットかりかり』
特にと考え並べてみればどれもこれも。
現象も怖いがその語りにゾッとする。

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