2020年11月11日

 スター

スター - 朝井 リョウ
スター - 朝井 リョウ

大学時代に映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘は卒業後、
尚吾は有名監督の映像制作会社へ弟子入りに、紘はYouTube動画の発信者へ。
かけ離れた環境で同じ映像というものに関わりながら、それぞれの環境でもがくふたりが描かれる。

少し前までユーチューバーというものは、ただ人目を引くことをして稼いでいる人たち、という
色物扱いだったのに今や、YouTubeで稼ぐという考えはすでに古い、頭打ちだとも言われる。
いろいろ「ついて行けない」私なんぞにしてみれば、この小説はテキストだった。

根底にある、良い物を作りたいというそれぞれの純粋な思いは伝わるので、読後感は悪くない。
でも途中で、面倒くさっ!疲れたーと思ってしまった。
説明が多いんだよ・・・気持ちじゃなく頭で読んだ気がする。
登場人物も、与えられた役割以上でも以下でもない働きをしている感じ。
ただボクサーの子は良かった。以前読んだ『18きっぷ』のイメージでした。
さて[黒版]はどうでしょう。なんだかんだいって読むんですが、きっと。
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2019年01月11日

 風と共にゆとりぬ

風と共にゆとりぬ
風と共にゆとりぬ

エッセイ集第2弾
朝井さんのエッセイはそのうちそのうちと思いつつ第1弾さえ読んでいなかったため、冒頭の「眼科医とその後」でいきなり、置いてきぼりを食らいました。
だがまあ、だからといって大したこともなく、贈りものや服装での失敗談、趣味のバレーボールのことなど、へぇこんな人なんだーと思いながら楽しませていただきました。

第3部の肛門記は圧巻でしたな。
こういうのはあまり人には知られたくないものではと思うところが、いとも事細かで開けっぴろげ。
病は治れば笑いごとにもできるわけですね。
これが作家の業なのか、いやもう本人も笑い飛ばすしかないってことなんでしょう。
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2015年11月09日

 18きっぷ

18 きっぷ -
18 きっぷ -

どういう大人になりたいか、今いちばん欲しいもの・・・
いくつかの共通する問いと、取材した人の過去や今、そして先への想いが、本人と朝井氏の言葉で綴られる、18歳の様々な顔をうつしだした一冊。

18歳。
あたりまえのことだけれど、いろんな人がいるんだなぁと思う。
その人の置かれた環境によるところも大きいし、みんながみんな、明確な目標を持って突き進んでいるわけではない。
とりあえず学校へ行って進学して・・・が悪いわけでもない。
むしろそう思う、もしくは思いこんでいる18歳の方が、圧倒的多数だろう。

でもこの本を開くと、生きる選択は、こんなにもたくさんあったんだなぁと気づかされる。
そしてたとえ漁師、とかボクサー、とか、わかりやすい名前を持つ何者かじゃなくてもひとりひとりそれぞれに、何者にでもなれる可能性という輝きがあるんだってこと。
自分のためにがむしゃらになれる時期を持てるのは、幸せなことだから。

こんな目をした、こんな18歳が、まぶしくてたまらない。
奮い立たせてくれる。
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2014年04月20日

 スペードの3

スペードの3 [単行本] / 朝井 リョウ (著); 講談社 (刊)

ミュージカル女優のファンクラブでの地位を心のよりどころに、大手化粧品の関連会社で働く、美知代。
容姿に自信がなく友達もいなかったが、中学の演劇部に入ったことで変わっていく、むつ美。
大劇団で圧倒的な人気を博しながら、退団後も活躍の続くかつての朋友をうらやむ、つかさ。

少しずつ、あるいは思いがけなく繋がりながら描かれる、3人3様の生き方。
優れているだけの人も、駄目なばかりの人もいない。
作者はやはり、少年少女の微妙な心の動きをとらえるのが秀逸だなあ。
劣等感というのはとてもなじみ深い感情なので、同じ痛みを思い出して何度も気持ちがうずいた。
それでも、なだめ、折り合いをつけ、別の形の自信を身に付けることで、うまく付き合えるものだと今は知っている。なくなりはしないけれどね。

