![狐憑きの娘 浪人左門あやかし指南 [単行本] / 輪渡 颯介 (著); 講談社 (刊) 狐憑きの娘 浪人左門あやかし指南 [単行本] / 輪渡 颯介 (著); 講談社 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51W7UDHrL5L._SL160_.jpg)
皆塵堂もシリーズとなって巻を重ねているけれど、そういえばこちらのシリーズもまだ読んでいないのがあったなぁということで、最終巻。
巻を追ううち、地味めだった登場人物それぞれのカラーがはっきりしてきて、愛着がわいてきた。
今回は特に甚十郎。国許では兄弟子に、江戸へ出てきてからは左門に、おもしろがってわざと怖がらせられる。
剣の腕は立つし性格も良いのに、というのが端から見ていると歯がゆくもありちょっかいをかけたくなるところでもあるのだろう。
奇怪なことすなわち幽霊の仕業とふるえてしまうあたり、かなりの重症なのは確か。
でも子供のころの肝試しの話を見れば、そりゃかなりのトラウマになるでしょうとも思える。
そんな甚十郎が、一念発起するのだ。
思いがけなく舞い込んだ縁談、しかも相手は「侍が怖がりでもいい」と言ってくれた弓枝。
狐憑きの噂にも自分なりの答えを見つけ、藩の剣術師範役たるもの怖がりなど克服せねばと奮起する甚十郎の純粋(単純?)さがいかにも彼らしい。
そんな彼を横目に何となく煮え切らない左門に、そういうことかと読み手は思うわけです。
そして結果、甚十郎は顔で笑って心で泣いて。
なにぶん色恋に疎い純な男ですから。きっとこの先、良い縁もあるに違いないよと思いつつ。
甚十郎を怖がらせておもしろがる左門も、子供に向ける目は優しい。
水内のしれっとしたところも、左門とはまた違う味。
それにしても、怖がり甚十郎の原因となった肝試し、あれは怖かったなぁ。