家と庭 - お金に不自由しない家に育ったばかりに、大学を卒業してからもマンガ喫茶でのアルバイト生活を続けている望。
父は海外勤務で不在、母と下の姉、妹との3人暮らしだったが、そこへ上の姉が子連れで出戻ってきた。
夢も希望も特になく、こじんまりと便利な町に埋もれるように生きてきた望の日々が、変わりはじめる。
姉ふたりに男がひとり、ちょっと歳の離れた妹がひとり。
あらまぁうちと同じじゃないの、ということで妙な親近感。
もっとも「お金はあるから」と言える環境とは大差なので、育ち方も全く違うわけですが。
強引だけど実はすんごく繊細な部分を持ってる長女、過去の嫌な体験からひとりで出かけられない次女、目標も希望も特にないけどとりあえずここから出てみようと思っている受験生の三女。
それぞれにぶつかったり頼ったりしながらの距離感が、家族なんだなと思う。
そして将来、土地家屋・賃貸物件すべてを譲り受けることになるはずの唯一男子・望には、これといって望みがない。
金銭的にも家族をはじめとする人間関係にも、何かを変えなきゃという強い思いを持たずに生きてきた。
住んでいる街にも愛着があって、出て行きたいとは思わない。
うーん・・・それって、ある意味幸せなことなんでしょうね。
自分の息子だったら絶対嫌だけど、とちょっと意地悪な気持ちにもなるけれど、まあ家族の在り方はそれぞれだし、それでうまく機能しているんだったらいいのかなとも思う。
ただ、こういう女兄弟に囲まれた男子というのは、良くも悪くも女慣れしてしまうので、恋愛に対してここぞというセンサーが鈍るのかもしれません。
家族の気持ちは取り持つことができても、肝心の女心がわかっちゃいない。やきもきします。
いろいろとちょっとダメだけど、自己評価以上にはいいところがありそうな望が、なんか憎めないんだよね。
遅ればせながらまずは一歩、といったところでしょうか。
ゆるいけど、なんとなくみんな良かったねの読後感でした。