人をうらやんだり虚勢を張ることも、いつか自分の糧になればいい。
今を生きる人たち、希望の見えるラストも良かった。
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2013年01月27日

何者

何者 [単行本] / 朝井 リョウ (著); 新潮社 (刊)
何者 [単行本]

朝井 リョウ (著)

新潮社 (刊)




就活をテーマにした、若い人たちが自分を模索する物語。
大学3年生といえば二十歳そこそこ・・・自分がどうなりたいのか何者になれるのか、悩んだり焦ったりするのは当然だし、もがく姿ははたから見れば痛々しかったりするもの。
ほんとうに、どうして人のことはよく見えるのに、自分のことは気付けないんだろう。
それは若い人に限ったことではないね。

理香によって拓人の本音があばかれるけれど、拓人がそんなにひどい人だという気はしないんだよ。
どこにでもいる、普通の人。
うらやむ気持ちがあら捜しになったり、相手を見下すことで自分の劣等感をなだめたり、不安だから尊大になったり。そういう弱さって、わかる。
ただそれを心の内にとどめておくのと発信するのとは、違うと思うけれど。
どう思っていようが、それを口にするかしないかという選択も大事だから。
知られたくない本音をさらして一瞬溜飲を下げることができても、たぶんあとから苦い後悔を味わっていたんじゃないかな・・・そんなせめぎあう気持ちが見える。

若い人たち、恥じることはないよ。
充分な大人だって、すでに何者かの呼び名を持つ人だって、いつも自分のあるべき姿やなりたいものを求めているのだから。
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2012年05月09日

少女は卒業しない

少女は卒業しない [単行本] / 朝井 リョウ (著); 集英社 (刊)

廃校となる高校の、最後の卒業式の日。
自分が選んだそれぞれの進路に向けて、大きく道が分かれる時。
発っていく者、見送る者それぞれの想い。

いいなぁ、すごく。心がきゅーっと締め付けられるようだ。
悩み、割り切り、それでも消せない気持ち。
今だからこそ、今しか伝えられない想いが、彼女たちを後押しする。

地方の高校、というのもよくわかる。
大都市は進学するにしろ、自宅から通える範囲にたくさんの学校がある。
地方だとそうはいかない。
進学する人の多くは全国に散らばって、ほんとうにバラバラになる。
高校卒業は本当に、これまでとここからの分かれ目になるのだ。

高校の頃のことが何度も頭をよぎる。
渡り廊下とか部室、三角牛乳、友達、先輩、好きだった人のこと・・・
いいことばかりじゃなかったのに、そういうなんかきらきらした記憶がふっと立ち上る感じ。
私もこんな少女だった、と思う。
こんな風になりたかった、とも思う。
同世代の人が読んだらもっと、自分のことのように感じるだろう。

これまでにケリをつけて、ここからに踏み出す少女たちがまぶしい。
この作家さんにしか描き出せない空気が、とても好きだ。
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2012年02月15日

もういちど生まれる

もういちど生まれる [単行本] / 朝井 リョウ (著); 幻冬舎 (刊)

学生の気楽さを謳歌しつつ、今が社会に出て何者かになるまでの猶予期間中であることはいつも意識のどこかにある。
自分にどれほどのものがあるのかないのかわかってくれば、無邪気に将来の夢を口にすることもできない。
力不足と諦念、言い訳、でも信じたい気持ちもある。
そんな若い人たちの不安や焦りそして希望が、軽やかに伝わってくる。
足踏みしている今の自分を直視して、その先へ。
同じ世代を生きている作者の強みかもしれないが、端から見ればささいな浮き沈みが日々のすべてに思えるこの頃が、とても鮮やかだ。
くだけても、どこか品を失わないかわいさがあるのもいい。
この作家さん、さらりとした印象はそのままに、流れてしまわず心に引っかかるようになってきた。

5編の登場人物が繋がり合って、ひとつの事柄が多方向から見えるおもしろさもある。
もしかしたらこれはあの人?と感じ取れるくらいのゆるいリンクの方が本当は好みだけど、これはこれでいいのかも。
抜きんでたものを持つ椿とナツ先輩の物語も見てみたかったな。
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