2003年04月01日

街の灯


街の灯 (本格ミステリ・マスターズ)

街の灯 (本格ミステリ・マスターズ)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 単行本


時は昭和七年、士族出身も上流家庭・花村に女性運転手がやってきた。女学生の令嬢であるわたし・英子が「ベッキーさん」とひそかに呼ぶ、 若くきりりとした別宮みつ子というその女性は、 わたしの謎や疑問をひかえめに、かつ鮮やかに解き明かしてくれるのだった。

期待の新シリーズ、舞台はなんと昭和初期の上流家庭。学友に宮様などもいるという、ちょっと想像できない世界だが、そういう中で育った「わたし」は、 恵まれた環境から来る素直さとのびやかさを持ちつつ、好奇心旺盛でお嬢様らしからぬ部分もあわせ持った少女。
恵まれた環境に育ちながら人を見下すことを良しとしない、勝気で周囲からちょっと変わったヤツとおもしろがられそうな少女なのだ。
そんなわたしが、すっかり気に入ってしまったベッキーさんという人もまた、魅力的。
頭脳明晰、思慮深く文武両道に長け、いざとなれば果敢なベッキーさん、これがファンにならずにいられようか。なんでもない顔をして、 びしっと射撃を決めてくれるあたり、かっこいいのなんの。横でわたしが鼻を高くしているのが見えるようだ。そんな彼女がなぜ運転手になったのか、 そのあたりもシリーズを追ううちにわかってくるのかな?と楽しみなところ。

サッカレーの「虚栄の市」や、ブッポウソウにまつわるエピソードなどを絡めた謎解きも凝っていておもしろかったけれど、わたしがベッキーさんと行動をともにする中で、 謎解きだけでなく、自分の世界や立場とは違った見方・考え方に目を開かせられていくといった、主従を越えた結びつきが今後も楽しみ。
posted by てまり at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 北村 薫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昭和初期の女子学習院に学ぶ深窓の令嬢を描いた連作短編集。
「リセット」よりも時代的には少し前。

いつもながらの北村薫さんの文章なのですが、日本語が日本語らしく存在していたはずの時代背景や、上流社会の深窓の令嬢という登場人物設定によるものなのか、いつも以上に美しく心地よく感じられます。

それは丁度、昔の白黒映画を観ているような感覚。
白黒映画の方が女優がより美しく感じられるように、たとえドタバタのコメディを観ていてもどこか上品さが感じられるように、「古き良き」という言葉がぴったりです。

3つの物語それぞれにミステリらしい謎が仕掛けてあり、その謎に対する英子とベッキーさんのそれぞれの役割というのも興味深いのですが、私は物語の中の謎自体よりも、主人公・英子の運転手となるベッキーさん自身の謎に惹かれました。

頭の回転が早く、行動的な英子をさりげなく導いていくベッキーさん。
宝塚の男役のような容姿に、英子の身を守る人間として相応しい様々な術を身に着けた彼女ですが、この作品の中では、素性も経歴もほとんど明かされないまま。

常に控えめで一歩譲っているのですが、ベッキーさんの存在によって、英子は今まで気付かなかったことに気付き、考えなかったことを考えるようになります。

私にとっては、ミステリ作品というよりも、英子という1人の女性の成長物語という印象の方が強かったです。

シリーズ物になりそうなので、続きも楽しみなのですが、彼女たちの生きる時代は、近い将来大きな変動に見舞われるはず。

その歴史を知っているだけに、無邪気な令嬢たちの姿にはなんとも切なくなってしまいます。
Posted by 紫陽花 at 2024年02月26日 00:31
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