2021年10月23日

 パラダイス・ガーデンの喪失

パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎市シリーズ - 若竹 七海
パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎市シリーズ - 若竹 七海

親から受け継いだ庭園をお披露目しつつ穏やかに暮らしていた日々が、ある日突然現れた
見知らぬ老女の自殺死体によって一変した。
葉崎市の〈パラダイス・ガーデン〉をめぐる人々の謎が絡み合う物語。

モチーフとなるパッチワークそのままの印象。
欲、憎悪、思い込み、嘘と様々な端切れの組み合わせで誘拐や詐欺、殺人事件といった模様ができ、さらにその合わせ方によっては全く違うパターンにも。
綿密に組み立てられた物語で、お見事〜なのは間違いないが、まぁややこしかった。
右往左往させられつつそれでも読んでしまうのは、毒持ちだけど憎めない、変わり者だがやり手というような、登場人物の魅力も大きいかと。特に二村警部補とかね。
そして最後の最後で落とすあたり、まさに若竹流です。

ちなみに本作はコロナ禍のリアルタイムな背景だったけれど、そんなこともあったなーと思える時が来ることを願わずにはいられません。
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2019年02月08日

 錆びた滑車

錆びた滑車 (文春文庫)
錆びた滑車 (文春文庫)

素行調査中の老女のケンカに巻き込まれ病院に運ばれた葉村は、ケンカ相手青沼ミツエのアパートに住むことになり、やがてミツエの孫・ヒロトが交通事故で失った記憶を探る手伝いをすることになる。

寝不足で寒さに震え、懐具合も苦しくて満身創痍。
活躍というには痛々しいほどですが、大立ち回りも勇ましく、笑いあり涙あり、人としての温かさと矜持を備えた葉村が魅力的です。
謎解きの面白さも楽しめたけど、ヒロトとミツエさんがけっこうお気に入りだったので、ちょっと寂しい気も。
シェアハウスの面々と別れ、また新たな人間関係ができるのかな。楽しみです。
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2015年05月24日

 さよならの手口

さよならの手口 (文春文庫) -
さよならの手口 (文春文庫) -

実にお久しぶりのお目見えだった『暗い越流』に続き、『悪いうさぎ』以来13年ぶりだという葉村探偵の長編。
これだけ間が空いていると、おもしろかったなぁという印象以外、何も憶えていないのだけれど、そんなことは全く問題なく楽しめました。

アラフォーにしてミステリ専門書店のアルバイト生活、でも事件は葉村を放っておかない。
探偵休業中にも関わらず白骨死体を見つけてしまい、そこからある失踪事件の依頼を受ける羽目に。

物語が進むにつれ、謎が謎を呼び、枝分かれした先に別の物語と事件。
そうして次々とたぐり寄せられた謎がすべて回収されていく快感が、たまりません。
何より葉村というキャラクターが魅力的。
若くもない女が独りで生きていくことは、時にかなり厳しい状況に追い込まれもするのだけど、それをユーモアでくるんでしまうたくましさ。
変わった性癖や特殊能力もない、いわゆる普通の人なのに、処世に長けた大人の魅力があります。
傷や不遇を引き寄せることに関しては、普通じゃないレベルですが。
脇役の造形も巧み。さすがです。

おまけにミステリへの興味もかき立ててくれ、あとがきまでおいしい。
文庫ならではの贅沢ですね。
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2014年11月02日

 暗い越流

暗い越流 -
暗い越流 -

心霊スポットとなっている館に葉村が遺骨を捜しに行く 『蠅男』
死刑囚への手紙から明らかになる事件 『暗い越流』
死亡で明るみになった雑誌編集長の素顔 『幸せの家』
「聖母の庭」と呼ばれる教会に立てこもった男 『凶酔』
葉村が遺産整理のバイトで開かずの金庫に関わってしまった 『道楽者の金庫』

という葉村探偵もの2編、他3編の短編集。

表題の『暗い越流』はアンソロジーで既読だったが、それ以外は本当にお久しぶりの若竹作品。
錬られた物語性と切れの良さ、そして何より一瞬で寒気に襲われるような結末は、若竹作品の醍醐味でしょう。
ごく普通に見える人の内に秘めた悪意、魔がさす瞬間に触れるとき、この怖さは癖になります。
葉村探偵もの、古いところから読みかえしてみようかな。
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2007年03月03日

 ぼくのミステリな日常

ぼくのミステリな日常 (創元推理文庫) [文庫] / 若竹 七海 (著); 東京創元社 (刊)

社内報担当者となったOL若竹七海が、そこに載せる小説を大学時代の先輩に依頼するが、代わりに匿名作家を紹介される。
月に一度、12編の短編小説が掲載されたのち、若竹はある意図を持って匿名作家に会うのだが・・・という、驚くべきデビュー作。

匿名作家である”ぼく”の、日常のひとコマ、ちょっと不思議なできごとと謎解きが、小説仕立てになっていて、それだけでもおもしろかった。 が、それが実は大きな謎解きの元になっていたという仕組み。
何の繋がりもなく、ぽつぽつと綴られた短編だと思い込んでいただけに、二重の謎と、さらに続くどんでん返しにびっくり。
しかもトリックにこだわるだけじゃなく、その語りも楽しい。やってくれますね〜。
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2006年09月09日

 ヴィラ・マグノリアの殺人


ヴィラ・マグノリアの殺人 (カッパ・ノベルス)

ヴィラ・マグノリアの殺人 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


海岸沿いの閑静な住宅地ヴィラ・葉崎マグノリアで、見知らぬ男の死体が発見された。
男の身元と犯人探しの過程で、ヴィラ・マグノリアの住人の複雑な人間関係が浮き彫りになる。
トラブルメーカーの主婦をはじめ個性的な住人の面々が、殺人という重大な事件を前にしても、どこかこっけいに描かれていて、単純に犯人探しを楽しめる。
しかしさすがに若竹さん、正解は単純じゃないし、やれやれと思ってからどきっとする一押し。
これが彼女の味なのね。
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2004年10月12日

 スクランブル


スクランブル (集英社文庫)

スクランブル (集英社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 文庫


系列小学校からの持ち上がり組と、高校部編入組「アウター」とが、水面下で穏やかならぬ戦いをしている名門女子高内のシャワールーム発見された変死体。 事件は未解決のまま15年の月日が過ぎ、旧友の結婚式披露宴のさなか、その真相に行き当たる。

教師や友達との関わりの中で、憧れたり、うらやんだり、自己卑下に陥ったり、疎ましく思ったりする16〜17歳にかけての少女たち。 それはもう、情けなくも懐かしい自分の姿でもある。
殺人事件や盗難事件をあれこれ推理していくのもおもしろいけれど、荒っぽい口調のさばさばした少女たちがまぶしい、青春小説だと思った。
等身大の時期に読んだら、もっと良かったんだろうなぁ
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2004年09月16日

 クール・キャンデー


クール・キャンデー (祥伝社文庫)

クール・キャンデー (祥伝社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫


渚にとって14歳の誕生日と夏休みの前日、自殺未遂で入院中だった兄嫁が亡くなり、その原因となったストーカーも同時刻に事故死した。
容疑者として疑われる兄・良輔の無実を証明するため、奔走する渚だった。が・・・というお話。

芯は強いけれど繊細で傷つきやすく、やることは型破り、あぶなっかしいことこの上ない。
そのうえ、まだ大人になりかけの年頃とあって、子ども特有の残酷さも持ち合わせている。
でもそこが、渚という少女の魅力なんだな。嫌な思いもしたけど、兄の無実を確信し、裏切られたと思い込んでいた幼なじみともほのかな恋に発展しそうで、 ほのぼのとした気持ちになった。
そこへ、ラストのどんでん返し。ひゃ〜、こっわー。やられたなぁ…思わずうなってしまった。
冷水を浴びせられたような感じっていうのは、こういうことを言うんだろうな。
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2004年09月09日

 閉ざされた夏


閉ざされた夏 (講談社文庫)

閉ざされた夏 (講談社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/07
  • メディア: 文庫


昭和初期に彗星のように現れ、31歳の若さで夭折した天才作家・高岩青十。
その「高岩青十記念館」で起こる連続放火未遂事件と殺人事件を、どこか頼りなさげな新米学芸員の才蔵が探っていくのだが、しっかり者でちゃきちゃきしたミステリー作家の妹・楓との、対照的ながら兄弟愛あふれるコンビが、良かった。
読み進むうちは、青十の係累や過去の人間関係といった説明部分が多く、なかなか読み進めない部分があるものの、閉塞的な空間と人間関係の中で、上手に駒を動かしてうまくまとめたなぁというほどの印象だった。
が、最終章、ここが良かったのよ。内容としてはどんでん返しというヤツなのだろうけど、ここがあるだけでそれまでの、うまいけどありがちな感が、きれいにぬぐわれた気がする。
鶴子さん、決して悪い人じゃなかったんだろうに…と思うと、かわいそうだけどね。
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